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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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128【超緊急!!!】例のあの人連れてきた【顔見せもあるよ】(2)

 どうぞ。

 全体的には、紫色をした人魚だった。しかし、下半身は液状化していて、ただ魚であるふうにも思えない。手足のあちこちからふわりとしたリボン、あるいはヒレ、もしくは液体のようなものが伸びていて、デザインコンセプトが読み切れない。


 髪は影色のヴェールで覆われ、顔は横向きのクラゲあるいは鳥かごのような仮面で覆われている。口元だけが見えているが、その唇にもとろりとした光沢のある鈍色のルージュを塗って、印象を暗めにしていた。服はというと胸元の大きく開いたジャケットのみ、胸の谷間も丸見えだ。あばらの終端まで見えている胸元を覆っているのは、液状化して半ば以上透けた乳帯だけであった。腰にある仮面は、いくつもの傘を半月状に連ねたような形をしている。


『浮いてね?』『あーあれか』『めっちゃセクシー』『前の人魚の亜種?』『目元隠しとか癖に刺さりすぎてやばいんじゃ』『ッッッッッ』『お尻なくなっちゃった……』


「あなたたち、そういう目で……」


『声が冷たすぎてドキドキする』『ヒートショック!』『これもええな』『ここ切り抜くね♡』『顔が見えないのがまたイイ』


「うわぁ……」


 にこにこと笑顔を振りまく少女は、くんにゃりと笑った。すこし見えた舌が、赤い。


「こんばんはー、フィエル改め「プロミナ」だよー。ちょっと面白いことしたくて、このビルドにしたんだ。コメント欄でもう答え言ってる人もいるねー? でも、もっともっと面白くしてあげるからね」


 彼女の姿は、あの日の狂気に染まったものに近しく思えた。


「それから、紹介するね。“弓取”のホウイさんとアヤコさん。アヤコさんが前衛で、ホウイさんが〈猟師〉で弓も使える人だよ」


『写ってたアーチャー男じゃなかった?』『あの人もコンビのひとりやったんか』『別人では……』『あの人誰なん?』『あれスケープゴートだったんです??』


「ふふふ。女の子にしちゃったー」


『ファッ!?』『え?』『は?』『意☆味☆不☆明』『理解不能理解不能理解不能理解不能』『どういうことだってばよ』『すまんわからん』『具体的に何をしたんですかね……』『ほんとにどういうことすか』


 柿色を主体として、黒から茶色系統の軽装で固めた、和風の弓使い――の、少女。装備はほとんど変わっていないものの、配信に映っていた、細身で精悍な顔立ちの青年ではない。背は少し縮み、プロミナと比べても劣らぬほどに女性らしい体型をしている。


「仲間になってほしかったんだけど、禊が済んでないって言いだしちゃって。でも、二人ともほんとに強いからさー……」


『それはそう』『白バニーさんが認めた強者ってほかにいたか?』『↑ディリードと身内くらいやろ』『確かに猟師は強い』『スカウトしてたんですね』『直々に仲間になって欲しいって言われんのヤバくね?』『二人ともガチで強かったよな』


「というわけで! ムッツリさんだから、女の子になってもらいました! 装備は買ってあげたよ、いくつか足りなかったし」


『?????』『何がというわけでなんですかね……』『すまんやっぱわからん』『やられる立場になれってことでしょうか』『食う側に回ったのか……』『わざわざリメイクアイテム買ったのか(困惑)』『ここにお金使うのが愚者クオリティ』『資産どんだけあんねん笑』


 そして、そばに侍る青いミニ丈浴衣、羊のような角を生やした少女。


「アヤコさん、説明不要のめっちゃ強い人だよー。強いよ!」


『語彙力ないなっとるやん』『まあうん』『そうやね』『あれはガチで震えた』『いちばん人外魔境してたな』『ぎゃんかわ』『めっさ美人』『鎖使い最強やろこの人』『ガチのトップ層仲間にするん反則ちゃう?』『↑BPBと組んでないだけマシ』


