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緑の手のキトル〜極貧で売りに出されたけど、前世の知識もあるから全然生きていけます〜  作者: 斉藤りた
アルカニア王国編

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エピソード 20

「そうでげすぅ。その辺から、あの木のある所ら辺までなら大丈夫でげすぅ」


・・・村長って、癖のある喋り方が出来ないとなれないのかしら。


今私は、ロンド公爵領の中にある村に来ている。


畑にお野菜とその周辺にモーリュ草は生やしたんだけど、今は畑の近くの使っていい土地を教えてもらってるところ。


伯爵領地を薬草の名産地にした話をしたら、公爵様一家が「うちの領地を果物の名産地に!」って言うもんだから、果物まで作る余力、つまり働き手がいる村には果物の樹を生やして回っている。


まぁナイトの話では公爵領は王都から近くて流通も盛んらしいので、ここで取れた果物は国中に行き渡るだろうとの意見もあったしね。


私が生やしたらしばらくは収穫し続けられるみたいだし、その間は値段を格安にしてもらう事、作れる場所は教えてもらけど、作る物は私に任せてもらう事を条件にした。


伯爵領での作業の繰り返しが嫌だっただけなんだけど、パールちゃんは「何が出来るかサプライズという訳ね!」って喜んでたな・・・。


色々作りたいけど他の場所にも特産品作るつもりだから、ここは秋の果物で統一する事にした。


「キトル様〜いいっすよ〜」


畑の近くにヘブンが掘った穴に杭を打って紐で繋いだ一区画を果樹園にする。


ここに生やすのは〜栗!


栗は果物っていうより木の実だけど、やっぱり秋の味覚では欠かせないし?


栗、イガから取るのと下処理が面倒なんだよね〜鬼皮とか剥くの超〜大変!


大学で住んでたアパートの大家さんがお庭の栗が沢山出来たからって秋にくれて毎年やってたな〜。


大変な分、美味しいんだよね。


栗きんとんにモンブラン、栗の甘露煮や栗ご飯・・・そういえばお水が豊富な所に行ったらお米も作らなきゃ。


「・・・緑の使徒さまぁ、これ食えるんでげすか?」


村長さんが栗のイガイガを足で突っつく。


まぁこの見た目じゃそうよね。


流石のナイトとヘブンもちょっと引き気味。


「これは食い物ですか・・・?」


「食べたら痛そうですねぇ〜」


むぅ。美味しいんだぞ?


「これはね〜こうやって踏んで・・・」


あ、これ底が固い靴じゃないとダメなんだった。


今履いてるのは伯爵家でメイドさん達が用意してくれた靴だし、丈夫だけど前世のほど底は固くないからな〜。


と思いながら軽く蹴ると。


フニッ。


・・・あれ?


しゃがんで指で突っつく。


フニフニフニフニ。


なんで栗のイガが柔らかいのっ?!


もしかして・・・


指を突っ込んでイガを剥いて、中の栗を取り出して、爪を立てる。


「はぁ?!剥けるし!」


なんで指で剥けるのよ〜?!


水に漬けてもないし、茹でてもないのに!


「あ、そうやって食うんすか?」


「違う!違うけど食べるのはこの部分!」


「え、何が違うんすか?」


「本当はもっと大変なのよぉ〜!」


もぉ〜!何これ?!異世界仕様なの?!


あ!スキルのせいか!おかげ?もうどっちでもいいや・・・


「ただこれ、このままじゃ食べられないから、茹でてから」


「キトルさま〜、これほんのり甘くて美味しいですねぇ!」


「食えるんかいっ!」


そういえば渋皮もないなぁ・・・。


そうか、渋皮煮は作れない栗だね・・・。


まぁいいや。


「栗、という食べ物です。そのままでも素朴な味で美味しいですけど、甘さが控えめなんで料理にもデザートにも使えますよ」


村長さんに説明する。


「ほ〜使徒様は色んな食べ物知ってるんでげすねぇ〜」


・・・この口調、段々馬鹿にされてる気がして来たから早く戻ろ。



「ほほう・・・このままではなく、潰して砂糖を混ぜてから布巾で絞って形を整える、と・・・」


今持って帰って来た栗で公爵家の料理長にレシピ伝授中。


「そうそう、それが栗きんとん。あとは、潰して裏ごしした栗に砂糖とバターと生クリーム・・・生クリームってある?」


「生クリームはございますな」


「じゃあ生クリームも混ぜて、ペースト状にしたのを、クッキーとかタルトに乗せたのがモンブラン」


「ほほ〜う!なるほど!素晴らしい発想ですな!」


そうでしょうとも。私が考えた訳じゃないけど。


「腕が鳴りますなぁ!いやぁ、色んな果物が市場に出回り出すのが楽しみです!」


「キトル様、ちょっといいっすか?」


キッチンにナイトが顔を出す。


にわかにキッチンメイド達が色めき立つ。


おぉ、ナイト人気だねぇ。


「お兄さんの件でちょっと話があるみたいで、応接室に呼ばれました」


ブランの?!


ナイトと走って応接室に向かう。


こっちは走ってるのに、ナイトはスピード合わせて歩いてやがる・・・。


ふんだ。私が成長したらナイトを走って置いていってやるぜ!


応接室を開けると、あれ?


見た事ある女の人・・・?


あ!奴隷商の馬車に乗ってた黒髪吊り目の美人さん!


「あれ、アンタ・・・」


「苺食べた?!美味しかったでしょ?!」


「・・・ぷっ!あっはっはっは!最初に聞く事がそれかい?・・・そうだね、美味しかったよ」


わぁ〜あの時は笑顔が見れなかったけど、笑顔もやっぱり素敵だねぇ。


「アンタ、緑の使い手様だったんだね。あの時は美味しい赤い実、食べさせてくれてありがとね」


「どういたしまして!美味しかったなら良かった!」


そういえば結局苺まだ作ってないや。


「なんで緑の使い手様が奴隷になりそうになってたのさ」


「いやぁ、前の日に力が使えるようになったばっかりでさぁ。でも子供売るような親の所にいるより逃げた方がいいかと思って」


「なるほどねぇ〜。アンタも大変だったんだねぇ」


ゴホン!


「そろそろ良いかな?」


「あ!公爵様、ブラン、私の兄さんは見つかったんですか?!」


「それについて説明しようとしていたんだが・・・」


ごめんごめん。


じゃあ、説明してもらおうじゃないの。

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