表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
首刈兎は今日も行く!~三姉妹とのペットライフ~  作者: 真田 蒼生
間章「首刈兎は遊び倒す?」
51/84

第1話

突然だが、ガチャというものをどう思うだろうか。

俺が子供のころから当然のようにそれはあった。アニメやゲーム、ご当地キャラなど様々な種類のあるそれらから好みのものを選び、握りしめた百円玉を入れてレバーをひねる。

でてきた球体から何が出てくるか、幼少期の俺はそのドキドキを主に楽しんでいた。みんなにもそういった頃があったはずだ。

……だが、今はどうだろう?

俺たちくらいの世代でガチャといえば、アプリのゲームのレアアイテムを指すのがほとんどだろう。

ゲーム上の通貨をつかってガチャを回し、出てきたアイテムを使用して遊ぶ。しかし現実のガチャと同じく、ほしいものが必ず出てくるわけではない。なのでそれらのアイテムがほしいプレイヤーたちは、現実の金を使ってゲーム上の通貨を買ってさらに追加でガチャを回す。これを一般的に課金ガチャという。

そのゲームにのめりこんでいるプレイヤーほど、多くのガチャを回す。1回300円ほどのそれはデータの物なのでなくなることはなく、回せば回すほどアイテムが放出される。そして、この世には物欲センサーという恐ろしいものがある。

OO落ちろ! とガチャを回すプレイヤーほど、物欲センサーが働き、そのアイテムが出てこない。そしてプレイヤーたちははずれを引くほど、次こそはとあたりへの欲求を増加させていく。そしてどんどん金をかけていくのだ。

中にはそれによって破産してしまう人もいるらしい、恐ろしい話である。



……でも課金要素が一切ないガチャなら回してもいいよね?


「ということで俺はこのガチャを回します」

「あ、うん、どうぞ」

「……さっきまでの空気ぶち壊しましたね」

「ガチャー?」


人生ゲームの部屋を出た後、アップデートによって追加されたエリアのロビーにて、俺は3姉妹にとある意思表示をした。

秋のアップデートのテーマは娯楽。現在いるロビーを中心に人生ゲームがあるカジノゾーン、遊園地ゾーン、PvPを楽しむスタジアムゾーンなどがある。

そして、現在いるロビーには、ガチャがある。現在いるロビーには、ガチャがある。

……大事なことなので二回言った。三回言ってもいいよ?

ゲーム上の通貨(ゴルド)を使って回すガチャで、一回1万Gである。

そしてガチャは3つに分かれている。

消費アイテムが出てくるガチャ、武器類が出てくるガチャ、防具類が出てくるガチャの三つだ。

俺が狙うのは武器ガチャ。なんとこのガチャ、出てくる武器の種別を選択できるのだ。

つまり、大鎌を出すことが可能! ……まぁ、その分でてくるアイテムのレア度は低くなるのだが。まぁそんなことはどうでもいい、重要なことじゃない。

ヒナがくれたマンティスサイスもいいのだが、意外とドロップ率が高い武器で、攻撃力はいまいちだったのだ。……ドロップ率が高いのになんで出なかったのかは、物欲センサーが恐ろしいってことでお願いします。

まぁ、これでもうちょっと火力が出せたらなと思います。


「いざ」

「……すっごい気合が入ってるね」

「……なんか、フラグって単語が頭に浮かぶんですけど」

「フラグ?」


こらこらやめなさい。

まぁ、このガチャはもう大鎌しか出ない仕様に設定した、いわばハズレ無しのガチャだ。これでどんなフラグが立つというんだ。大丈夫だ、問題ない。

それじゃーいくぞー!

1万Gを振り込んで、ガチャを回す。そうして、ガチャから球体が排出された。

その球体をつかむと、ウィンドウが表示される。


『開封しますか? YES/NO』


迷わずYESを選択し、開封する。さぁご対面だ。どんな武器がでてくるかな? いでよ俺の新しいAIBO!


『マンティスサイスを取得しーー』

「ーーザッケンナコラー!」


その文字を読み終わるより早く、手に持っていた球体をガチャの隣に回収箱に投げ込んだ。ナイスイン。じゃねぇよ。


「ウソダドンドコドーン!」

「だ、大丈夫? ラビ君」

「……あぁ、大丈夫だ、問題ない」


ふぅ、落ち着けた。ハズレがないと油断していた。唯一のハズレがあったのを忘れていた……っ!


