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いつでも真面目ちゃん! ~VRMMOでハジケようとしたけど、結局マジメに強くなり過ぎました~  作者: 亜空間会話(以下略)
3章 噴血いと烈しきは生まれ出ずる折の

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103 演出は凝りに凝ってこそ/サーヴズ・ファウンデーション

 新衣装……を買う回(お披露目ではない)。


 どうぞ。

 前にこの服を買いに行ったところへ歩く。翡翠の仮面をつけた、木彫りのマネキンを目印にしたあのお店は、今日も開いている。


「いらっしゃい。しばらく前、解を開いてあげたお客さんだったわね」

「はい! また来ちゃいました」


 また暗いお店を、スイッチをカチカチひねりながら明るくしていく。意志の証を壊されたNPCはこの人以外見たことがないけど、元気がなくなるとかレベルアップしなくなるとか以上に、服を作っているのに色が見えなくなるのは辛そうだった。


「あれから、遠くから街に来るお客さんも増えてね。あなたの気に入りそうな服も、いくつか作ったわ。ちょっと待ってね、マネキンに着せるわ」

「ぜひ見たいです!」


 お店の経営をしているとそういうスキルが出てくるのか、店内にあるマネキンの服装がささっと入れ替わっていった。〈道化師〉らしいド派手なものばかりで、ジェロゥが着ていたようなものもある。と、居並ぶ中でひとつ、ひときわ目を引いたものがあった。


「これ……すっごくいい」

「そうだと思ったわ。このデザインを思いついたときのお客さん、あなたのことも言っていたもの」


 どうやら、ルイカさんの和装ドレスを見て思いついたらしい衣装――


 黒にいくつもの花が染め抜かれた振袖に、なぜか腰回りだけがら空きのハイレグ。でも、布をよく見るとちゃんと和服の生地だ。帯で留めている布は後ろと左だけに回って、まるで蝶のようにさらりと垂れている。炭のような、光沢を帯びた黒い木の高下駄は、右足の太ももに鼻緒と同じひもが巻き付いていた。


「たしか、右が利き足だったでしょう。よく映えるようにしておいたわ」

「ありがとうございます! わぁ、いい……!」


 デザインラインは同じだけど、和装と洋装でぜんぜん違う。そして、ハジケたセクシーさは残していて、「私が気に入りそう」という言葉のままだ。


「買います! いくらですか?」

「ちょっと材料費がかかりすぎたから、十六万ディールよ」

「そうでしたか」

「即金。そうね、あなたってお金には困ってなかったわね」


 金貨六枚と白金のコイン一枚をちょうど出して、受け取ってもらった。


「今回はどうしましょうか。さすがに、その髪型のままにはしないでしょう?」

「そうですよねー……。ちょっと試着してから考えてもいいですか?」

「もう買ったじゃない。前と同じね、好きなだけ試して。道化は全身、メイクもばっちりこだわらなきゃいけないもの」

「お借りしちゃいますね」


 試着室に入って、全身をどう見せるかのコンセプトを考える。黒系のお菓子もいろいろあるけど、黒い和菓子はどれもけっこう地味だ。それに、見た目の中に彩りはともかく、取り外せない形で食器をイメージした意匠を付けるのは、なんとなくよくない気がした。


「うーん。コーヒーゼリーとチョコはいったんやめて……ようかんも、幅が小っちゃすぎる、かな? どうしよ」


 食べて美味しくなくても「スヰートパレヱド」の一員だから、こういうところはしっかりしておきたい。ぐるっと考えが一周したところで、全身をおはぎ風にすることにした。太もものひもだけ桜色にして、長めにとってグラデーションをつけた振袖の袖部分を、ちょっとずつ黒からあんこ色に変わるように調整していく。アンナに教わったカラーサークルいじりは、あの子が言う通り、VRを楽しみたい女子の必須テクだった。


「髪型は……やっぱ、サイドテールは違うかー」


 紫色とレモン色のメッシュを入れたサイドテールは、白というベースの色があってこそ、仮面をつけるという動きの演出に合わせてこそだ。ほどくとばさーっと広がった、後ろに回した腕に当たるくらいの長さはそのままにして、ちょっと右側に偏らせてひとつに結ぶ……


「ん、もうちょっとアシメ強調する方がいっか」


 と思ったけど、顔の左あたりの髪をくっと持って「編む」コマンドを押す。どれだけゆるめに編んでもなんだか変だったので、けっきょく先の方でかるーくまとめるだけにした。もとが黒髪だから、和風の雰囲気に合わせるための足し算はいらない。まとめるためのヘアピンは、花付きの桜の小枝にする。


 下駄の色は変えられないけど、これはこれでお皿みたいでいいかもしれない。性能は蹴り技の強化だから、食べられる……負けるイメージをひっくり返してぶち壊すみたいで、文脈にひびを入れる気分だった。こういう楽しみのためにコーデやるんだよね、と口から漏れていた。


 後ろで留める櫛やヘアピン、色の変更の料金をさっと払って――私は、もうちょっとだけお金を使うことにした。


「すみません、あとワンセットいただきたいんですけど」

「お好きなだけ。ツケじゃなければ何でもいいわ」

「それを。サイズ合わせだけお願いします」


 私の言葉に、店長さんは怪訝な顔をした。

『劇場版牙狼 TAIGA』観ました。最高や……あと『カムヤライド』最終13巻も最高でした。純粋に楽しめるものが多いっていいことだよね。あと……いやこっちはいいか。ある意味望み通りの結果だし。

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