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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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125 愚者の夢酔:平行並行に行こう/フールウィズ移行る

 どうぞ。

 サブキャラの試行錯誤はともかくとして――あっちこっちで戦ったせいか、テイムモンスターにも経験値が入って、少しずつ成長していた。大きく移動して、デュデットワの街の外、海に連なる湿地帯のほとりで、テイムモンスターを順番に出していく。フルルと名前を付けた〈フロスト・エレメンタル〉はいつも通りきゃいきゃいと笑っているけど、種は沈黙したまま、スケルトンも同じだった。


「まともなのはフルルだけ、かなー……」

「なんだよ、あたしは骨だけでもやれるぜ」

「えっなに……」

「あたしだ、ほれ」


 いつの間になのか、スケルトンがしゃべっていた。ちょっとだけ潮騒が聞こえる中で、ハスキーぎみの女性の声がへんに響く。


「あれ? 前までぼんやりしてたのに」

「前はね。ちょいと魂が強まって、目が醒めたのサ」

「よかったー、なんか強そうなのにって思った」

「あっさりしてるね、あんた。気が合いそうで良かったよ」


 そして、腰の短剣を抜く。何をするのかと思ったけど、しげしげと見つめたあと、腰に戻した。


「あー、……悪かないけど。あたしは荒っぽい医術くらいが専門で、こんなもん握れやしないよ。魔術もあるだろ、あんた病毒やら寄生を味わったことあるのかい? ああいうやつじゃない限り、あたしは出番ないよ」

「そ、そうなんだ……」


 あんまし荒事に慣れてなくってね、と……「シシィ」と名乗ったスケルトンは言った。


「シダホセンの素人船医をやっててね」

「なに、しだ、ほせん? って」

「お上のお許しを得た海賊みたいなもんだよ。じっさい、大して変わんなかったと思う。船長はどうなってたんだい」

「え? あの船の船長……あの船、そういうのはいなかったよ。凍り付いてて、クリオネみたいな悪霊がガイコツ連れてた」


 わずかに息を呑んで、それから大きなため息をついた。


「……そうかい。海は化け物が多いからねえ、あたしも死んだときのことはよく覚えてなくってね。悪霊はぶちのめしてくれたかい」

「砕いたよ。ガイコツも、ほとんど全滅させたと思う」

「そりゃよかった。あたしが役に立たなきゃあ、別のやつに売ってくれてもいいぜ。経験済み(・・・・)だからね、傷ついたりゃしないよ」

「やめようよー、そういうの。これまではいなかったけど、ここから出てくるんじゃない? シシィが言った危ないやつ」


 私はほとんど攻撃を受けないけど、それは避けられる攻撃に限った話だ。ダメージではないけど必中とかもありそうだし、病毒なら環境から受けるかもしれない。


「あとは……ああ、あの馬鹿どもでも飲むのを嫌がらないヤツ。仕入れ値が馬鹿みたいに高かったけど、効き目は抜群でね。〈フルーツポーション〉って言うんだけど」

「それめっちゃ聞きたい!」

「食いつくね。ここでかい?」

「あ、いや。ちょっと待って、えっと……あの、別キャラ……旅人のことってどのくらい知ってる?」


 旅人って旅してるやつのことだろ、と常識の再確認みたいなことを言われてしまった。


「や、違うの。異世界からの旅人」

「んん……? あー、確か海の向こうにいるとかって聞いたね。それを聞いたのがヨルヴィニヤだったから、そうか、この大陸になるんだねえ」

「その旅人が、私。それでえっと、魂と体が別々になれて、別の体に今の魂入れたりとかも……? できるんだ」

「はあ、大層なもんだね。ああ! つまり、今のあんたは薬づくりに向いてないけど、薬師を仕事にしてるあんたの体も持ってるってことかい」


 さすがに、元から頭がいい人は回転が速い。


「あの……今から作ってきていい?」

「……まあ、あたしは構わないけど。どうやって待ち合わせするんだい」

「だいじょうぶ、旅人なりの方法が色々あるから! まずケージに戻ってもらってから、私たちの拠点に行って。そこで待ってて」

「道化の拠点ね。楽しみだね」

「ふふ、〈道化師〉は私だけだよー。じゃ、ちょっと待っててね」

「ああ」


 ふわふわ漂いながら寝ていたフルルと、待ちに入ったシシィをケージ型のアクセサリーに戻す。そして新ギルドホームに戻って、シシィを出した。


「ほー、旅人ってのはお金持ちなんだね。建てたら五千万はくだらないだろ、ここ」

「借りてるだけだよ。家賃いくらなんだろうね……」


 リアルで住んでいるのはいちから建てたマイホームで、旧ギルドホームはほとんどシステムをいじって建てたお安いものだった。そういうわけで、私には不動産観はあんまりない。


「じゃあ、ちょっと待ってて。私の部屋に案内するから」

「わかったけどあんた、ガイコツを連れ歩いて変だと思われないのかい」

「ん? 大丈夫でしょ、そういうものだし」

「旅人はほんとに、変なんだねえ……」


 ログアウト……ではなくて、キャラが一人しかいないからスキップしている「キャラ選択画面」に移動した。




『おや? 君は以前に案内した迷い人だね。もうひとつ考え事をしたくなったか』

「そういう風に言うんですね……?」

『意志を歩むとは、そういうことだからね。さて――』

「決めてます!」



[あなたの歩む、これまでとこれからの意志を教えてください。

・使徒

・賢者

・常人

→愚者

・狂妄

※選択の結果は、ゲーム内で変更できません。]



『おっと! これは失礼したね、心は決まっていたのか』


 看板頭の案内人は、小さく笑った。


『それに、ふむ……前と同じ顔に造るのかい? 何をするのか、とても気になるな』

「面白いことをしたくて。あと、……ううん、それだけかも」


 フィエルと同じ顔、同じ黒髪。けれど。


『意志の証……仮面はどうしようか?』

「えーっと……どうしよう」


 じゃあ、と案を出して、いくつか出力してもらう。いちばんきれいにできたものを手に取って、顔にとんと当てた。フィット感もいいし、肩に置くときにもきちんと合っている。


「よし! それじゃ、これで」

『ジョブはいいのかい?』

「あっ」

『焦らなくても大丈夫。さあ、決めよう』


 あの、と無茶ぶりをしてみる。


「最初からふたつ、いいですか?」

『ああ。六つの枠を最初から埋めても、あとで入れ直せるからね』


 部屋に置いたアイテムと合わせて、すでにサブキャラのビルドは考案してあった。

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