第8話
8月下旬、ALOに新設された海エリアの砂浜にはたくさんのプレイヤーたちが集まっていた。
目的は今日行われるイベント。
イベント内容はモンスターを狩ったり、アイドルがライブをやったり、まぁお祭りだな。
そして砂浜に作られたライブステージ前に、それぞれに「LOVE ALICE」とかかれた法被、鉢巻き、うちわを身に着けた集団が押し寄せていた。
彼らの目的はもちろん、イベントでライブを行うアイドルだ。
ライブの始まりを今か、今かと待ちながら、その集団は熱気を徐々に上げていた。
そして……
『みんなー!今日は来てくれてありがとー!』
そんな音声が聞こえ、集団はわぁっと声を上げる。
その歓声に合わせるように、ステージにど派手な演出が行われ、その演出とともにステージ中央に穴が開き、そこから大人気アイドル、アリスが登場する。
そして集団の歓声は最高潮に達する。
「今日は楽しんでいってねー!」
「「「「「おおぉおおおおおおおお!」」」」」
そうして、アリスのライブが始まる……。
「……すごい人気だね」
「さすがですね……」
「すごーい」
ベルたち三人はその様子を少し離れた場所から眺めていた。もちろん俺も一緒だ。
そして俺はというと……
「………っ……っっ!!」
「ラ、ラビ君大丈夫?さっきから様子がおかしいけど」
「だ、大丈夫……大丈夫ふぅっ!」
「大丈夫ですかお兄さん?」
「うさぎさん大丈夫ー?」
「だ、大丈夫……大丈夫だからちょっと話しかけないでくれ……」
様子がおかしいことに心配しながら尋ねてくるベルたちを安心させようとしながら……
「(やばい……はらが……腹がよじれるぅっ!)」
爆笑をこらえていた。
だってそうじゃん?いつもはあんなこと絶対言わないのにこういうところ見るとさ。ギャップがやばいよね?ちなみにいつもはこの通り笑ってしまうからテレビで出てくるときは番組を変えてみないようにしている。今回もそうなることを予期してみないようにしようとしてたんだが……ベルたち……特にヒナが祭りに行きたいと言い出しましてな?俺も海のモンスター狩りたかったし、こうやってきたわけですよ。
結果はこの通りだけども。
「あぁ、きっつ……」
「いったいどうしたの?ラビ君」
「あぁうん、ギャップ燃え(炎上的な意味で)というかなんというか……まぁもう大丈夫だから」
「そう?」
山場を乗り越えた俺は、ステージでライブを行っているミュウ……いや、アリスを見る。
今は使用しているキャラクターもかえ、完全にライブ用の服を着ている。運営がやる気を出したのか、一曲ごとに服装を水着と同じ要領で変える演出付きだ。ヒナもあんな風に着替えたい、と目をキラキラさせながら見ている。まぁ……ヒナはモチーフが魔法少女だからな。その気持ちはわからないでもない。
そんなことを思いながら、俺はライブを遠目で見ていた。あ、ちなみにミュウとアリスの関連だがベルには知らせてない。俺が勝手に言っていいことじゃないからな。……いかん、また発作が。
ーーーベルーーー
ラビ君がなぜか悶えています。
その理由はわからないけど原因はわかる。あのアイドルのライブだろう。いま大人気の子で、アリスという名前だったはずだ。今回のイベントの中心はあの子と言っていいのだろう。
「私と同い年くらいのはずなのにすごい」
サイカがそんなことを言っている。たしか中学3年生だったかな?たしかにその年であんなに人気があるのはすごいと思う。たぶんラビ君もあれを見て興奮?しているのかな?……なんだろう?この事実だけで彼女が少し嫌いになってきた。
もやもやとしてきたのでラビ君に質問してみよう。ちょうど悶えるのが収まったみたいだし。
「ラビ君」
「ん?どしたの?」
「ラビ君もあの人見たいな子が好きなの?」
「それはない」
「えっ?」
「え?」
尋ねたところ、予想外の返答が来た。え?好きじゃないの?じゃあなんで悶えてたの?
「何でですか?」
サイカが直球で尋ねる。
「いや、なんでかって言われると……守備範囲外なんで」
「そうなの?」
「そうです」
「じゃあなんで悶えてたの?」
「あー……ごくごく個人的な事情によって発生する笑いをこらえてたんだ」
「そうなの?」
「イエスアイドゥー」
「……ごまかしてない?」
「ゲーム賭けてもいいね」
「そっか……」
彼がゲームをかけるというならそれは本当なのだろう。そっか……好きじゃないのか……。
「ねー!早く行こうよー!」
「あ、うんわかった。ちょっと待ってヒナー」
いつの間にか先にいっていたヒナに声を掛けられた。どうやらアイドルを眺めるのに飽きたのか、早いところモンスター狩りに行きたいようだ。……こういうところラビ君に似てきた気がする。
「いこ、ラビ君」
「アイアイサー」
「……そこはマムじゃないの?」
「あ、これも変えなきゃいけなかったのか……イエスマム」
「ふふっ、それじゃ行こうか一等兵君」
「まさかの底辺」
そんな話をしながら、私はラビ君の手を引いてヒナの方へと駆けて行った。
アオイです。
ラビの様子でしたが……あれです。
身内が外では猫被ってるところみたら、笑うでしょう?そんなものです。
なお本気で笑いをこらえなければあとで地獄を見る模様。
イヤーでもあの二面性は笑うわ……姉には漫才の才能があるかもしれませんね。
生き遅れたらその方向に進むかも(ピチューン)




