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首刈兎は今日も行く!~三姉妹とのペットライフ~  作者: 真田 蒼生
第1章 「首刈兎は主人と出会う」
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第12話

「待てやごらぁ!」

『ピキー!』


ブン!

スカッ


「避けんな!ーー《スラッシュ》!」

『ピキー!?』


ブン!

スカッ!


「いい加減くらえやぁ!--《ハイジャンプ》!」


ドン!

ガキィン!


『ピキィ…』

「っしゃこらー!」


20、いや30以上ものフルスイングの甲斐あって、ようやく《ハイジャンプ》での追い抜きざまに一撃を当てることができた。

メタスラは一見堅そうに見えるが、前に言った通り、HPは紙だ。つまり…


『メタスラを倒した。300000の経験値を取得。PTで分配し75000の経験値を取得。LVが上がりました。』


一撃当てれれば十分倒せるということだ。やったぜ。

いやぁ、にしても一体倒すだけで30万の経験値とは、うますぎる。LVが30超えたあたりからレベルアップに必要な経験値が一気に増えたからなぁ…。その分遭遇率が少ないんだけど…ってか俺のLUKでよく会えたな。下手すりゃ蟷螂が鎌を落としてくれる確率より低いぞ。

さて、これで目的は達したし…帰る…か…?


「…ここ、どこだ?」


どれだけ追い掛け回したのかは覚えてないが、多分これは相当森の奥に来たのだろう…MAPを見てみると3層と書いてあった。今いける一番奥まで来たわけだな。…うん、これは、


「…やっちまったな」


どうしよう?


ーーーベルーーー


「へへへ、いやぁ、こんなかわいい子たちをやれるなんて、今日はついてんなぁ」

「くれぐれも速攻でやったりすんじゃねぇぞ?」

「わかってらぁ」


いきなり出てきた怪しい二人組は各々の武器を構えてこちらによってきました。


「ど、どうしよう姉さん」

「どうしようって…やっぱり逃げたほうが…」

「お、お姉ちゃん…」


サイカが私に相談し、ヒナは怯えて私の後ろに隠れました。

それをみて、二人組は余計に気味悪い笑みを浮かべ、近づいてきました。

一か八か、走って逃げようかと思ったとき、突然こんな声が響きました。


「そこまでだっ!」

「「な、なんだ!?」」


声の聞こえたほうを見てみると、そこには…


「彼女たちに手を出すことは、この私、零時間(ゼロタイム)のゼロが許さん!」


氷川君…じゃなかったゼロ君が立っていました。なんでここに?

そう思ったとき、二人組がうめきながら言いました。


「ウソだろっ!?トッププレイヤーでベータテスターのやつがなんでこんなところに!?」

「や、やばいぞ、どうする?」

「逃げるに決まってんだろうがバカ!」


そう叫んだあと、二人組は走って、森の奥へと消えていきました。…助かったのかな?なんかわざとらしいような気がしたけど…。

そしてゼロ君はすぐに、私たちに話しかけてきました。


「大丈夫かい?比嘉咲さん?」

「あ、うん、ありがとうゼロ君、あと名前で呼ばないでくれるかな?」


助けてもらったのにひどいとは思うが、これは前にあった時も思ったことだ。ラビ君に教えてもらったけどここでリアルの名前などを呼ぶのはマナー違反とのこと。ゼロ君もすぐにそれを察したのか、


「あ、あぁすまない。マナー違反だったね。ええと…プレイヤーネームは…」

「ベルだよ」

「わかった、ベルさん」


そう謝罪してきたので私も素直にプレイヤーネームを教えた。そうしてゼロ君は言ってくる。


「あんなことがあったすぐだ、不安だろう?よければ街まで送るよ?」

「あ、ありがとう。でもごめんね?ここで人を待ってなくちゃいけないの」


確かに一旦街に帰った方がいいかもしれないが、ラビ君はここに帰ってくるだろう。できるならば私は待っていたい。それに、一旦街に戻って合流してまた森に帰ってくるなど面倒すぎる。

