第2話
「……と、あったあったこれか……どれどれ」
俺はALOにログインし、いつものように噴水広場近くの時計塔でベルたち3人を待ちながらある物を検索していた。
そして見つけたネットの記事には、こんなことが書いてある。
『大人気アイドル、アリス 今度はオンラインゲームでアイドル活動!』
内容は、アイドルのアリス……うちの妹の三兎がALOでアイドル活動を行うというものだ。ネットでのアイドル活動ってのは……まぁ、そのまんまの意味か。ゲーム上で歌ったりするやつ。ほかのオンラインゲームでもたまに見るよな?
活動開始は8月下旬……三兎のアイドル活動上の夏休みが終了してからのようだ。
「いまだにあいつが大人気アイドルとは思えんのだがなぁ」
その場その場の切り替えが上手なのかね?まぁあいつ猫被るの得意だったしな。
「ーーさーん!」
「お?」
そんなことを考えていたら、何か声が聞こえた。
声の聞こえたほうを見ると同時、もはやなれたような衝撃が俺の鳩尾を襲った。
「ぐふっ」
「うさぎさんこんにちわ!」
「こ……こんちわ」
もはやおなじみの登場、ヒナだ。……せめてもうちょっと下の方に突っ込んでくれると助かるんですがねぇ。いやそれじゃ腹パンになるか。無言の腹ダイブ……誰得だよ。てか無言でもないか。
「お兄さんこんにちわ……大丈夫ですか?」
「あ、あぁサイカ……こんにちわ、大丈夫だ」
どうでもいいことを考えていたらサイカが来て、挨拶をされた。……あれ?なんかサイカの様子がおかしいような?
どこか焦ったようなサイカが、俺にこういう。
「それじゃお兄さん、ひとまず忠告しておきます」
「ん?忠告?何を?」
「言いたいことは一つです。今日の姉さんは取扱注意です」
「えっ、それってどういうーー」
「ーーあ、ラビ君!」
どういうことか聞こうとしたとき、噂をすればベルが遅れてやってきた。
ではお気をつけて、とサイカはいい、俺から一歩離れる。なぜか先ほどまで抱き着いていたヒナも離れた。
なぜかわからなかったが、近づいてきたベルの顔を見てすぐにわかった。子供なりに危険を感じたのだろう。
遅れてやってきたベルは、笑顔だったのだが……あれだ、完全に目が笑っていない笑顔だ。ALOを始める前に見た三兎の笑顔に潜んでいたのが般若なら、こちらは阿修羅とでもいえばいいだろうか。
そんな威圧感が、その笑顔にはあった。
「ごめん、まった?ラビ君」
「い、いや、そんなにまってない」
そんな小説くらいでしか聞かない言葉とともに威圧感がこちらへ向けられる。
新手のOタンド攻撃か!?……言ってる場合ちゃう。
ほんとになんかした?覚えがないぞ?
スOンド攻撃と間違えるほどの圧力を放ちながら、ベルは続ける……ひょっとしたらスタンOを出す技能が追加されたのかもしれん。
「ねえラビ君、電話の時の話なんだけど」
「お、おう?」
「もしかしてだけど、私の勘違いかもしれないけど……女のひとがいなかった?」
「あぁ、いたぞ?」
えっ、ちょっとまってサイカさん、なんでそこで上を向いてもうだめだみたいな空気を出すんですかね?
困惑していたらベルがなにやらぶつぶつといっていた。
「だから夏休み……連絡……かった?新しい……きちゃった?うそでしょ?うそうそうそ……」
うん、前半全く聞こえなかったけど……後半やばい。なんでか知らないけどやばい。
「……ラビ君」
「はいっ!」
「その人って、だぁれ?」
こ、こえぇえ!?
お、落ち着け俺!ここで選択肢を間違えたらおそらくただでは済まないぞ!さながら浮気男の心境……ていっても彼女もいないし浮気もくそもないんだがなHAHAHA!……と、とりあえず正直に答えよう。
「彼女は妹であります!」
ここで敬礼を追加してしまった俺は悪くないと思う。俺は一等兵、相手は軍曹あたりだと思え、逆らうことは許されない!
それを聞いたベルは、笑顔でこういう。
「へー妹?ほんとに?」
「サー!リアリィ!サー!……あ、マムか。イエスマム!」
「……へー」
い、いかん!冗談っぽくしてみても全く笑ってくれない!そんで信じてくれてない!なんで!?ど、どうする?どうするよおれ!
「……あの、すいません」
「ん?」
敬礼したまま固まっていたら、後ろから声を掛けられた。
声を掛けられた方向を見てみると、そこには初期装備の村娘風の服装をした茶髪で短めのツインテールをした少女が立っていた。
「すまん、今取り込み中ーー」
「ーー全身真っ黒のうさ耳シルクハット……PlayRabbitであってますよね?あなた」
「あ、あぁそうだけど……ということはお前」
少女は俺がALOにログインする前に妹に伝えたキャラクターの容姿を言い、俺のプレイヤーネームを言う。……つまり、
「そ、私だよお兄ちゃん……それで何してるの?敬礼なんかして」
「ナイスタイミーング!」
俺は思わず三兎にサムズアップをした。
そしてすかさずベルに突然のサムズアップで困惑している三兎を紹介する。
「べ、ベルさん、こいつがちょうど話してた妹です。ほら紹介頼む、あ、リアルネームはいうなよ?」
「へ?う、うんわかった。はじめまして、ええと、ミュウです。兄がいつもお世話になってます?」
三兎……ミュウはそのままぺこりとお辞儀をして挨拶をする。
「え、あ、ほんとに?あっ!べ、ベルです。そんな、お世話しているというかお世話されているというか」
ベルは困惑しながらも、ミュウに挨拶を返す。
とりあえずこれで信じてくれたよな?……ひと段落。
こんど三兎には何かお返しでも……あ、金がないって今日指摘されたばっかだったな。
心意気だけ受け取ってもらおう。
え?ならゲームのし過ぎはやめろ?……はっ、無理無理。
アオイです。
この前姉が嘆いていました。
嘆いていた内容は「せっかくのゴールド免許がー」どうやら運転中に違反を食らったようです。なにやら高速道路を走行中に、後部座席の人たちがシートベルトをしていなかったためだそうで……。
法改正によって高速道路では後部座席もシートベルト着用とのこと……皆さんも高速道路を走行する場合はお気を付けください。
そして違反喰らった姉よ……ざま(メッセージはここで途切れている)