「よっしゃワンモア」

「まだやるんだ」

「当然」


さすがに二回連続で同じのが出るってこたぁないだろ。おいフラグって言った奴出て来い。次に出てきた武器で首飛ばしてやる。

ガチャを回し、出てきた球体を開封する。


『初心の大鎌を取得しーー』

「ーースッゾコラー!」


俺は再び球体を回収箱に投げ込んだ。天丼。


「オンドゥルラギッタン……この後どうだったかな?」

「……とりあえず大丈夫そうですね」

「うん大丈夫大丈夫」


こんなことで怒ったりしないよー。ははは、なんだろう。無性にガチャをぶち壊してくなってきた。


「それじゃワンモアタイム」

「……懲りませんね」

「三度目の正直っていうだろ?」

「二度あることは三度あるともいいます」


はっはっは、そんなの聞こえなーい。

よっしゃやったる。きっと大鎌に限定するからダメなんだ。素のガチャを回せばレアが出るはずだ!

ということでヒアウィゴー。

……出てきた球体は、金色。おっけきたこれ見るからにレア感! イイネイイネ。

それじゃご開帳。

開封して出てきた武器は……何やら赤い紐。い、いやまて、このなりで種別が鎌ってことも……


『種別:鞭、ペットリードを取得しまーー』

「ーーでしょーねーーーーーー!」


球体を回収箱に向けてシュゥウウウウウウウウ!


「……で、これはいったいなんだってばよーー《アイテム鑑定》」


【ペットリード】種別:鞭

効果:なし

概要:契約している獣の首輪につけて散歩気分を楽しもう


思った以上に無駄なアイテムだった。攻撃力強化とかなんもないし、こんなんが金色とか……。ガチャで出てくるレア武器はネタ武器なのかね?


「うさぎさんうさぎさん」

「ん?」


考え込んでいる際にヒナが手を引いてきた。


「それ頂戴」

「これ?」

「うん!」

「はいよ」


手に持っているペットリードをほしがったので手渡す。するとヒナはさらに俺の手を引く。


「どした?」

「うさぎさんしゃがんで」

「ほい」


言われたとおりにしゃがむとヒナは慣れた手つきで俺が身に着けている首輪にリードを装着した。なにがしたいんだ?


「はい! お姉ちゃん!」

「えっ……あ、うん。ありがとう」


ヒナはそのままリードの持ち手をベルに渡す。……何この状況?


「どういうプレイだこれは」

「あ、あはは……」


やっぱりガチャから出てくるアイテムってほとんどネタなんだろうな。通りで大鎌が出ないはずだよ。くそ、まんまと運営にやられたよ……。

そう、自分を納得させているとき、俺の次にガチャを回しているプレイヤーの会話が聞こえてきた。


「お、金が出た!」

「中身はなんだ?」

「えっと……死神の鎌だってよ。大鎌の武器だ、いらねー」

「クソワロタ」

「使い道なくて草しか生えんわ」


……ほんと、ガチャってこういうことがよくあるから困るわぁ……。さてと、


「待ってラビ君どこいくの?」

「いや、ちょっとPKげふんげふん……野暮用がちょっとね」

「違うよね!? 絶対よからぬこと考えてるよね!?」

「いやいや何のことかな? ちょっと雑草が生えてるから草刈した後廃品回収するだけだから。ということでちょっとこのリード放してベルさん」

「絶対そのままの意味じゃないよねそれ!? 駄目だよ! いかせないから!」

「所詮この世は弱肉強食なんだって! あっ?! このリードこっちからはずせねぇの!? 逃走防止だと!? なんだその仕様!?」

「いい仕様だね!」

「お願いベルさんベル様ベル閣下! 放してください!」

「私がいつもラビ君のいうこと聞くと思ったら間違いだよ! 駄目なものはだめなの! 人様のものをとっちゃいけません!」

「俺は子供ですか!?」

「現在進行形で駄々っ子みたいになってます!」


それもそうか。

結局ベルは鎌を当てたプレイヤーたちが立ち去るまで、リードを放してくれなかった。

運が良かったな名も知らぬプレイヤーよ。月夜ばかりと思うなよ?


その後、ロビーで首輪とリードをつけながら言い争っていた(?)カップルプレイヤーがいたという噂が流れた。変なリア充もいたもんだな。

アオイです。

ゴールデンウィークですね。皆さんは何かご予定はありますでしょうか?

私ですか? 私はもちろん……何もないです。(白目)

なんですか? 友達と遊ぶ? 外出する? ずっと家でゴロゴロの予定ですが何か?

一緒に遊ぼうという友人もいないですよはっはっは。

家でゴロゴロして何が悪いんです? むしろ無駄なお金を使わなくていいでしょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