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新人類に支配されても  作者: ぷちくん
文明人のコロニー編
14/28

【第13話】『コロニーの一日』

村にいた頃、一日は凄く長いものだと思っていた。


今はそうは思わない。

目的も無く生きるしか無かったあの頃と違い、今はしなくてはならないことが山のようにある。

それが良い事なのか悪い事なのかはわからない。

どちらの生活が幸せなのかもわからないが、時間が流水の如く過ぎていくのは間違いない。


――――ミストゾーンに来てから「二年」の月日が流れた。



「おはようみんな、朝だよ」


目覚ましを止めたヴィンが同居人の三人に声をかける。

すると眠そうに一人の少女が起き上がった。

彼女の左目の下には、二年前にあった“神印”は無い。

ヴィンにも、レオにも神印は無くなっている。

ミストゾーンの医療設備を使って消したのだ。


「はわぁ~、おはようヴィン」

「おはようテレサ、毛布ちゃんとたたんでね」

「はぁーい」


毎度のことながら、声をかけて起きるのは彼女だけだ。

ヴィンは他の同居人の寝起きの悪さにため息を吐きつつ、未だ起きる気配のない一人に近づく。


「レオ、起きて」

「むにゃむにゃあと五時間……」


声をかけながら身体を揺するが、起きる気配はない。

この程度で起きないことは、長年一緒に住んできて重々承知のこと。

ただ、起こす為にいきなり暴力を振るうのも気が引けるので、念の為に段階を踏んでいるだけだ。


「ていっ!」

「痛い痛い痛い痛い!!は?!何?!」


笑い合っていた親友に、いきなり殴られた時のような困惑を見せてレオが起床した。

毎回、気持ちよく寝ているのを邪魔するのは胸が痛むが、こうでもしないと昼過ぎまで寝かねないから仕方がない。


「何じゃないよ、朝だよ」

「ああ……でもその起こし方マジでやめて欲しいんだが」

「じゃあその前の段階で起きてよ」

「いや、それはさぁ、そうだけどさぁ……」


レオを起こすには、声かけや身体を揺する程度では駄目だ。

ビンタするのも時間がかかるし疲れるのでやりたくない。

そうして編み出したのが、覚醒率百パーセントの荒業、「ダブル乳首つねり」である。


やり方は至って簡単、服をめくって両方の乳首を抓ればいいのだ。

これにより、爆睡大魔人であるレオ・ミスト・グレイフは、目を白黒させて覚醒する。

これで起きなかったことは今まで一度もない。

正に常勝不敗の職人技である。


「言っとくけど滅茶苦茶痛いからなこれ!やられる側の気持ち考えたことあるか?!」

「毎回起こさなきゃいけない僕の身にもなって欲しいものだね、もう十四歳なら一人で起きるくらいしたら?」

「てめぇ乳首寄こせやオラ!思い知らせてやる!」

「へん!そんなこと言うんだったら二度と起こしてあげないもんね!」


二人が広くもない室内をドタバタと走り回り、テレサは隣の部屋で髪に櫛を通す。

毎度繰り返す朝のやり取りだが、騒ぎ疲れて最後に起こされる人も毎度同じだ。


「おら姉ちゃんいつまで寝てんだ!起きろ!」


お腹を出し、死んだカエルのような姿で熟睡するのは他でもないアメリアだ。

鼻提灯を馬鹿みたいに膨らませ、掛布団は仕事を放棄して床に落ちている。


「うわぁ、今日も女とは思えない寝相だね」


アメリアは三人をミストゾーンへ連れてきて、あらゆる面倒を見てくれた恩人であり、先生であり、先輩であり、保護者代わりでもある感謝すべき存在の筈なのだが、こと寝起きの悪さに関してはレオと一二を争う出来栄えだ。

女性の乳首をつねる訳にもいかないので、別の方法が編み出された。

その方法とはズバリ、「こちょこちょ」である。


「俺は足を抑えてる、ヴィンは攻撃を頼んだ」

「おっけー、それじゃあ行くよ?三、二、一……」


こちょこちょこちょこちょこちょ


「わぁあンぎゃはあはっははは!ちょ!やめてえ!にゃははは!」

「起きろー!姉ちゃん起きてくれー!」

「お姉さんー!僕達を置いて逝かないでー!」


こちょこちょこちょこちょこちょ


「起きてる!もう起きてるからっやめてえんげっほげほげっほ」


ジタバタ暴れてようやくアメリアが目覚める。

こうして全員が起きてから、ミストゾーンの一日が始まるのだった。



食堂で四人が朝食を摂る。

ミストゾーンの食事は培養によって育てる「食用増殖細胞(コミセル)」が主食だ。

コミセルは水と栄養剤があれば無限に増殖していくので、限られたスペースで食糧事情を解決できる優れものだ。

見た目は灰色の泥みたいで気持ちが悪いのだが、専用の機械で加工することで、固くしたり柔らかくしたり、様々な食感に変えることが出来る。

又、香料や着色料、調味料を調合することで、多種多様な料理に似せることが可能だ。

食堂のメニューには、ハンバーガー、カレー、サンドイッチ、スパゲティ、ラーメン、ケバブ、ボルシチ、クレープ、シチュー、ピザ、カツドン、スープ、コーンポタージュ、ミソシル、などなど多数存在する。


