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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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133 急に有名人に出会っても案外分からなかったりする

 どうぞ。

 里帰りしてきたときと同じように、兄と義姉はあっさり帰っていってしまった。最後に推し特撮でも観られればよかったなぁ、とは思ったものの、二人は「夫婦で過ごさない時間」を設けているらしい。そういうわけで、一人ずつで帰ってしまった。変わってるなーとは思うけど、こういうのが長続きする秘訣、なのかもしれない。


 夕食後のお皿を食洗器に入れながら、炊飯器の器部分を水に浸けている母の方を、ちょっとだけ見た。するとすぐに、にこりと微笑みながら言った。


「どうしたの、アカネ」

「あの二人って、どうしてこうなんだろ」

「さあね……夫婦にはいろんな形があるものだから」

「お父さんとお母さんも、なにか工夫してる?」


 特にないわね、と首をかしげる。


「会えない時間の方が長くても、信じられるのよね。日ごろから美人は見慣れてるからかしらね」

「お父さん、どっかの広告関係やってるって言ってたっけ?」

「星見遊戯場株式会社ね。アンナといっしょに配信してるでしょう、『ストーミング・アイズ』の運営やってるところよ」

「えっ!!? そ、そうだったんだ……!」


 ゲーム会社の広報部門として、父はアンナの配信をけっこうしっかりチェックしていたようだった。ちゃんとリンギ(?)や審査なんかを通って、「たてわきサフォレちゃんねる あそびばー」は、SIsの広告に参加させても問題ない、という判断が出た。そのことが本人に通って二人が言っていたのが、あの夜に言っていたことだったらしい。


「娘たちをひいきする人じゃないから、安心して。オーレベルとかネムルの、プロのバーチャルタレントの人も来るそうよ」

「ぷ、プロかー……や、アンナととっこもアマチュア上位だけど」


 企画にもよるけど、配信で三千人から八千人に見てもらえるのは、わりとすごい方らしい。白バニーさん効果だよ、と言っていたから、ちょっとは貢献できているのだろうか。もっと楽しいことしないと、と今育てているもののことを思い浮かべた。


「アンナは……今は作業中かー。ちゃんとした仕事かな?」

「でしょうね。あの子も、こっちに関してはプロだものね」


 テレビのチャンネルを合わせてみたけど、今は何も配信していない。


「また何か、面白いこと期待してるわよ。ジョーカーさん」

「ふっふっふー、期待しててね!」


 部屋に戻って、いつも通りに寝ているアンナを見た。もしかしたら、公式配信に参加するためのスペースを作っているのかもしれない。そんなことを思いながら、自分もゲームの世界にダイブした。




「ん、と。最初は買い出しだよね」


 とくに準備しなくても……何なら装備すべてを失っても戦えるフィエルではなくて、準備にものすごく時間のかかるプロミナの方でログインした。高さは普通に、ゆっくりめに歩いて露店通りに向かう。


「ま、迷いましたわァーッッ!!」

「わっ」


 衝撃波でも出ているのかと思うような、ものすごい悲鳴。


 見ると、ちょっと地味めの剣士っぽい服装に身を包んだ、褐色美人のアバターがいた。銀髪のハーフツインテかと思ったら顔の横にドリルしている、すっごい髪型だ。赤い瞳に薄めの唇、けっこう特徴的な顔をしてるなと思ったら、「あの、そこの人魚さん!」と声をかけられた。


「申し訳ございません! この街のどこかに、魔石を売っているところがあると聞き及びまして! あっ、ワタクシこういうものなのですけれど」


 表示されたステータスウィンドウには、「誘納いちご」と書かれていた。


「魔石……あ、キャラの見た目を変えたいんですね。どんなのがいいんですか?」

「ツノ! ツノですわ!! できれば山羊の角を!」

「あるのかなー。いろいろあるとこ、行ってみましょう!」

「ありがとうございます!」


 たぶん近くにあるだろうな、と思った「剣とハンマー」のエンブレムを頼りに、銀髪赤目に褐色肌のいちごさんを案内する。


「あっ、あの! すみません、あの……ワタクシ今配信をしておりまして! 映ってしまっているのですけれど」

「だいじょうぶですよー、友達のとこに出たりとか、辻映り出演したりとか。けっこう出てるので!」


 配信者だったんだ、と思ってNOVAの検索窓を呼び出して、「いざないちご」と入力してみると――


「えっ、あの。「NameLLL(ネムル)」の人……?」

「はい! ワタクシ「NameLLL」所属、「ウィスプ」カテゴリの誘納(いざな)いちごですわ!! プロミナさま、とおっしゃるのですね?」

「あっはい、プロミナです。「水銀同盟」ってところに所属してます……」

「そう固くならないでくださいまし。ここではとっても有名なお方だと、皆さんおっしゃっていますわ! お人柄もよろしくて、ワタクシ感激しておりますわ!!」


 微妙に緊張しているのを強引に押し流している感じだけど、ちょっと潮の匂いがする風で空気がちょっとだけ落ち着いた。


「じゃあ、私の人脈を使わせてください。儲け話なら、あっちも乗ってくれるはずですし」

「儲け話……? ひとまずお任せしますわ。ご案内、よろしくお願いいたします」


 やっと見つけた「タイトルタイルズ」の本拠地に近付くと、なぜか警戒態勢が敷かれていた。


「ごきげんよう! プロミナさま、ここがお店なのでしょうか?」

「はい、たぶん。ごめんください! 「水銀同盟」のものです!」


 すすっと横からスライドしてきた隠居老人風の青年が、スモーキーグラスをちゃきっと鳴らした。


「少々お待ちを。職人が作業中ですので、ここは撮影禁止です……店舗の方にご案内いたしますので、こちらへ」

「あら、そうでしたのね。行きましょうプロミナさま」


 生返事をしつつ、ちょっと時間かかりそうだなー、と思ってしまった。

 しっかり利益誘導していくアカネ&あっちの有名人に会えたからヨシ! ないちごさん。


 名前は「”誘”惑+供物を”納”める+タロットカードの”15”(ⅩⅤ=悪魔)」で、見た目合わせでロールプレイのために山羊の角を欲しがってるクチ。「NameLLL」は禍々しいのばっかし、「O-Level」は海モチーフだから、プロミナはどっちにも馴染んでしまうんだ……

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