 紹介がひと段落ついたところで、シェリーはパンッと手を打った。


「と、これで今日の内容は終わりよ。近々、もう少し大きな発表ができるそうだから、期待してて。かなり難しい攻略にも乗り出す予定だから、それも配信できればするわ」


『はえー』『これより大きな……?』『単に規模がデカくなるだけじゃないなこれは』『戦ってるとこ見たかった』『このメンツで難しいてどんだけやねん』


『じゃ、ことの後始末があるから、これでねぇ。集まってくれてありがと』




 配信終了のボタンを押して、アンナはプロミナを見た。


『えっと、ね。ちょっと怒ってるの、分かる?』

「あ、うん……めっちゃくちゃ突然だったから?」

『違うの。ちょっとキャラ切り替えるね、めんどくさいし』


 しゅわっと消えたアンナが、サフォレになって帰ってくる。


「続けるね。「水銀同盟」って、楽しくゲームする女の子たちってことで見てもらえてるの。いきなり男の人連れてくるって聞いて、どうなるかと思ったよぅ」

「ごめん。えっと……ギルド抜けたりとか、しなきゃダメ?」

「本人がいる前では言いにくいことだけど、協力者って名目にするね。アマルガム陣営の人たちといっしょで、そういう企画のときだけ使うの」

「よかった……。私、アンナの横にいていいんだね」


 当たり前でしょ、とサフォレは悲しげに笑う。


「ホウイさん、アヤコさん。うちのプロミナがすみません、けっこう変な子なんですよぅ。好感度かなり高いみたいで」

「好感、ですか。お友達のあなたたちに並べるとは、とても思えませんが」


 しっとりとして、甘さは控えめ。シルクめいた光沢を宿すミルクティーを思わせるような、優しい声だった。女性のそれに調整するのみならず、容姿にもそれなりに合っている。


「それに、あれほど苛烈に襲いかかってきましたし」

「嫌いだからそうしたわけじゃないわ。勝ちたかったのはあるでしょうけど」


 シェリーの言葉に、プロミナは照れたように頭を掻いていた。


「それで、それってどんなジョブなの? モンスタージョブなんでしょ、その変化」

「マーメイドとネレイデスのふたつを掛け合わせると、下半身がこれになるんだよー。魚っぽい液体。えっと」


 具体的には、と……〈マーメイド・ポーティア〉〈ネレイデス:ラウィニア〉〈グレーピー・キャンディー〉という名前が挙がってきた。シェリーが知るものはひとつもない。


「あと、〈薬師〉と〈呪術師〉。涼花さん見てて、思いついたことあってさー……やってみたかったんだよね」

「あの方は、考えうる限りの最高峰だったと記憶していますが。あれを超えると?」

「ううん、超えるんじゃなくて、別のことするんだよ」

「ほっほう。ぜひ聞きたいですなー」


 ようやく調子を取り戻したらしいとっこが、にこりと笑った。

 こういう身体的変形ができるモンスタージョブはけっこうあるので、おしゃれの一環として使われていたりします。ただし防具の装備可能部位が減ることが多いので要注意。じゃあちょっと設定置いときますね……めっちゃ長い。




〈呪術師〉

 独自のシステム「呪詛/呪怨」を使って戦うジョブ。基礎ステータス自体は平均的に高いものの、つねに「呪怨」という各種デバフを背負うことになるため、本体が本調子を発揮できることはまずない。



〈呪詛〉

 かんたんな意思を持つデバフ。物体あるいは人間に宿り、通常の手段では解除することができず、時間経過とともに効果が強まっていく。なお、このスキルを使うと反作用として似た効果を持つ「呪怨」を背負うことになる。


「呪怨」

 上記の〈呪詛〉を使うことで使用者が背負う、もうひとつの呪い。呪詛の効果と似たものになるため、数も種類も千差万別。当然ながら、多く背負うほど不利になる。


〈間引かれぬ仔を飛び立たせ〉

 物体に意思を植え付け、指向性を持った行動をさせる。この簡単な思考を成長させることで、疑似霊魂を生み出すことができる。


〈血除け月傘〉

 所属パーティーあるいはギルド内の味方が持つ呪怨を移動させることができる。これにより、敵対者に大量の呪いを押し付けたり、呪われてしまった味方を無理やり解呪することができる。呪いを食って成長する被造物もおり、この手法は「忌餓穴喰」という通称で知られている。


〈人を呪わば穴二つ〉

 スキル〈呪詛〉を使用すると、一回ごとに「呪怨」という特殊デバフをひとつ背負う。呪怨の種類・効果は呪詛の種類・効果量によって変動する。


〈因果は実る〉

 呪詛あるいは呪怨の対象者・保持者が死亡すると、経験値が追加で加算される。

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