とはいえ所詮は紛い物でしかなく、本物の方がおいしい。

本物のハンバーガーやカレーを食べたわけでは無いのでわからないが、経験者は本物の方がおいしいと口をそろえて言うのだからそうなのだろう。

自分達も肉や野菜についてなら比べることができるが、確かに本物と加工されたコミセルは異なる。

本物の肉は一噛みしただけでも、硬かったり柔らかかったり筋っぽかったり表情豊かなのだが、機械で作った“もどき”はどこを噛んでも均一な「肉の食感」がする。

それに味も、素材から染み出て来るものというよりは、後付けされたものだとわかるのだ。


だからといって食べられないのかと言われれば、そんなことはないのが凄い所。

本物を知っていると違和感はあるが、不味いか美味いかと言われれば普通に美味い。

味気のない増殖細胞を、何とかおいしくしようと努力し続けた先人達の歴史をしみじみと感じる。


「けどやっぱ、本物の肉が食いてぇなぁ」

「今月は祝日も無いし、日曜日を待つしかないわねぇ」


レオが気だるげに「ハンバーガーもどき」を口に運ぶと、アメリアが気だるげに「コーンポタージュもどき」を食べながら答えた。

村の時とは違い、地上を使えないコロニーでは畑を耕すことも家畜を放牧することもできない。

「本物」の素材を入手する機会は少ないのだ。


一応、「培養野菜」や「培養肉」といったものも育てられてはいるが、生育コストが高い上にスペースの制限もあるので、住人全員の毎食を賄える生産力は得られていない。

その為、毎週日曜日と祝日しか肉や野菜を食べることはできないとされている。

悲しいことに食材という点に於いては、村にいた頃の方が恵まれていたかもしれない。


「にしてもよぉ」

「やー!」

「うおァ?!」


レオの身体が突如揺れ、椅子からはじき出されて転ぶ。

倒れたレオの上には、間髪入れずに赤毛で短髪の子供が跨った。

同年代くらいのその子は、レオと比べれば一回り身体が小さい。

女の子のテレサと比較しても、もう少しだけ小さいだろう。


「油断したね!レオちんの負けっ!」

「ちょ、待てよニマ!食事中は無しだろ常識的に考えて!」


挿絵(By みてみん)


レオの上のニマは、赤くて長い睫毛を瞬かせて笑う。

金色の瞳は宝石のように煌々としていた。

やんちゃで男勝りだが、れっきとした女の子だ。


「あはは!楽しいーっ!」

「ぐふッ!俺は楽しくねぇ!」


ニマはわざとぴょんぴょん跳ねて、レオの胴体に圧力を加えた。

その度にレオは呻き、ニマは嬉しそうに笑う。

騒がしい二人に食堂にいた人たちの視線が集まるが、次第にそれは温かいものを見つめるものとなって戻っていく。

ミストゾーンではよくある日常の一つなのだ。


「ニマ、食事中は駄目よ、また後で痛めつけなさい」

「ちぇ~、わかったよぅ姉貴~」


アメリアが一応といった風に注意すると、ニマは渋々といった様子で退く。

レオは「いてて」といいながら起き上がり、もといた席についた。

隣に座ったニマは、頬杖をついて食事の様子を眺める。


「おやぁ、レオちんは今日はハンバーガーですかっ!ニマちゃんは今日はサンドイッチなのでしたっ!」

「聞いてねぇよ」

「あっ!ビンビンとテレテレもおはよーっ!」


レオが呆れながら残りを口に入れると、ニマは屈託のない笑みで対面に座る二人に手を振る。


「おはようニマ、今日も元気だね」

「元気すぎると思う」


ヴィンは「カレーもどき」を食べながら、テレサは「スパゲティもどき」を食べながら返事をする。

ニマは二人に対し、己の行いを恥じる様子もなくピースをして歯を輝かせた。


「ニマはいつも元気!なのですっ!」


ミストゾーンで住み始めてから二年。

彼女はここでできた新しい友達だ。



言葉を覚えて意思疎通ができるようになり、ニマとは色んなことを話した。

好きなものの話、嫌いなものの話、面白い話、悲しい話。

ある日、もっと強くなりたいと言ったら彼女は稽古をつけると言って殴りかかってきた。

始めは無茶苦茶だと思ったものだが、今では勉強の終わりに“特訓”をするのが日課になっている。


「というわけで、今日も勉強が終わったら特訓しよーねっ!」

「おう……、今日はお手柔らかに頼むぜ」

「やだっ!」

「やだじゃねぇよ!」


『ピーンポーン』


雑談をして暫しの時が流れ、部屋に備え付けられたスピーカーから電子音が鳴った。

平常時の放送を開始する合図だ。


『朝番のみなさーん!お仕事の時間ですよー!深夜番のみなさんはお疲れさまでしたー!ゆっくり休んで下さいー!』


明るい女性の声が流れてきた。

ミストゾーンでは朝番、夕番、深夜番で仕事をする時間帯が異なる。

自分達は朝番としてのスケジュールで生活をしていた。


『ギミタックさんより連絡事項。今日は図書室に新しい本が増えたそうでーす。あとホアキンさんが夜に仮想世界で音楽ライブをするらしいので、暇な人は冷やかしに行きましょー。他に連絡事項はー、ありません!ある方は放送室のキャロルまで送ってくださーい、それじゃあ今日も頑張りましょー!』


