第7話
ーーベルーー
「初心者歓迎! だれでも来なさい! へいビギナーズ、カムヒア!」
「ちょっとあの人は無理」
ばっさり切り捨てたね。
でもまぁ確かにあのテンションは私も無理かな。
ギルドの勧誘をしている人たちを眺めながら歩き始めて早数分、スルーした団体は数知れず。
「なかなか良さそうなところがないねぇ」
「そもそもあの空気に混ざり辛いね」
「そうだね……」
「みんな元気だね!」
そもそもこういった場所で話す経験などない私たちは早くも挫折しかけだった。
ヒナだけは物珍しそうに周囲を見ているけど。
どうしようか……。
「ねぇねぇそこの彼女たち?」
「え?」
ふと、声をかけられた。
声をかけられたほうを向けば、いかにも上位のプレイヤーらしき男性が立っていた。
なんだろうか?
「君たちかわいいね」
あ、これナンパだ。
現実のほうで何度か経験があるので、すぐに分かった。
「見たところ初心者みたいだね。いまおれのギルド初心者大募集なんだ。どう?」
「え、えっと……」
しかし経験があるといっても対処できるかは話が別だ。
「いまならおれが3人ともしっかりと面倒見てあげるよ。こう見えて結構つよいんだ、おれ」
「あ、あの……」
しかもこの人結構ぐいぐいくるなぁ……。
返答する暇もなく言葉を放ってくる彼に困り果ててしまう。
サイカとヒナに至ってはもう完全に距離を置いている。
待って私を置いていかないで見捨てないでー。
「おっけー? おっけーでしょ? それじゃふがっ!?」
ついに手を引いて私を連れて行こうとした彼の顔面に何やら黒い球体がめり込んだ。
なんだかわからないがチャンスだ。
「ごめんなさい結構ですさようなら!」
それだけ言ってサイカたちと一緒にその場を去る。
助かった……でもなんだったんだろうあの黒いの?
どこかで見たことあるような気はするんだけど……。
ーーラビーー
HQHQ、こちらラビット、現在スニーキングミッションを進行中。
追跡対象は現在町の大通りを徒歩で移動中。
先ほど悪質な勧誘があり顔面にシャドウボール超エキサイティンをかましておいた。
悪質な勧誘ダメ絶対、イケメンアバター死ねばいい。
ということで現在適当な建物の上でストーキングナウ。
通報したい人はお好きにどうぞ、逃げ切って見せる。
冗談は置いておいてベルたちだ。
彼女らは今も大通りを歩いている。
周囲のギルド勧誘のプレイヤーたちは総スルーだ。
いやうん……知ってた。
彼女らがあの雰囲気に混ざろうと思えるわけないよなー。
あぁ、良さそうなギルドを見繕いたい!
でもだめだ、それだと別れた意味がない……。
あくまでも自分の力で……お?
一つのギルドに目が留まったようだ……なになに? ギルド名『女神の威光』
「それだけはやめておけ!」
おっとつい声が……聞こえる距離じゃないし大丈夫か。
あれ? なんかベルさんがきょろきょろしてる、うそ、聞こえた?
あ、サイカとヒナつれて移動してった。
聞こえたのかはわからないが心の声は届いたらしい。
え? なんでそのギルドはやめておいたほうがいいかだって?
だって……あのギルド名、名前の前に魔王と救世主のって書いて『我らが』ってルビ振ってるんだぜ?
……察せたか。
しかしまぁ何とも前途多難なギルド探しになってるな。
知り合いがいれば話は別なんだろうけどなぁ。
ん? ベルたちにだれか話しかけてる? ……あ、ルシだ。
ちょうどよく会えたな。彼女がいれば大丈夫だろ。
……なんだろう、すっげぇ寒気がする。
なんかしらないけど今の彼女らの現状をルシが知ったらおれがやばい気がする。
……ル、ルシがいれば大丈夫だろ!
ミッション完了、帰投す……おっとメッセージだ。
なになに? 『私ルシサン。いまベルとお話してるの』
…………。
「検索『メリーさん』『対処法』」
助けてゴーグル先生!
アオイです。
レポートです。課題です。課題レポートです。テストです。中間です。中間テストです。
……はっ!
危ない危ないトリップしてました。いやーほんと、文化祭終わってからラッシュがひどい。そろそろ発狂しそう……え? なに? 執筆?
……いあ! いあ! くとぅるぅ! ふたぐん!




