第7話
「はい、焼けましたよー」
「おーベルちゃんありがとー。美少女の手料理をもらえるなんてうれしいな」
「あはは…焼いただけですけど、ありがとうございます」
俺が食料調達兼マッピングに出かけている間に、拠点で遊んでいたベルたちとばったり出くわしたルシ。現在は俺がゲットしてきたバーベキューセットを使用してベルがつくった焼いた肉野菜を食べている最中である。
「おいしいねお姉ちゃん!」
「そうだね。でも野菜も食べないとだめだよ」
「はーい」
サイカとヒナもそれに混ざって仲良くバーベキューを楽しんでいる。
一方で俺はというと…
「いやーごめんねプーちゃん。私の分のテント立ててもらっちゃって…」
「その割には感謝の思いが伝わらないんだが…あとプーちゃんやめろ」
ニコニコと笑いながら話しかけてきたルシにそう返す。
そう、現在俺はルシのテントを立てている真っ最中である。
あれから、せっかくだからとベルたちがルシと一緒にキャンプすることが決定させ、それじゃあテントを立てようという話になり、その次の瞬間、
『じゃあプーちゃんよろしく』
と、ルシが言ったのである。そしてそのままの流れで俺がやることになってしまった。なぜおれが…。
そんな不満を持ちつつ、テントを立てていると、
「プーちゃんプーちゃん」
「だからやめろっちゅうに…なんぞ?」
何やらルシが話しかけてきた。
とりあえず振り向いてみると、
「あーん」
皿に入れた肉を箸でつかみ、こちらに向けてきているルシの姿が目に入った。
「…なにしてんの?」
「なにって…あーん?」
「いやなんでやねん」
「いやぁ、プーちゃんも食べたそうにしてたから…ってことであーん」
「…サンキュ…あむ」
俺としてもバーベキューは食べたかったのでそのあーんを受け入れてやることにした。…うん、うまい。
「あぁっ!?」
うおっ!?なんだなんだ!?
声(叫び?)が聞こえたほうを見てみると、先ほどからバーベキューで肉を焼いていたベルが、俺とルシを口をパクパクさせながら見ていた。
「姉さん、どうしたの?」
「お姉ちゃんどーしたの?」
サイカとヒナも疑問に思って尋ねている。俺も尋ねたい。どしたのベルさん。
ーーーベルーーー
「え?…ならシアさんとアンさんはいないんですか」
「そうなのよ。二人とも今回はパスって言ってね。おかげで一人で歩き回る羽目になったよ」
私はラビ君がとってきてくれた肉や野菜を焼きながら、サイカとヒナと一緒にルシさんの話を聞いていた。
ルシさんによると、当初、シアさん、アンさんを含めた3人でイベント参加を考えていたのだが、イベント内容により二人が辞退、ルシさん自体はせっかくだからということで参加をすることにしたらしい。そしてアイテムを受け取り、一人でぶらぶら歩いていたところ私たちに遭遇した…とのことだ。
「いやーそれにしてもたすかったよ。いくら何でも一週間一人寂しく過ごすなんてごめんだったからね。優秀な護衛君もいるし」
ルシさんは笑顔でそう言って、一人テントを立てているラビ君を見る。
店を作るのを手伝ってもらったとか言ってたし、結構仲がいいみたいだけど…二人の関係ってどんななんだろ?
「あ、そうだ!」
そんなことを考えていると、突然ルシさんが何かを思いついたようで、焼いた肉や野菜をいれたお皿を持ったまま、ラビ君のところへ歩いて行った。どうしたんだろ?
そして彼女はラビ君の後ろへ回りラビ君に声をかける。…って、おっと肉がこげちゃう。
私が少しの間肉に気を取られ目を離し、再びルシさんの方を見ると、
なんとルシさんがラビ君にあーんをしているではないか。そしてラビ君もそれを受け入れている。
「あぁっ!?」
あまりの衝撃に、つい声を出してしまった。
だ、だってあーんだよ!あーん!仲のいいカップルがやるあーんですよ!?
