第4話
気が付くと俺たちは、巨大な木々に囲まれている広場に立っていた。
周りにはイベント参加者であろうプレイヤーたち。彼らは突然の転送に動揺し、ざわついていた。
その中には「まさかデスゲームっ!?」などと馬鹿なことを言い出している者たちもいる。
「ラ、ラビ君…」
隣にいたベルも不安そうだ。
そしてそのざわつきの中で、スピーカー越しの声が聞こえた。
『あー、あー、ただいまマイクのテスト中』
その声を聴き、ざわつきが収まる。
そしてその声は続ける。
『えーアテンションプリーズアテンションプリーズ、こちらALOの運営の代表でーす』
その声の発生源をたどる。
そこには白衣を着た中年の男性がメガホン片手に空いている手を大きく振り上げながら立っていた。
そして彼は、そのままの勢いで言い放った。
『えー、ここにいる皆さん方のログアウトボタンが消えているでしょうがそれは仕様です』
なんですと?
その一言を受け、俺を含めた参加者のほとんどがウィンドウを確認した。
ウィンドウのシステムの欄にあるはずのログアウトのボタンは、確かになかった。
「どういうことだよ!?」
参加者の一人が大声で抗議した。
それを受け、運営はメガホンを通しこう答える。
『えー、ですからそれは仕様です。現在あなた方はログアウト不可能となっております』
「なんでそんなことすんだよ!?」
そう抗議された運営の男は、にやりと笑いながら、
『ふっふっふ、それはですね、私の崇高なる目的のためにーー』
「ーーいい加減にしなさい!」
『ぶべらぁっ!?』
答えようとしたところで同じく白衣を着た女性に蹴り飛ばされた。それはもう見事なドロップキックだった。
「「「・・・・・・」」」
それを見た俺を含めた一同は、また沈黙した。
その女性はそのまま男が持っていたメガホンを拾い、全員に伝わるように言った。
『あー、あー…えー皆様、うちの代表もといバカが失礼しました』
そこで一度頭をさげ、続ける。
『えー、まず最初に、これは小説でよくあるデスゲームなどでは決してないのでご安心ください』
その言葉を聞き、周囲の数人がほっと息を吐いた。どうやら不安に駆られていたものは少なからずいたようだ。…もちろん俺も一安心、ほっ。
『ログアウトボタンが消えているのはこのイベント用フィールドの仕様となっています。イベント内容はいまからアナウンスしますのでしばしの間お待ちください。ではひとまず私はこれで…ほらきりきり歩きなさい!』
「げふっ…こちとらけが人だよ?もう少し丁重に扱ってくれても…」
「ALOにけがはありません。ほらはやく」
彼女はそういった後、その場に倒れたままだった代表らしき中年男性を蹴り飛ばしながらその場を去って行った。…なんだったんだ。
『あー、あー…それではこれより今回のイベントの概要を説明させてもらいます。説明は私、天才科学者兼ALO開発委員会代表である若ーーあ、すいません説明に移りますからドロップキックの構えはやめて』
「・・・」
あのあと、すぐに先ほどの中年と女性が複数人の白衣を着た人たちとともに帰ってきて、すぐにイベント開始の準備がされた。
何もなかった広場にセッティングされたのは組み立て式のテント、そのテントの下には同じく組み立て式の机と椅子。その椅子に白衣の運営委員会であろう奴らが座っている。
そして現在、代表さんは広場の中心に設置された金属の台ーーまぁ学生らしく言わせてもらおうと朝礼台ーーの上に立ち、イベントの説明を行おうとしていた。
代表はメガホン片手に説明を始める。
『えー、今回のイベント内容。それは…』
それは?
『・・・・・・』
「溜めないでください」
『あ、はい』
代表は女性に注意され、改めて話しだす。
『えー、今回のイベント内容、それはキャンプです。皆さんにはこのフィールドで1週間を過ごしてもらいます。あぁご心配なく、夜営道具などはこちらからプレゼントさせてもらいます』
その言葉に一同は騒然とする。
ふむ、キャンプか…そんなのでどうやって一位とかきめるんだろうか…。
『ちなみに今回のイベントに順位はありません。ただ純粋にキャンプを楽しんでもらえればと思っております』
順位無いんかい!
なにこれ、ただの親睦イベント?
『ですがフィールドにはレアなアイテムがあったり、ユニークモンスターがいたりしますので、賞金目当てのかたはそちらをねらってもらえばいいかと』
あぁ、報酬みたいなものはあるのか。まぁこれは機会があったら狙えばいいか。
『そして最後に』
ん?まだあんのか?
『本イベントでのフィールドの一週間は現実世界での2時間ほどとなっております。ちなみにイベントの終了条件は一週間が経過するか、または死ぬかとなっております。ちなみに、どうやって一週間を二時間で済ませるのかという考えは「科学の力ってスゲー」という認識でお願いします』
そういいおわったあと、ウィンドウにとある表示がされた。
『イベント:親睦キャンプ を開始しますか? YES/NO (NOを選んだ場合噴水広場へ転送されます。)』
俺は隣にいるベルたちを見た。
「よし、がんばろうねラビ君!」「がんばりましょう」「がんばろー!」
…どうやらやる気のようだ。
俺を含めた4人はそのままウィンドウのYESを押した。
そして周りにいたプレイヤーたちは、YESを押したものはそのまま、NOを押したものは光に包まれて消えていった。どうやら噴水広場に転送されたようだ。
それを確認した代表さんは再び話し出す。
『それではこれより、イベント:親睦キャンプを開始します。夜営道具をテントにいる職員から受け取った人からフィールドへ出てください』
…え?アイテム、メールみたいに送ってくるんじゃないの?
それを理解した瞬間、俺は《ハイジャンプ》と《エアジャンプ》、そして軽業技能を駆使し、テントの前に行った。
「4人分の夜営道具お願いします」
「わ、わかりました」
職員はあっけにとられながらも、4人分の夜営道具を渡してくれた。
そして俺はそれを受け取り、ベルたちのもとへ帰る。
「ただいま」
「お、おかえり…行動早かったね」
「そりゃあ、あれに巻き込まれたくないからな」
「あれ?…あぁ」
俺はベルにちょうど今出てきたテントを指さす。
そこには大量のイベント参加者たちが夜営道具を受け取ろうと、群がっていた。
職員の人たちもあわただしく動いている。
「あ、あれはすごいですね…」「人がごみのようだ?」
サイカとヒナも感心ーーいや、ヒナは違うなーーしているようだ。
やっぱり先に行っておいてよかった。あれに巻き込まれるのはごめんだ。
「さて、それじゃいこうか」
「あ、うん」「はい」「わかった!」
俺は3人を連れ、イベントフィールドへと繰り出した。
アオイです。
最近、期末テスト目前の課題が鬼畜に思えてきます。
このまえなんか原稿用紙五枚分で読書感想文書いてこいと言われました
しかも期限が今週中と言う短さ。
まぁ多分大丈夫でしょう(全く読んでない辞書並の分厚い本を見ながら)




