第6話
「…よし、ついた」
「わぁ…」「きれいですね」「すごーい」
上空から確認してたどり着いた場所、そこはちょっとした滝壺になっていた。すぐ横に何もない開けた場所がある。景色もいいし、いい場所見つけたな。
「さて、そんじゃひとまずここを拠点にして…テントはろうか」
「あ、うん」「わかりました」「はーい」
俺は野営道具の中からテントを取り出す。
「《アイテム鑑定》っと」
テントを鑑定し、概要を見てみる。
名称:野営テント
概要:組み立てると人ひとり分のスペースができるテント。
登録した者、またはパーティしか開けられない仕様になっている。
同一のテントと合成することが可能。
破壊不可能および耐久無限。
ふむ…なるほど。
「ベルさん、サイカさん」
「ん?なぁに?」「なんですか?」
「このテント合わせたら入れる人数増やせるみたいだけど、3人まとめておく?」
「え?あ…うんおねがい」「おねがいします」
サイカとベルに聞いたところそう返されたので、さっそく合成することにした。
えーと…テントをタップしたあともう一方のテントもタップして…
『野営テントを合成しますか?YES/NO』
お、でたでた。この合成には合成スキルはいらないみたいだな。YESっと。
「わっ!一緒になった!」
YESを選択するとテントが光だし、光が収まった後に一つの少し大きくなったテントがあった。
その様子にヒナが驚いている。
よし、この調子でもう一方もっと…よしできた。さて、それじゃ組み立てますかーー
『ーーキュー!』
「いったぁ!?」
さっそく組み立てようとしたところ、なぜかいきなりフィーにかまれた。
てめぇっ!なにしやがる!
『キュキュッ』
どうやら暇だったからからかってやったとでも言いたいようだ。…いい度胸だ。
「今晩のメニューはウサギの丸焼きだ覚悟しやがれー!」
『キュッ』
俺はその場でテントをじっと見ていたヒナをほおってフィーを追いかけだした。今日という今日はその羽むしってやる。
「はぁ…っ、はぁ…っ、おのれちょこまかと…」
『キュキュー』
「だ、大丈夫ラビ君?」
…結局俺はフィーを捕まえることは叶わず、息を切らせながらテントを置いていた場所に戻った。フィーはベルの腕の中に収まっている。
ヒナはテントを見ているのに飽きたのか、サイカと一緒に滝壺のあたりで遊んでいた。危ないぞ?
とりあえずテント組み立てるかぁ…。
「えーと…まずは骨組みからか」
…ていうか地味に1から組み立てようとしてるけどこういうのってゲームなんだから最初から完成してるものをぱっと出してくれりゃよくね?経験ない奴は説明書見ながら四苦八苦するぞ。…ていうか現在進行形で俺が四苦八苦してる。
「よろしくね?」『キュ』
まぁこの3人にやらせるわけにはいかないからな…がんばろう。
だが腐れウサギ、なにてめぇ「きりきり働けや」みたいな顔してやがる。この後の食糧調達横着してお前を食ってやろうか?
「あとは杭を打ってと…よっしできた!」
「ご苦労様」「お疲れ様です」「おつかれさまー」
しばらくの悪戦苦闘の後、テントを組み立て終わった。いや長かった。特に骨組みのパーツがどこがどこなのか途中で分からなくなったのが痛かった。
「…にしても」
「?どうしたの?」
俺がふとあることに疑問を抱いていると、ベルに尋ねられた。
「いや、3人分のテントにしてはなんか大きいような気がしてな?」
「そうなの?」
そうなのだ。ていうかそもそも3人分を合成した時はこんな大きさだったであろうか。組み立てるのに夢中で気が付かなかったが…。
「《アイテム鑑定》」
なんとなく嫌な予感がして、俺は再びアイテム鑑定を使用した。
すると、テントの名称にこうあった。
名称:野営テント(4人分)
…ワッツ?
ヨニンブン?サンニンブンジャナクテ?
俺はそこで、自分用のテントを置いてあった場所を見た。
…そこには何もない。
「…ヒナー」
「ん?なぁに?」
頭ではわかってはいるのだが、俺はヒナに尋ねることをやめられなかった。
「ここにあったテント、しらない?」
「んー?あっ!一つだけ置いてあったから一緒にしといたよ!」
…おっふ。
「はぁ…どうするか」
現在俺は現実逃避で一人、マッピング兼食糧調達に出ていた。おれ一人なら迷っても召喚があるからな。
…にしてもどうするかなぁ。一度合成したテントは分離できないみたいだし…。まぁどうするといっても選択肢は二つなんだがな。美少女3人と一緒のテントで川の字+一本でねるか。または、モンスターやPKに襲われるの覚悟で外で寝るか。
…迷う必要はない、後者だ。クラスメイトの美少女達と一緒に寝るとか精神的に眠れる気がしない…まぁそこはゲームだから電源落とすように眠れるんだが。
「…お?」
そんな考え事をしながら歩いていると、索敵に反応があった。
反応のあった場所に行くと、一羽の丸っこい鳥がいた。キウイだっけ?フルーツと同じ名前だった覚えはあるんだが…。
「《モンスター鑑定》」
こんなとき便利なのが鑑定スキル。うん、索敵とともにソロプレイには必須スキルだね。さてさて結果は…
名称:バーベQE
違った。QEだってよ。なんだQEって。まぁイベントモンスターなんだろうが…。
「《魔斬》」
『Q----E----!?』
鳴き声がQEだったか…。
まぁおれの攻撃を受けたそいつはそのまま消えていく。…やっぱり弱いな。ボスもいるって言ってたがそれ以外は倒しやすくしてんのかね?
『バーベQEを倒した。200の経験値を取得。バーベキューセットを取得。』
…なるほど、バーベキューとキウイを合わせたダジャレみたいなものね…運営の年齢を感じさせるわぁ。
…まぁでも便利なものをゲットできたな。やっぱりキャンプと言ったらバーベキューだしな。多分この手のイベントモンスターはほかにもいるんだろうから探してみよう。
『『ブルルゥ!』』
そうして見つけたモンスターがこちら、白に薄い緑の斑点を持つブルドックのようなまもの。斑点の形は丸だったり雫型だったりさまざまである。それが数匹。
「《首刈り》」
『『キャイン!?』』
俺は《首刈り》を使用し鎌を薙ぎ払い、即死させる。ただわんわん吠えてるだけの奴の首を狙うなんて簡単簡単…まぁ若干の罪悪感があったが。
『べジタ・ブルを倒した。20の経験値を取得。野菜セットを取得。』
…ひねりねぇな。まぁ予想はついてたけど…斑点の中にピーマンみたいな形もあったからな。
…そろそろ帰るか。
「あ、おかえりなさい」「おかえりなさい」「おかえりー」『キュ』
「プーちゃんおかえり」
「あぁ、ただいま」
テントを張ったところに戻ると、ベル、サイカ、ヒナ、フィー、そしてルシの計4人+1匹が迎えてくれた。
・・・・・・
「なんかふえとるっ!?」
「ん?どしたのプーちゃん?」
アオイです。
来週からテストです。
やべーよやべーよ、物理学とかドイツ語とかやべーよ(はっはっは、余裕ですよ余裕)
…はっ、本音と建前がっ!
さて、学生の皆さんももうすぐテストでしょう。
がんばってください。ダメな人は私と一緒に絶望を味わいましょう。