それをルシさんがラビ君にやってるんだよ!?ずるい!私だってやりたいのに!お弁当食べてるときとかちょっとできるかなって期待してるのに!
「姉さん、どうしたの?」
「お姉ちゃんどーしたの?」
サイカとヒナがこちらを見てくる。思いのほか大きな声だったようで、ラビ君とルシさんもこちらを見ている。
ラビ君はキョトンとした顔で、そしてルシさんは…
「(ニコニコ)」
笑っていた。
え?なんですかその笑顔?私の反応が面白かったから?それともまさか優越感に浸っているんですか!?
「ご、ごめん…なんでもない」
「…そうなの?」
サイカにそう答え、肉を焼くのを再開する。
みんなはしばらく私を見ていたが、やがて納得したようで、食事をつづけた。
でも私は、しばらくルシさんについて考えることをやめることができなかった…。
ーーーラビーーー
「よし、フィー。今回ばかりはお前だけが頼りだ」
『キュー?』
あれからテントを立て終わり、食事が終わって夜。
俺は一人、フィーと対面していた。目的は交渉。この腐れうさぎに頼るのは気が引けるが、今頼れるのはこいつしかいない。
「お前を聖域の守護者に任命する。もしそれを侵食しようとしたらすぐさま攻撃しろ」
『キュ?』
フィーはいまいちわからないようで首をかしげる。
「いいか?お前がご主人様を守るんだ。これは俺の、果てはご主人様の精神を守ることにつながるんだ」
『キュ、キュー…』
まだわからないようだ。俺はそろそろカチンときて、大声でこういった。
「だからっ!俺が寝返りをうって女性陣の布団に入り込んでしまう大惨事を防げっつってんだよぉ!」
朝起きたら目の前に美少女がいたらびっくりするってレベルじゃねぇよ!心臓に悪いわ!
そしてこれは女性陣にも言えるだろう。よって、フィーを俺がねる布団の横に配置し女性陣の布団に近づかないようにしようとしたのだ。
自分で言うのもなんだが、俺寝相悪いからな。家のベッドで寝て起きたらベッドから落ちているとかざらだ。それで起きない俺もどうかとおもうが。
つまり、寝相が悪く睡眠が深くなかなか起きない俺が3人と一緒に寝るにはこれしか方法がないのだ。
「…ていうかルシが余計なことをしなければ…」
そう、俺はテントを立て終わった後、ルシにそのテントを俺が使い、ルシに3人と一緒に寝てもらおうとした。だがその時のルシの一言がこれだ。
『あ、ごめん。もう登録しちゃったんだ』
なんでだよ!
なんでテント立ててすらないのに登録してんだよ!テント立ててからしろよ!
そしてこのテントは一度登録するともう変えられない。よって俺がルシのテントを使うことは不可能になったのだ。せめてルシがPTにはいってから登録していればっ!
「…と、いうことでフィーには俺を縛りつけてでも抑えてもらわなければならない」
『キュー』
正直こいつに頼むのは屈辱だが仕方がない…って、ん?『縛る』?
「そうだっ!」
いいこと思いついた!最初からこうすればよかったじゃん!
俺はすぐさま、3人が待つテントへ向かった。
「あ、ラビ君。フィーとなに話してたの?」
テントの中にはすでにベルがいた。
俺はベルに、ウィンドウからあるアイテムを選択し、物質化する。
それを見せながら、俺は言った。
「ベルさん、俺を縛ってください」
「…え?」
ベルは俺が持っているロープを見て、しばし固まっていた…。
…あれ?またなんかしくじった予感。
アオイです。
もう少ししたら今年度の講義が終わります。
いやはや…早いものです。
実際過ごしているとそうでもないのに、あらためて認識すると時がたつのが早く感じる。どうしてなんでしょうね?
こういう時に限ってもっとOOしておけばよかったと思ったりします。
まぁたまにお前はしなさすぎと言われることもあるのですが…(汗)




