第1話
「帰りたい……」
「ついてそうそう元気ないねお兄ちゃん」
「何もかもこの寒さとあの階段が悪い」
神社の前にある階段ってなんなの。無駄に数が多いんだよ。存在価値を教えてください。ていうかやっぱ寒い。そしてなによりも。
「人多い」
「そりゃ目的一緒のひとばっかりでしょ」
かーらーのー。
「カップル多い」
「え?」
人は多いしその大半は仲睦まじげなカプール。ふざけろよ。うちの親含めてめぇら揃いも揃ってイチャイチャイチャイチャ。あぁ本当に……。
「リア充爆発しろ」
非リアの悲しみを知れ。
「……ねぇお兄ちゃん」
「なんぞや」
お兄ちゃんいまリア充共が何かの拍子で阿鼻叫喚の嵐になってくれと祈るので忙しいんだが。
「ほんとはリア充なのに鈍感で気づいてない人ってどう思う?」
「死ねばいいと思う」
なにその主人公。思わず真顔だわ。
「……自虐かな?」
「なんでやねん」
その返しは意味不明だぞ妹よ。
「じゃあその主人公さんが目の前にいたらどうする」
「とりあえず殴る」
どうせイケメン君だろうから顔を重点的に。
「そっかそっか……鏡あるよ。見る?」
どう言うことだってばよ……。ま、とりあえず出店を回ろうそうしよう。
「ゲーム系はねぇかな」
「お祭りじゃないんだから微妙じゃない?」
「この際くじ引きでも可」
「それは破産しちゃうからさせないよ。どうせ当たりないんだから」
なにをいうか。辺りがなかったとしても残念賞の笛をたくさん持って帰るのもくじ引きの醍醐味だろう。それじゃさっそく探しに……って、うん?
「? お兄ちゃんどうしたの?」
「いや……迷子……かね?」
視線の先には振袖をきた小学生くらいの女の子が一人、人込みの中キョロキョロしていた。周りのリア充どもはイチャイチャに夢中で気が付いていない。おーい助けてやれよー。彼女さんの好感度アップまったなしだぞー? ……だめだありゃ。
「しょうがないか」
「まぁ、目的も何もないからね」
妹と顔を見合わせる。考えていることは同じ。前を向いて、迷子の子のもとへ向かう。……うーん、若干デジャヴ。
「どうかしたか?」
「迷子? 大丈夫?」
「っ……!」
いきなり声を掛けられ、警戒する少女。しかし少女は三兎、俺の顔を順に見て、俺の顔をじっと見たまま固まった。俺の顔になんかついてる? あれ? なんかこの子の顔見覚えが……。お互いの顔を見合ってしばらくし、同時に口を開く。
「……うさぎさん?」
「……ヒナか?」
アオイです。
この前首を寝違えました。こういうのってつらいですよねぇ。ちょっと振り向いただけでいたたたた。
どうして首を寝違えるんでしょうか。寝相が悪いのかな? おかしいな。私は起きたら掛け布団がカオスな状態になってるくらいすばらしい寝相なのに……。




