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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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111/166

111 芽吹かぬのなら死んでいる(6)

 11/1に111話を迎えてしまった……ライトオの日? 何の日だっけ。


 どうぞ。

 思ったよりも遅い斬撃に、カードの嵐を浴びせる。〈ウィ・ザード〉で呼び出した無数の悪魔たちが、すさまじい数の攻撃を殺到させていた。ボールくらいで揺らいでいた敵は、この時代の戦士たちの攻撃を受ける前から、すでにふらふらだ。


「ずいぶんへりくだってたわりに、強ェなあ。戦いに回ると、ここまでなのか」

「あなたが知ってる〈道化師〉も、裏で戦ってるかもしれませんよー?」

「悪くない考えですね。本部は喜ばないでしょうけれど」


 歯車が降り注ぐけど、防御系のバフは全体に広がっていて、悪魔同士のシナジーもあるのか、ちっとも効いていなかった。戦士たちの身のこなしはさすがで、見えていれば当たらないとばかりに、さっさっとかわしている。


 バフがすごく強い時計は、時の番人のせいか、機能停止していた。


『時の番人の前で時間をなんとする? 早めるか、止めるか、戻すか? 否、否だ。何ひとつ許しはしない……』

「だいじょうぶ、分かってる。私だって許さないから」


 自分で飼っていた実験体ならどう扱おうが自由だ、なんて言われても、納得できる限界があると思う。「お姉ちゃん」は彼女なりの自我を持ったけど、すぐに失くした。その妹は、姉のことはよく分からなかったみたいだけど……幼く無垢なまま、化け物のパーツにされて死んだ――


 そんなことをしなくても、ロディリアの野望は果たせたに違いなかったのに。


「時の番人、というわりには。神話に語られる力は使いませんね」

「粋がってるだけだ。歯車が錆びるほど長く封じなきゃアならねえんなら、肺病で寝たきりの爺さんみてェなもんだぜ」

「なるほど。ですが……」

「ちょっと、耳を塞いでください」


 果実や葉がばらばらと落ちて、フルムもどきが生まれる。けれど私にとって、敵の数は多ければ多いほどありがたい。地を這う雷と天から降る槍が、味方の悪魔たちに中継されて威力を増し、一瞬で大軍を消滅させた。


「なんだこりゃあ!? 何者だ、お前……」

「聖杯の使い手の弟子……? です」

「今後耳が潰れたらあなたのせいにしますよ」

「ごめんなさい」


 まったく、とやや冷たい目をした棺のシスターさんは、どんと棺を置いて鎖を解いた。音もなく開いた隙間から、うっすらと透けた手やドロッとした色の鎖が大量に出てくる。


「新たな命なのに、食わせても棺が喜びませんか」

「使い勝手悪すぎんだろ、そいつだけ」


 雷で焼かれ、光の槍で貫かれ、無数の攻撃を受けてめちゃめちゃになった魔女の全身は、黄金の部分さえ輝きを失って見えるほどひどい状態だった。


『時よ、種を集めよ……未来に根付いた種をすべて! この身に……!』

「時計が……!」


 私が持っていた時計の中にあった、ロディリアが過去で作り出したものらしい種……黒い影のかたまりが、ずるりと抜けてロディリアに集まっていく。


「生まれぬまま没した未来なら、死に還りなさい」


 開いたままの棺から出てきた白い手が、大きく手のひらを広げる。まるでブラックホールか何かのように、雲か竜巻のようにすべての時間から集った種が吸い込まれていった。


「魂を留め置いて腐らせる、これだから冒涜をためらわぬ術者はいやなのです」

「す、すごい……!」


 ぴし、ぴしと魔女が枯れていく。


『なぜっ、なぜ……! なぜ時が見えない。栄光の過去も、オマエたちの動きさえ! 今この手にある輝かしい未来も!! なぜだ!!』

「ないからじゃない?」

「ガハハハッ! そうだなァ、在野の術師にゃあねえよなあ」

「代わりのものを贈ります。それで満足しなさい」


 シスターがインベントリから取り出した長い棒が、シャキンッと開く。棺から飛び出した鎖が、大鎌に溶け合って何かの力を付与した、ようだった。


「お前からの贈り物かぁ……センスねェからなあ」

「そうなんだ……」


 槍投げの構えを取った戦士は、ふっと笑った。


「道化は何で仕留めるんだ」

「これに、します」


 力を誇るのなら、時間を制したというのなら――力なく、流星をさえ留め置くものを。両手にカードデッキを持って、親指だけでふたを開ける。


「死を。永劫を」

「どてっ腹に穴ァくれてやるよ」


 大鎌は、どうにか抗おうとした両腕を、ヒュウンと空気ごと切り裂いた。続けて、黄金の輝きが、魔女をまっすぐに貫いた。


「なんにもあげない」


 百八の〈ランダマイズ・スロー〉が、巨大な魔女の全身に弾けた。まるで花火が一気に打ち上がったかのように、カードの欠片ひとつさえ残っていない。


『な、ぜ……式は、正しかった、はず』

「これから考えなよ。時間いっぱいあるし」


 棺は、巨大な魔女から驚くほど小さい魂を抜き取って、開いたときと同じように、音もなく閉じた。


「お手柄、なんだが。お前さんはどっちだ?」


 槍の戦士は、槍で肩をとんとんやりながらも、笑っていなかった。シスターも、大鎌を地面につけて、いつでも振るえる構えを取っている。


「どっち、っていうのは……」

「とぼけんなよ、見りゃ分かるだろ? 正教会と傭兵団――お前ンとこはどっちに尻尾振ってる? どっちだろうと俺は見逃すがね、そっちのお姉さんはどうだかな」

「あなたは、どこに所属しているのでしょうか。答え次第では、死んでもらいます」

「ス、――」


 大鎌を振りかぶったシスターと、槍投げの構えを取った戦士が見えたところで、時がひび割れた。



[クエストクリア!]

 傭兵団は正教会傘下の冒険者ギルドになりました。スポンサーが変わったらもう、ね……

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