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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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105 練習は一歩進めば大成功

 どうぞ。

 モンスターの生息域を聞いた関係で、蹴り技を鍛えられそうな敵はピックアップしてあった。まずは野良リザードマン、次に人形、そして人間大のゴーレム。人形は近くにマスターがいるかもしれないから、探すとしたらリザードマンだろうか。


「たしか、カンデアリートからディーコノジーヴに向かうあたりにいる? ……だっけ」


 聞いた話によると、ディーコノジーヴは宗教都市で、モンスタージョブに就いている人はほぼ立ち入れないらしい。ディリードさんたち「BPB」本隊はいろいろ貢献したから別だけど、そもそも旅人自体が歓迎されていないようだ。


 その代わりに運営が用意したのか、少し離れたところに「デュデットワ」というもうひとつの街がある。こっちは普通のところで、けっこう大きなところらしい。


「カンデアリートの道がこっちで、その先だから……あの湖のあたりかー」


 けっこう山を登ったのに、降りる道を行くことになった。街の解放クエストが終わるまで、モンスターの出現率や強さはめちゃくちゃレベルが高いみたいだけど、ディリードさんたちが毎度のように消化してくれる。そんなに強くない、レベルで言っても四十くらいの敵しか出てこなかった。


 たまにいるレアモンスターは、こちらが先に逃げ出せば深追いはしてこない。けれど、挑めば死ぬまで追撃してくる。


「ゴロロルル……」

「こんばんはー。ちょっと付き合って?」


 鈍い水色のメタリックなウロコ、幾度も重傷を負ったらしい古傷がいくつも刻まれていて、リザードマンというより人型の恐竜みたいな敵だった。手に持っている剣と盾も、ただ金属で作ったわけではなくて、ちゃんと凝った細工が施されている魔剣だ。


 威嚇で済むラインを踏み越えて、足をすこし引く。私の動きを予想してか、ちょっと怪しむような目がカッと開いた。


「ロァッ!」


 二人の間にある空気を切り裂きながら、魔剣が振り下ろされる。敏捷はこっちの方が早いけど、あっちは目に見えて「経験がある」ことが示唆されている。単純にかわすだけでは、軌道を合わせられて当たってしまう。


 パパンッ、と……剣を横から蹴った。体をくるっと九十度回して、体勢を上下ぐるりと入れ替えて繰り出したキックは、ちゃんと当たる。殴りかかってきた盾を、倒立の姿勢で後ろにスライドして避けた。


「ロロゥ……」

「とっ、と。ふつうの格闘技とか知らないし、「これ」でやってよかったー……」


 前衛職の格闘っぽい技は、筋力や攻撃力依存でダメージを計算するものが多い、らしい。けれど、中衛・後衛や邪道に近い技は、敏捷や器用に依存してダメージを出す。初期も初期に考えられていた「殴り型道化師」は、いちおうシナジーとしてはまともな方だった……けど、けっきょく「無限リリープ」には勝てなかったようだ。


「ロォウ!」

「尻尾も剣もっ、思ったより! 遅いねー?」


 元体操選手として、姿勢を崩すのは事故そのものだから、かなり怖かった。けれど、〈アクセルトリガー〉は動きが早すぎて、思ったより姿勢が崩れない。だからこそ、崩れかけてきたときの立て直しも簡単だ。倒立も現実よりはずっと簡単だから、スキルアシストがかなり利いているようだった。


 手だけでジャンプして、空中で使った〈アクセルトリガー〉でかかとをぶつけ、返したつま先を刺す。ぐっと突き出した盾に足を曲げて着地して、腕がいっぱいに伸びた瞬間にまた〈アクセルトリガー〉を使って、下から盾を蹴り上げた。思いっきり吹っ飛んだ盾に、ジャンプしてから〈アクセルトリガー〉を使って追い付く。


「はあっ!」

「ゴォアッ……」


 蹴り入れた盾が、剣を弾き飛ばす。拾いに行ける時間はないと考えたのか、相手は格闘戦の構えをとった。対するこちらは、カードと飾剣を取り出して分身する。


「分身の動きも、ちゃんと見ないとねー」


 私自身の動きをトレースしたAIの動きは、わりと私よりいい動きをしている。ボールでトランポリンをしているときも、私はちょっとだけやらかしそうな着地をすることがあるけど、分身はぜんぜんそういうことがない。


 分身はすっとかわす動きが多くて、〈アクセルトリガー〉はぜんぜん使っていない。かなりすごいとは思うけど、あんまり参考にはならなかった。


「じゃあ、仕留めて終わりでいっか」


 ぱちんとふたを開けた時計で、〈熔充送戯〉から〈ホット・アラーム〉を使う。いくつも命中したオレンジ色の斬撃は、そしてリザードマンを光の粒に変えた。




「ここが湖かー……地底湖とつながってたりするのかな」


 遠くが青くかすんでいて、一部は向こう岸が見えないくらい広い。岸に見える風景には、戦っているらしい爆発や雷光が見えた。


「そういえば、水中戦闘とかできないんだよね……」


 一瞬〈ウィ・ザード〉で水を呑めば、なんて思ったけど……さすがに、〈大きく開けて?〉を使ってもまだまだ、キャパシティーを超えている気がする。せっかく青系の衣装で固めているんだから、時間いっぱい湖周を歩いてみることにした。

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