サイカとヒナの方を見てみたが、二人もラビ君を待つことに異存はないようで、私を見て頷いてくる。


「いや、遠慮しないでいい。その待ち人には町に戻っておくと知らせればいいだろう?」


が、ゼロ君は食い下がってきた。しつこいのはこの人の欠点の1つだと思う。

とりあえず説明してあきらめてもらおうと思い、口を開こうとしたとき、いきなりファンファーレのようなものが流れた。


『75000の経験値を取得。LVが上がりました。』


え?レベルアップ?なんで?私たち何もしてないよ?…もしかしてラビ君かな…それしかないか。

考えていたらゼロ君が話しかけてきました。 


「どうしたんだい?いきなりだま…っ…て…」


しかし、その言葉は最後まで続かず、ゼロ君は倒れた。

うつ伏せになった彼の背中には、なにやらナイフが刺さっていた。


「な…に…が…」


どうやら意識はあるようで、途切れながらも何か言っている。


「いぇーい、ドンピシャ」

「うまく入ったなぁ」


少し混乱していたら、先ほどの2人組が出てきた。

ゼロ君はそれを見ると、目を見開き、こういう。


「お、おま…えら…なん…で…」


なんで?…どういうことだろう。二人組はにやにやと気味の悪い笑顔を見せながら言いました。


「なんでって?そりゃぁきまってるでしょ?PK(プレイヤーキル)して経験値もらうためだよ」

「だめっすよ零時間(笑)(ゼロタイムかっこ笑い)さん?PKプレイヤーなんか信用して依頼なんかしちゃぁ」


依頼?…どういうことだろう。

私の視線に気づいたのか。二人組のうちの一人がこう言ってくる。


「あぁ、教えてやるよ。この自称βテスターでトッププレイヤーのこいつは俺たちにあんたら3人を襲うふりをしろって依頼したんだ」

「襲う…ふり?」


どういうことだろう?考えていたらもう一人の方がこう言ってきた。


「あんた察し悪いな。つまり、俺たち悪者からさっそうとアンタらを助けて好感度アップをしたかったんだよこいつは」

「そんで、一応依頼達成したということで退散した俺たちは、すぐに戻ってきて今度は本当に襲うことにしたってわけだ。ほんとイケメン君ざまぁ」

「く…そ…」


二人組は笑い出し、ゼロ君は必死に動こうとしているが、マヒか何かなのだろう。ピクリと動くだけだ。


「さてと…自称君はこのまま放置して、とりあえず君らにもおんなじ状態になってもらおうか…」

「いやぁ、こんなかわいい子、しかも小学生まで殺れるとは…現実で逮捕されないかね?」

「…は、はっ、これはゲームだぞ?いくら小学生だからってそんなこと…」

「…訴えられるとかはありそうだよな…」

「「………」」


二人組はそんなことを言って、黙ってしまった。何やら考え込んでいる様子。

今のうちに逃げよう、そう思ったとき、ウィンドウにメールが届いたことが表示された。

開いてみると、それはラビ君からのメールだった。内容は『《召喚》を使ってみて』というもの。

《召喚》ってたしか契約した獣を呼び出せるスキルだったはずだけど…って、あっ!そういえば契約したんだった。

私はすぐにウィンドウで《召喚》のスキル欄をを選択し、説明を見てみる。

そこにはしっかりと、召喚対象にPlayRabbitと表示されてあった。


「そ、それがどうした!これはあくまでゲームだ!現実なんぞ知るか!」

「そ、そうだな!PTAが怖くてPKやってられっか!いくぞーー」

「ーー《召喚》:PlayRabbit」


二人組が何か言っていたが、気にせず《召喚》をする。

すると魔法陣が目の前に出現し、徐々に上に上がっていく。そして、上まで上がりきると、そこにはラビ君がいた。別れる前のセーターとスラックスの恰好ではなく、コートと帽子をかぶっている。ラビ君はゆっくりと周りを確認し、こういった。


「ええっと…何この状況?」

アオイです。

もうすぐクリスマスですね?

クリスマス…それはイエス・キリストさまのご誕生を祝う日です。

それは記念すべき日です。

決して、決して!男女でイチャイチャするような日ではありません!

クリスマスにデートなどという予定を入れている人!あなたは間違っている!

早くキャンセルして家で寂しく一人でクリスマスケーキを食べるんだ!(なお作者は予定どころか遊ぶ相手すらろくにいない模様)

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