第1話
……突然だがここで俺の家庭環境について説明しておこう。
家族構成は、父親、母親、俺、妹の4人。
父親はメジャーとマイナーの間くらいの会社に勤めていて、母親は主婦……金銭的にはまぁ一般的な家庭より少し上くらいだろう。
そしてここからが一般家庭と少し違う、俺はそのまま高校生だが、妹である三兎は……
「ちょっとお兄ちゃん!聞いてるの!」
「あっ聞いてますはい」
現実逃避をしていたら三兎に現実に引き戻されてしまった。
……はい、お察しのとおり説教の真っ最中です。
あれから体感で1時間はたったのに妹の怒りは収まりそうにない。これはお兄ちゃん思いだということなのか、それとも仕事のストレスが溜まっているのための八つ当たりなのか……後者だと最悪だな。
……いや、今はそんなことよりこの状況を打破する方が先決だ。
よし、状況を整理しよう。家でだらだら過ごしていたら妹が来た、妹はお怒りのご様子、理由は俺の不摂生な生活にある模様、そしてお説教なう。……あれこれ全面的に俺が悪い?どうしようもなくね?俺から状況変化させようとしたらむしろ悪化しそうじゃね?
……また詰んだな。
「ーーまったく、お兄ちゃんはいつもそうやって目を離すと……」
おーい三兎さんや、その話さっき聞きましたぜ。ループしてますぜ。
……だれかぁ、この負のループに終止符を打ってくれぇ!
そんな願いをしたとき、
prrrrr
と、家に置いてある電話が鳴った。
「だから……ん?電話?……はいもしもし?」
三兎は説教をひとまず切り上げ電話を受ける。誰か知らないけどグッジョォブッ!
しばらく応対をした後、俺の方に向け手招きをする。
俺がやっと正座から解放されたと安心し、立ち上がり三兎の方へ行く。
「どした?」
「誰だか知らないけどお兄ちゃんに用があるみたいだよ」
「ふむ……」
まぁとりあえず出てみよう。
三兎から受話器を受け取り、応対をする。
「もしもし?」
「ゆ、ゆゆゆゆ遊兎くん!?」
「うおっ!?……比嘉さげふんげふん、美鈴さん?どしたの?」
受話器から突如聞こえてきた大きな声に顔をしかめながら、自身のことを遊兎とよぶひとは少ないのですぐ比嘉咲さんだと理解し、用件を聞こうとする。……夏休みになるまでさんざん名前呼びをしてきたが、いまだに名前で呼ぶのに慣れない。
とりあえず比嘉咲さんのおかげでこの窮地を脱出できたようだ、感謝してもし足りない。
そして彼女から要件を聞き出す。
「あっ、ええっと遊兎君いまひま?ひまならALO一緒にできないかなって……」
「え、あぁうん、ちょっとまってな」
ALOの誘いだったので受話器を離し、三兎に尋ねる。
「いまからALOの誘い入ったんで行っていいか?」
「え?うーん、まぁいいか、しかたないからこの話はひとまず終了ね」
そういって三兎はどこかへ歩いていく。再び受話器を耳に近づけ、比嘉咲さんに伝える。
「うん、大丈夫みたい。それじゃ噴水広場でいいかな?」
「え、あ、うんわかった」
「それじゃ」
「あ、まって遊兎君そこに誰かいるーー」
電話を切った。……あれ?いまなんか言いかけてなかったか?まぁあっちで聞けばいいか。
いやぁそれにしてもほんと比嘉咲さんグッジョブだわ。
それじゃさっそくログインするとしますか……。
「あ、お兄ちゃん待って」
自分の部屋に行ってALOを始めようと思い、移動しようとしたとき三兎から声を掛けられた。
んだよ……まだなにか説教が……
「私もするから」
そういいながら、三兎は手にVRIを持っていた。
まぁなんで三兎がやろうとするのかとかはあるがそこはまぁどうでもいい。一番重要なことがある。
「お前よく手に入ったな」
そう、現在VRIは増販されたといっても、やはりなかなか手に入れにくいものだ。
それを聞くと三兎は何でもないように言った。
「あぁ、なんか今度はALOでお仕事をお願いされちゃって……」
「あー……人気のオンラインゲームでたまに見るやつかー」
仕事ならべつに手に入ってもおかしくはないな。
……え?さっきから言ってる仕事ってなんだって?
……あぁそういえばそこに触れる前に現実逃避がストップされてたな。
『次のニュースです』
「あ、私が出てる……もうこの話題ばっかり、別にいいじゃない。仕事はしてるんだから」
いつの間にかついていたテレビのニュース番組に、三兎が反応する。
そのニュースの内容はこうだ。
『大人気アイドル、アリスさんがしばらく夏休みに入るという情報が入りました』
「私だってまだ中学生なんだから遊びたいし、何より休みたいのに」
……そう、うちの妹である稲葉 三兎は、いま大人気のアイドル、アリスとして活動中なのである。
これのせいでうちの親も妹には頭が上がらないでいる。
個人的にはいつも妹のことを見ていたので、偶像ってかいてアイドルって読むってほんとだな、と何度思ったことか……。
「今何か失礼なこと考えなかった?」
「イエベツニ」
……ほんと勘鋭いわぁ。
アオイです。
……はい、実は妹さんはアイドルでした。
首刈兎が始まってすぐ、遊兎は3LDKのマンションに住んでいるという設定をいいました。
これが理由の一つです。
そして理由はもう一つあって、遊兎が不摂生な生活を送ったときは監視員として住み込むために広くしたという理由もあります。
まぁ私のにわか知識でパッと浮かんだ間取りがこれだったという理由もあるんですがね…(汗)




