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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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123【最強襲来】ブレイブ・チャレンジャー!【最後に強いのは物理】(7)

 決着。


 どうぞ。

 しゃん、と鎖に結んだ飾剣を飛ばす。空中に張った足場に鎖を引っかけて、ブランコ状態になった。鎖が長すぎて、ゆーらゆーらと揺れている。


『こんな上空で何するん?』『落ちんかったけど結局脂肪では』『ちょっとやりすぎた感』『月光キックは良かったんやけどね』『空中ブランコ?』


「ふふ、ファンサだよー。えっと、カメラさんこっち」


 このために買ったカードを示して、カメラに見せる。


「みんなには見せてなかったよね、最初の変身」


 あんまり武器の練習をしていなかったし、サブキャラも持っていなかったからぶっつけ本番だった。けれど、思い出深いしド派手だったから、みんなの前でやりたかった。


「あの真っ黒のやつ……劣勢だよね、たぶん。というわけで!!」


『ホーム壊れたァ!?』『やばいやばいやばいやばい』『え何すんの』『こっから突撃できる?』『やる気なんか』『これ負けじゃね?』『最強が最強すぎるんですが』


「ふふふ。じゃあ行っちゃおうか。〈ギガントスケール〉!」


 一度も使っていなかった「鉄球」、鉄のボールを分銅に使った鎖。手のひらサイズでも、鎖と合わせて私の体重を支えられる重量が……一気に二メートルまで巨大化して、長く長く伸びた鎖をいっきに巻き上げていく。そら恐ろしくなるほどの勢いで上昇し、そして高さが頂点に達しようとしたところで、ぱっと手を放す。


「なーんてね。〈道化師〉は重力になんて従わないんだよー?」


 後ろからボールで自分を弾いて、思いっきり吹っ飛ばす。そして、カードを使った。


「【おもてさかさま情転図(ローリング・ロール)】!」



[ジョブが〈道化師〉から〈アステリス・ランドドラゴン〉に変更されました]



 空の色が変わって見えるほどの数の流星群は、そっと寄り添うように私の横あたりで跳び続け、寄り集まって星々の輝きを閉じ込めた装備に変わっていく。黒い振袖はサファイアブルーのレオタードに変わり、肌にぴたっと貼り付くような感覚があった。


 肩やひじ、膝にかちっとした白い甲殻の鎧がくっついて、白い素材に青のラインとラメが入ったサイハイブーツに、真っ白いロンググローブも現れる。手元には角竜の頭を思わせる白い大盾と、内側から発光する蒼いランスが出現して、がっしり握り込むと、頼りになる重みが手に加わった。くるりと額に巻かれた鉢金が、少しだけ重くなる感覚があった。やっぱり、角が伸びてきているのだろう。


『おおおおおおお』『これが!』『やっぱコスなんやね』『モンジョブ単体ってこうなるんか』『見た目アド強すぎんか?』『めっさ強そう』『ところで何をするんでしょうか』


「まあ見ててー、ちゃんと魅せるよ!」


 飛んでいく先で、大爆発が起こった。私たち「水銀同盟」のギルドホームが、ドロッとしたブラックホールみたいなものに呑み込まれて消える。その吸い寄せ力も利用して、ひたすらに飛んだ。そして、〈アクセルトリガー〉でちょっとずつ軌道修正する。


『そう来たか!! 〈ラフィン・ジョーカー〉!!』

「行くよ“最強”、最後のひとりまで楽しんでね!」


 空の色が、塗り替わる。モンスタージョブは、元になったモンスターの力を使うことができる――〈アステリス・ランドドラゴン〉は、光属性の隕石を無数に降らせる、エーベル周辺でも最強のモンスターだ。闇属性の攻撃をして、光属性にはめちゃくちゃ弱いディリードにはものすごく効果がある。


「〈スターレイン〉」


 受ける側からはどんなふうに見えるのか、恐ろしい数の光が降り注ぐ。それが届く前に、紫色の光線が幾筋も放たれた。そして、居合いのように構えた剣に、夜よりも空の深淵よりも深い闇が凝集していく。


『さあ来いッ!! 〈カオス・ブレイズ〉!!』

「受け止めてね。〈シャイニー〉……!」


 光り輝くランスをまっすぐに突き出して、私は叫んだ。


「〈ランサー〉っ!!!」


 カードデッキ二枚分、百四枚のカードをいっきに消費した超加速。抜き放った暗黒の剣と衝突した光の槍が、すさまじい音を立てて衝突した。しかし――


「これと配布武器が、一瞬でも打ち合えるとはな……!」

「やっぱり、強いですね……」


 バギンッ、と槍が折れた。勢いのままに振り抜いた黒い剣が、私の心臓を逆袈裟切りにざっくりと切り裂く。地形を変えるほどの隕石たちも、ディリードの鎧を粉々に砕きながらも、ギリギリで“最強”を仕留めきれなかった。


 けれど。


「ッ、こ、……」


 ドヅンッッ、と。


 真っ二つになった鉄球が、服がめちゃめちゃになったディリードの胸を連続して貫いた。一撃目は死亡回避のアクセサリーで防がれたけど、二撃目はあやまたず心臓を貫通する。赤いエフェクトが、ばらばらと空中に散った。


「飛んでる最中に捨てたんです、鉄球」

「死亡しようが、この結末は同じだったわけか。しかも、俺の斬撃を使って……!」


 微笑みだけ残して、私のアバターが消える。視界が灰色になって、意識がセーブポイントまで転送されていく猶予時間が始まる。


 ジョブが変わったから、〈道化師〉として使った〈ギガントスケール〉は解けた。けれど、鎖に引っ張られて飛んでいた事実は消えないまま……エネルギーの斬撃によって、物理的な勢いはいっさい減衰せずに、空中を飛び続けていた。手のひらサイズが二分割されてしまうと、光の隕石の中ではちょっとした輝きのエフェクトにしか見えなくなる。もちろん、気付いたとしても消滅させる手段はなにひとつなかったわけだけど。


「フフ、ハハハハハ……!!! 最高だった、魔王の道化とは……これほど楽しませてくれるのか! この敗北を、心に刻んでおこう!!」


 がくりと膝をついて、ディリードは消滅していった。








 大規模ギルド対抗戦、企画名「ブレイブ・チャレンジャー!」。


 参加者数3084名、生存者なし。勝者「BPB」リーダー、ディリード。


 伝説はここに瓦解し、新たに始まった……らしい。

フィエルの敗因:武器が物理的に弱かったから

(配布武器が強いわけないので、光エネルギー消滅→武器破損で負けた)

ディリードの敗因:武器が物理に作用しにくかったから

(エネルギー体なので物理的衝撃がなく、鉄球を払いのけられなかった)


 圧倒的物理。あ、ちょっと情報量が少なかったのでこちらに……



ディリード【常人】Lv.336(合計)

【常人の意志】【最大多数の最大幸福】【木の葉を数えるものもなし】【常識の檻】

ジョブ:〈剣士〉〈ブラッディソード〉〈シャドウナイト〉〈毒鉱トカゲ〉〈ブラッディルーン・ムーン〉

スキル:〈道未だ見えず、歩むのみ〉〈刃に懸ける〉〈緋色の脈動〉〈血河に浸し牙を研ぐ〉〈消えゆく時へ祝福を〉〈闇にありて黒きもの〉〈黒血紫肉〉〈赤い刻印:三日月〉

武器:

「血魄混成:セイバーグリップ」

「血魄混成:棘鎧(全身)」

玉華苑:起動中「残響」「光芒」「波濤」「火花」「砕焔」「飴玉」「凝結」

(その他不明事項多し)

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