第5話
「……重い……だるい」
俺は家のマンションの近くにあるスーパーで、三兎に頼まれたものを買い込み、徒歩で家までの帰路を進んでいた。両手にはスーパーの袋パンパンに買った商品が入っている。体感で片方で30キロはあるね。
さて、どうして俺がこんな重労働を強いられているかというと、まぁさっき言った通り妹に頼まれたからである。
本来ならこんな重労働はせず、夏休み中家でだらだらとゲーム三昧を送るはずだったのに、三兎が来てからすべてが狂った。
運動不足を感じていた日々の生活は、毎回買い物に行かされ掃除洗濯も手伝わされることによって解消され、1日2食カップ麺だった食生活は、妹の手料理により1日3食50品目と健康に気を使われたものに変わり、完全放置だった夏休みの宿題『夏休みの友』(毎回思うのだがこれ友じゃなくて敵に改名したほうがいいと思う)は妹に勉強を教える合間に解き、夏休み残り20日の時点で終了した。
……あれ?これめっちゃよくなってね?狂ったというより、改善されてね?もともとが狂ってたのか?……いやそんなはずはない俺の夏休み計画は完ぺきだったはずだ……廃人として。
にしても、ここまで妹に強く出れない兄が今までいただろうか?……案外いる気がする。
いや、実際は三兎が俺の扱い方を心得ているのが一番の要因だろう。この買いものなんかがいい例だ。
最初はめんどいと俺も言っていたよ?でも、妹の魔法の一言ですぐに行動に移った。
え?どんな一言かって?
……「一緒に月見大福買っていいから」です。
子供かってね。だが悲しいかな、月見大福の魅力には勝てなかったよ。
そんなことを考えていたら、マンションにつき、エレベーターに乗り自分の部屋がある階につく。
さて、家に着いたら汗かいたしシャワー浴びて早速食べよう。
「ただいまー……ん?」
家に入り、玄関で靴を脱ごうとしたとき、見慣れない靴があることに気付く。
だれか来てんのか?
そんなことを考えながら、奥に行くと、リビングの方から何やら話し声が聞こえてきた。
「三兎!あなたまだ中学生でしょ!こんなことまだ早いの!」
「いや……だから……」
どうやら三兎の知り合いが来ているらしい、なにやら怒ったような雰囲気で、三兎が珍しく困っているようだ。
「ただいま」
「あ、おかえり」
「……っ!」
おれは構わずリビングの扉を開けた。
そこには三兎と眼鏡をかけたまじめそうな女性がいた。
その女性は俺を見ると、ソファから立ち上がり、俺の方へ迫ってきた。なんだなんだ?
「あなた!自分が何してるかわかってるの!?」
「は?」
いきなり怒った口調で訳の分からないことを言ってきた。そして彼女は続ける。
「まだ成人していない男女が二人っきり、しかも片方はまだ中学生!そんなこと許されるわけないでしょ!」
「はぁ?」
「あぁ……もぅ……」
その女性の言葉に三兎が頭を抱えた。いや、俺も頭抱えたいんですけど、誰こいつ?
とりあえずこのままわめかれても迷惑なんで、抑えてもらおう。
「あの、隣の人の迷惑になるので少し落ち着いて……」
「落ち着いてですって!?あなた!よくそんなことがいえるわね!」
「いやここの家主なんで当たり前のことを言っただけなんですが……」
「と、とにかく!さっき言ったようにあなたたちみたいな若い二人が同じ家で過ごすなんておかしいわ!危ないわ!」
「いや、別に大丈夫だと思いますよ?」
一瞬どもった彼女の言葉に、俺は極めて冷静に返す。
「なんですって!?」
「いや、俺と三兎が二人っきりで暮らしてても全く問題はないと……」
「よく言えたもんね!じゃああなた!いったい三兎とどんな関係なわけよ!」
「兄ですけど」
「えっ?」
「え?」
兄だと伝えたら、彼女はいきなり黙り、そしてギギギという音が聞こえそうな動きで、三兎の方を向く。
そして三兎は、やれやれといったように首を振り、彼女にいう。
「だから大丈夫だって言ったじゃん、天音さん。彼、私のお兄ちゃんなんだから」
彼女……天音さんと呼ばれた人は、どうやら盛大な勘違いをしていたようだ。
そして、俺の方をみて、こういう。
「え、えええええ!?似てない!」
「うるせぇよ」
こっちだって気にしてんのに……。
確かに俺と三兎を比較したら、三兎が俺の分の魅力値も持って行ったのではないかと思うほど美人で、俺の方はサバを読んで一般より少し上の外見。似てないとよく言われたよははは……。
「ーー申し訳ありませんでした、私、アリス……三兎さんのマネージャーをしております。望月 天音と申します」
そういって天音さんは頭を下げてくる。
「いえ、別に気にしないでください。似てないってよく言われるんで」
「ですよね!いやー今聞いても信じられないですよ!あなたたちほんとに兄妹?」
「初対面の癖に失礼だなアンタ」
家から追い出してやろうか。思わず敬語消えたぞ。
まぁこのまま話していても仕方ないので、話を進めてもらうことにする。
「そんで?三兎のマネージャーさんがなんでうちに来るんだ?」
「あぁ、それはですね。三兎に会いに家まで行ったはいいのですが、肝心の三兎はおらず、親御さんからここに男と二人っきりで暮らしているということを言われまして」
なるほど、この騒動の原因は親……特に母さんの方だな、あの人、人をからかうの好きだし。
「まぁ誤解は解けたからそこはいいや……それで私を訪ねた理由は?」
「え、あ、あぁそうね。三兎を訪ねた理由は、ALOでの仕事の話よ」
「……仕事の話なら俺出てようか」
「あ、お兄ちゃんも聞いてていいよ」
「まぁ、身内の方が聞いても何の問題はないですし、いいですよ」
「さいで……」
俺は椅子に座り直し、話を聞く体制をとる。
「さて、それじゃ三兎、次のALOのアップデート情報ってしってる?」
「えーっと……お兄ちゃんなんだっけ?」
「……たしか新エリアの追加だったか。海が出てくるはずだ」
「その通りです」
「さすが、お兄ちゃんいらないところで記憶力いいね」
「うっせ」
「それで?」
三兎は天音さんに再び聞き直す。
そして天音さんは、まじめな顔をしてこう言った。
「それで、あなたの仕事だけど海エリアに作られるステージでライブよ」
……それ人集まるのかね?俺ならそのまま海のエリアに直行してモンスター狩りますよ?
アオイです。
息抜きに新しく不定期の連載を始めました。
……はい、「また」です。前作は軽い気持ちではじめたがネタがなくなるという最悪なパターンになってしまいましたが今回は大丈夫のはずです。
だってファンタジーですよファンタジー、もしネタが浮かばなくてもうちに置いてある本棚4つ分のラノベに物を言わせますよ!
え? 盗作? ……いやいやまさかまさかそんなそんなバンナソカナ。
リスペクトです! あくまでもリスペクトでぇっす!(と容疑者は供述している模様)
と、いうわけで……「神が見捨てたこの世界で」よろしければ読んでみてください。




