136【公認】集え、夜のコロシアム!【あの人とコラボ!?】(1)
初っ端から飛ばしていきます。
どうぞ。
『期待』『全裸待機』『まちー』『あれか?』『あれやろ』『さすがにわかる』『¥1200飛ばせるやろか』『¥3000おっマジか』
「みなさんどうもこんばんはー、徒歩で来ちゃったとっこでございますよー。予告してございました重大告知、さっそくどどんとやっていきましょう!」
金色とか虹色を使いまくって、花火のエフェクトまでついたポップアップの文字が、すごく豪華そうなSEまで付けて現れた。
「なんと、私たち「水銀同盟」が! 公式インフルエンサーに選ばれたよぉ!」
「ひゅーひゅー!」「どんどん!」「ぱふぱふ」
『おめでとおおおおおおおおおおおおおおお』『¥10000おめ』『草』『めでたい』『ギルドが!?』『どんな台本読ませてんねんw』『絶対合ってないって!w』『¥5000ついに公式かぁ』『ご立派ァ!』『さすがすぎた』『剣士がぱふぱふ……?』『↑板じゃないから』『↑お前首落ちてね?』
コメント欄もずいぶん楽しそうだ。
最新……ではなくなったけど、VRゲーム『ストーミング・アイズ』のサービス開始からひと月ちょっと経った。運営会社の「星見遊戯場株式会社」は、プロモーションにさらに力を入れるために、CMやPV以外にもプレイ動画を配信させることにした、らしい。
「さっそくスパチャも飛んできておりますなー。みなさま、本当にありがとうございます! しかしこれではとどまりませんぞ!」
「なんと、なんだよねぇ……」
『あれやね』『なんとなくは』『察した』『おっ来たか』『ついにか』
カメラの仮想画角がこっちに向いたので、バニーっぽく横に傾けたピースをしてみる。
「私からー。なんと、この間辻映りした「NameLLL」の人たちから、コラボ依頼が来ちゃいました! すごい人だったんだね……」
『知らんのが逆に驚きなレベル』『¥500あそこめっちゃ表に出てるゾ』『家のテレビつねにあそびばーにチャンネル合わせてる説』『わりとNOVAでも顔出てるくない?』
「あ、うん。私の家のテレビ、基本「あそびばー」にしてるよ」
『だからCM見てないんかwww』『あのCM流れてたのゴールデンタイムちょい前だからね……』『ドラマとかの話題いっさい出ないのそっちかよ!w』『無趣味じゃなくてただの家族大好きさんだった』
けっこう有名なCMがあるみたいで、そこに「NameLLL」所属のタレントさんが出ていた、らしい。去年の春ごろ、ちょうど一番熱心に部活動に打ち込んでいたころで、テレビを見ることもほとんどなかった。帰ってきてすぐメタバースに引っ込んで、個人用スペースで動きを確かめたり、練習用の動画と動きを合わせたりしていたから……無趣味というか、ほんとにアスリートだった。
「対人戦も気軽にできるようになったし、ダンジョンの数もどんどん増えてきてるからねー……協力してって言われたりとか、挑戦してきてくれたりとか。あるかも」
『この傲慢すこ』『っぱ魔王サイドなんだよな』『¥5000前祝い』『↑早すぎィ!』『正直負けるビジョンがないのはある』『あっちのゲーム部はそんなにガチ性能してないから……』『¥3000絶対に接待プレイしないであろうことは分かった』
なんだか散々な言われようだけど、あいまいな笑顔で流すことにした。
「じゃ、戻すねー」
「はい、とっこですぞー。告知内容は以上ですが、最後にサプライズ! 多窓している方もいらっしゃるでしょう、聞こえますか皆さん!」
『ごめんくださいッ! こちらでお間違えなかったでしょうかー!?』
「あれ、この声……」
ギルドホームの一階、木造の部屋から出て、玄関の方に向かうと――
「こんばんは! やってきてしまいましたわ!!」
「いちごさん! いらっしゃい、こんばんは!」
銀髪赤目の褐色美人さんが、ぶんぶんと手を振っていた。くるっと巻いた角に、蹄のようなハイヒールのつま先は、しっかりとジョブが反映されている。元からデュデットワにいたから、案内人がいればたどり着くのは難しくなかったのだろう。
「ここが「水銀同盟」の拠点ですのね……。お初にお目にかかります、ワタクシ「NameLLL」所属、「ウィスプ」カテゴリの誘納いちごと申します!」
「どうもぅ、ご丁寧に。私は「たてわきサフォレ」だよぉ」
「あたしは「とっこ」、ご存知とっこでございますよー。いらっしゃいませ」
レーネとシェリーも同じように名乗って、私も「フィエルだよー、こないだのプロミナのメインキャラ」と自己紹介した。
「メインキャラ! ということは、あちらではあまりログインされないのでしょうか?」
「そんなこともないけど。すぐ切り替えられるし、どっちでも楽しくやるよー」
「安心しましたわ! ワタクシ、あちらのあなたの方が好きですもの」
「モンスタージョブ仲間だから? また一緒に遊ぶことあったら、好きな方で行くね」
コメントの流れが速くなりすぎて、双方のファンが合流しているのか、ちょっと読めなかった。何文字かだけのものはかろうじて読めるけど、長く残るスパチャですらぐいぐい押し流されてしまっている。
「では、フィエルさま。「白バニーさん」、あるいは〈ラフィン・ジョーカー〉の異名をお持ちのお方! ワタクシ、あなたに決闘を挑みますわ!!」
「ふふふ。じゃあ、どれがいい?」
カード、ステッキ、ハット、時計、飾剣、ボール、杯。〈道化師〉の七つ道具、どれをとっても弱いものなんてないけど、すべてが決め手になる。
「あら。どういう意味でしょうか……」
「とどめ。どれがいい?」
「とっても自信がおありですのね。では、素手か蹴りでお願いいたしますわ!」
「約束ね。じゃ、行こう!」
私たちは、デュデットワ名物のコロシアムに向かった。
久しぶりのガチ戦闘。
Talesに投稿してるお話がエタってるので、『クイド』と差し替えたいんだよね……じわじわしか進まないのをマジでなんとかしたい。




