116【最強襲来】ブレイブ・チャレンジャー!【最後に強いのは物理】(1)
どうぞ。
『きた』『はじまた』『ばんわああああああ』『五人揃っとる!』『リベンジ戦!?』『こん』『フルメンバーで最強、これは勝つる(確信)』『リークネタマジなん?』
言葉が始まる前から、コメント欄は大いに盛り上がっていた。
「どうも皆さんこんばんは、徒歩で来ちゃったとっこでございますよー。お待たせしてしまいました、今夜は「ブレイブ・チャレンジャー!」本戦!! なんと、あの“最強”……この『ストーミング・アイズ』でも並ぶものがないと言われる「ディリード」氏より、参加表明をいただいておりますぞー!!」
『最強とかおるん?w』『メッセージくれるタイプの人だったのか』『まあ強者に勝った方が盛り上がるわな』『こないだの竜巻ズドンの人か』『↑あれか!』
こちらも動画メッセージのようで、ぴっと押したボタンがホロウィンドウを広げた。
豪奢な椅子に腰かけた銀髪の美丈夫が、カメラを見ていた。
『ギルド「ブレイブ・パイオニアーズ・バトルフロント」……BPBのリーダー、ディリードだ。光栄なことに、最強と呼ばれている』
だからこそ、と微笑むその顔には、まるで刃のような剣呑さがあった。
『彼女ら五人に立ち向かい、上回ってみせよう……証明する。最強が誰かを決めよう。〈壊帝〉、〈手綱〉、〈彼岸花〉、〈聖女〉、そして〈ラフィン・ジョーカー〉。全員をこの手で斬る』
『レインズって手綱か?w』『手綱扱いで草』『まあうn……』『残当』『むしろなんでまとまってんの感』『たいがい傲慢で大森林』『あの竜巻ってそんなに強かったん?』『↑全員倒れとったやろがい!』
傲慢とも思える宣言だけど、プレイヤーならみんなが……そして、前回の「魔王チャレンジ」を見ていた人も知っている。「水銀同盟」には実績がある――参加者を全滅させ、ひとつのギルドを壊滅させたという実績が。だからこそ、独力でそれを覆すとなれば、「俺は千人分以上に強い」と言っているようなもので……ほらを吹くにしてもまだましな選択肢があるよね、と思うくらいにはひどい。
「はっはっは。これはこれは、とても強いお言葉を頂いてしまいましたなー。いつの間に二つ名が付いていたのやら分かりませんが、ありがたく拝命しておきましょう」
『みんな全力でかかるつもりだよぉ。それで勝てるかどうか微妙』
「私もやるの!?」「当然ですよ」
レーネとシェリーは、いつの間にかコンビみたいになっている。
「今回は、我々「水銀同盟」と「BPB」のディリード氏、両陣営のぶつかり合いから始まります。とても過酷な戦場になりますので、お覚悟を」
『マジで?』『本気でヤバそうやな』『とっこちゃんがこれ言うのガチのときやん』『この世の終わりキテル……』『地獄変きちゃああああ』
ところで、とアンナがつぶやく。
『前回の参加者で、唯一こっちを落とせた人……“弓取”さん。今回も参加するんだって』
「ディリードさんがコンタクトを取って、来ていただける運びになったようです。フィエルさん、意気込みは?」
「え、私?」
来なくてもしょうがないかな、くらいに思っていたけど……来るなら来るで、楽しみだった。こっちに向いた仮想画角の中で立ち上がって、装備を着替える。
『ふおおおおおおお』『黒バニーさん!!?!??!?!?!?』『和風!!!』『髪下ろしめっちゃよき』『和服にハイレグってあるんか……』『よく見ろ、どこにも耳付いてないぞ』『これ何なの』
いい感じの反応が集まっている。
「ふっふっふー。前のはチーズケーキ風だったんだけど、今回はおはぎだよ!」
「サプライズ用意してたの!?」「らしさが詰まっていますね」
「ありがと」『んもぅ、言ってくれればよかったのにぃ……』
アンナにハグされながら、コメントを拾う。
『おはぎwwwwww』『おはぎ……w』『言うほどおはぎか?』『和菓子なのはわかった』『微妙にあんこっぽい色ではある』『ハットが竹串になってるの細かい』『なまあし!』『脚がやばい』『脚がえっちすぎる』
「足はこだわってるよー。下駄だとふつうは足袋履くけど、素足」
「初耳でしたな、あれこれ買っているのは存じ上げておりましたが。……ところで、意気込みなのですがー」
「あ、そうだった」
言われて思い出す。言おうとしていたことは何だっけ、とできる限り思い出してみるけど、その間もコメント欄はガンガン流れていった。
『マイペースすぎんだろ……』『草』『あのさぁ……』『やっぱり手綱必要やね』『新衣装よっぽど嬉しかったんやね』『それ専用の枠でやってもろて……』『忘れた感じか』
「や、忘れてないから! ――新装備はかわいいし気に入ってるけど、ちゃんと強いよ。動きも組み立てたし、対策会議もしてもらった。ちゃんと、勝って“魅せる”よ」
『さすがの自信だねぇ。さっきの宣言にも負けてないよ!』
「彼女の強気は、実力あってのもの。とっても頼りになる仲間がもっと強くなったところで、宣言いたしましょう」
配信用のカメラドローンが人数分配布され、数字のポップアップが誰もいなくなった部屋できらきらとエフェクトを振りまき続ける。
「それでは、「ブレイブ・チャレンジャー!」本戦。ただいまより、開始いたします!!」
※ヤバめのコメントはモデレーターさんに消されています




