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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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130/166

130 大きすぎるとやっぱり説明は必要だと思う

 どうぞ。

 ログアウトする前に、テストをすることにした。デュデットワ周辺はほとんど沼地で、じめっとしたモンスターが多い。足元が悪いみたいだけど、浮遊している私にはちっとも関係ない。魔法型に有利らしいから、きっと私のやり方も強いはずだ。


 ふんにゃり、ふんにゃりと変な動きで前進しながら、モンスターを探す。下草強めで泥の道、歩くのは面倒だろうし、とっさに反応するのも大変そうだ。それに、あちこちにある水たまりがどのくらい深いのかもよく見えない。何か攻略法があるのか、もしかしたらこういうところを歩くのに向いたモンスターに乗る前提なのかもしれない。


「まだ情報出回ってないんだっけ。BPBって、あんまり情報出してないんだよね……」


 一番槍はBPBで、ミルコメレオが続いて、TTに素材が持ち込まれて、そこでだいたいの攻略情報が出回る。私たち「水銀同盟」は好きにやっているだけだから、最速攻略とかダメージチャレンジなんかはとくに興味もなかった。


 何か出てこないかなと思ったけど、そういえば、これだと足音もしないのを思い出した。何かドロップアイテムでも、と思って取り出した虫の肉を、ちょっと大きめの水たまりに投げ込んでみると――やたらとバシャバシャ音がして、何かが殺到しているのが分かった。できるだけ近付いてのぞき込むと、真っ黒いぬめっとした丸いもの……たぶんオタマジャクシが、ゾッとするほど大量にいた。


「うわ、わぁ……落ちたらこうなるんだ……」


 左腕に提げたバスケットを開けて、〈夢現(うつせず)将刃矛式(しょうばのかじき)〉を出す。これは、ただ的に向かって飛ぶだけの〈呪符・槍突(そうとつ)〉と、敵に当たると規定値のダメージを与える〈ばくはつキャンディー〉を組み合わせただけのアイテムだ。ただし、呪符は三枚、キャンディーは二個使っているから……三倍のスピードと、二倍の威力がある。


 金魚がとんでもない速度で宙を滑ると、当たるたびにオタマジャクシが沈黙する。何が起きているかも分からず、何十もいたオタマジャクシがすぐに全滅した。


「おー。やっぱり、強いなぁ」


 消費したHPかけることの現在スキルレベル、それがキャンディーの効果量だ。耐性も何もなく、ひたすらにHPとスキル特化の〈グレーピー・キャンディー〉もそうだし、マーメイドもネレイデスもHPはかなり上がる。〈薬師〉とキャンディーのジョブスキルをめちゃくちゃたくさん使いまくったから、すごい量の経験値が入って、すでにレベルは四十を超えていた。


 そういうわけで、六百を超えたHPの九割……だいたい550、かけるスキルレベル5で、四千近いダメージを二つ分。そこいらのモンスターに使うにはオーバーというか、これで生き残れる敵なんてそうそういないな、というくらいの強さだった。


 オタマジャクシが静かになったところで、ボォー、ボォーッと気持ち悪い汽笛みたいな音が響く。ざばぁっと上がってきたのは、見上げるほど大きなカエルだった。


「あ、そうだった。オタマジャクシってカエルの子供なんだよね」


 直接親子かは分からないけど、何か様子がおかしいと思ったのだろうか。これまでに見たどんなモンスターよりも……下手をしたら、あのスライムよりも大きいかもしれない。どこに隠れてたんだろう、と思いつつ金魚を浮かべた。


「どこまで耐え――」


 ボプンッ、と一瞬でカエルが消滅した。


「わっ、でっか……すぎない!?」


 ザァーッ、と周りの川やつながった池から水が流れ込む。水がなくなりすぎて露わになった、あまりにも大きなその影は、どこか愛嬌のある顔をしていた。つぶらな目に、みょっと伸びたとんがり気味のひげ。


「……ナマズ?」


 口をガバッと開けただけで、あの大きなカエルが丸ごと呑み込まれるほどの……十五、六メートルくらいを丸ごと口に入れられるなら、その二倍から三倍だろうか。シロナガスクジラでもそんなになかった気がするなぁ、と考えつつ、金魚をできるだけいっぱい出した。


「上がってくるまで、……も、イヤだけど!」


 これまで対峙してきたボスモンスターも、とくに怖いと思ったことはない。玉華苑を壊しかけたサイオウクワガタは大きかったけど、カッコいいよりのデザインだったし、あんまり実感がなかった。それに比べて、ナマズはとにかく怖かった。


 言葉を尽くしても言い表せないくらい大きくて、それが全体像かすら分からなくて、ミキサー車くらいあるカエルが丸ごと呑み込まれて。不明性と具体性がいやに響き合って、夜の底にいる化け物がひときわ大きく、恐ろしく見える。


「と、とにかく上がらないと」


 シュンッ、と上空に跳ぶ。いつも浮遊しているから、高さの自由は少しだけ利きにくいけど、ヒレを使えば話は別だ。ぬうっと水面に近付いてきた真っ黒いナマズが、ぐわっと口を開けて跳躍した――


「ここ!」


 金魚が殺到した。ふつうの三倍の速度、たぶん矢よりも早い金魚たちが、バスッと当たるたびに蒼い焔に変わって消えていく。あまり高く跳ねてこなかったけど、それでもその大きさも、口の中の異様な白さも、ひどく不気味だった。これまで作った百近い数の人魚が、瞬く間に消費されていく。


「こ、これでもダメなの……?」


 金魚ひとつで、だいたい八千ダメージ。浮かんでいる数が消えていくたびに、どんどんと焦りの方が強くなっていく。倒しきれなければ、相手のHPは最低でも八十万……フィエルでも倒せないほど、みんながいてもまだ不安が残るほどの。


 と、金魚がほんのわずかになったところで、ナマズがぷかりと水面まで上がってきて、白いお腹を上にして浮かんだ。


「ふぅ。危なかったー……」


 光の粒になって消えるけど、明るくなっている面積がちょっと小さいグラウンドくらいあった。テニスコートよりは確実に大きい。だいたいどんなモンスターでも倒せるかな、なんて高を括っていたけど、私はまだまだ無知だったみたいだ。


 意識を改めつつ、私はギルドホームに戻ってログアウトした。

 これだから固定ダメージは弱いんだよなぁ……スタレで「確定ダメージ」って概念が出てきたけど、あれを真似るかどうかは検討中。


 あ、デカい魚はクッソ怖いです(実体験)。ピラルクのエサやりショー見たことあるんだけど、丸サバが「ズバァンッッ!!!」とか音立てて食われて真っ二つになるんですよ。表情も変わんないからマジで怖い。さすがに五十メートル近いやつはいないと思うけど。しかしナマズってほんと旨いんだよなぁ。JR二条駅のわりと近くにいい定食屋があってですね(略)

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