ブツリと切断音が鳴り、放送が終わる。

食堂にいた人たちは声を掛け合いながら立ち上がり、各々の持ち場へと動き出し始めた。

アメリア達も、やるべきことを行うために立ち上がる。


「それじゃあ今日も頑張りましょう!」



視聴覚室の前に辿り着いた。

アメリアが三人に電子パッドを配り、壁際の天井からプロジェクタースクリーンを下ろして準備を進める。

プロジェクターと電子パッドを同期させることで、電子パッドの画面がスクリーンにも反映されるようになった。

今ではもう驚かないが、初めて見たときは驚いたものだ。


「はい、じゃあ今日も始めるわよ。とはいっても大体のことは教えたし、わからない部分があれば私に聞く感じの自習になるけど」


名前の書き方から自己紹介の仕方、計算の仕方から生活の仕方まで、アメリアは数々の事を教えてくれた。

その結果、三人は僅か二年で、読み書き、会話、一般常識、一般教養を会得し、他の住人と遜色が無いほどに成長していた。

今までの集大成とも言える最終試験を、明日行うのだ。


「でもよぉ先生」

「何かしら?レオ」


レオは普段アメリアを「姉ちゃん」と呼ぶが、授業の場では「先生」と呼ぶように何度も注意をされた。


「どうして形式ばった試験なんてしなきゃいけねぇんだ?会話も読み書きも大体困らなくなったんだから、それでいいじゃんか」

「いいえ。信用してもらう為に、試験は必要よ」


アメリアは指を立てて説明する。

彼女の寝相と道案内は最悪だが、先生としての優秀さはミストゾーンでも指折りだ。


「信用?」

「そうねぇ、じゃあレオは読み書きをどの程度できるかしら?」

「どの程度って言ったってなぁ、普通の本とかは読めるようになったし、日記くらいはつけれるけど」

「じゃあ計算はどの程度できる?歴史はどの程度知ってる?機械の知識はある?それらの知識が他の人と比べてどの程度優れているか伝えられる?」

「そんなの一々説明してらんねぇよ」

「難しいわよね、でも“試験で何点取りました”って言えば、伝わるのよ」


アメリアの言葉に、レオは理解の色を示す。


「なるほど、便利だな」

「ええ、試験の内容さえ知っていれば、後は点数を伝えるだけで誰がどの程度の能力なのかわかる。人を判断する上では非常に有用な方法よ」

「……つまり僕たちが良い点を取れば、ミストゾーンでも認めて貰えるってことですか?」


ヴィンが聞いた。

というのも、自分達は元アデス教徒の余所者ということもあり、未だに住人との間に壁を感じる時があるのだ。

大抵の人は親切に接してくれるが、一部の人は中々自分達を受け入れてくれている感じがしない。

これからどれだけ住むかわからない、もしかしたら一生を過ごすかもしれない家なのだから、何とかしたいという気持ちは強いのだろう。

その気持ちを知るアメリアは申し訳なさそうに肩を落としたが、すぐに元気を見せてヴィンの質問に答えた。


「二年も経ったのに、肩身の狭い思いをさせてしまってごめんなさい。でも私達のリーダーの出す試験に真面目に取り組んで、それでいい結果を出したとなれば、他の人も評価してくれる筈だわ」


ヴィンの表情が明るくなった。

極端な話、自分達はいつ追い出されても不思議ではない。

村では神官が絶対の上位者であり、三禁則さえ破らなければ追放されることはなかった。

しかし、ミストゾーンにそういったルールはない。

有害だと思われたり、邪魔だと思われたりしたら何をされてもおかしくはないのだ。

だから、ミストゾーンで自分達よりも立場のあるアメリアに保障されることは、暗闇の先に光が見えるように心強く思える。


「それに、ミストゾーンで認められるだけじゃないわよ。今回の試験は人類基地連合の発行するテキストを使っている。つまり、ミストゾーンの“外”でも通用する試験なのよ」


励ますようにアメリアは試験の有用性を説いた。


「外、他の人間たちの場所ってことですか?」

「ええ、基地連合には数百万人の人々がいるし、協力関係にある他のコロニーも数十万人以上はいるって言われてる。彼らの信用を得るのは簡単じゃないけど、今回の経験を活かせば将来はその人達を頼れるかもしれないわ。意味があるって思わない?」


数百万人という途方もない人数を想像し、ヴィン達の目が輝いた。

ノーマンに支配されていようとも、広い世界には沢山の人々がいる。

自分達は孤独ではない。

それは勇気となって胸が熱くなった。


沢山勉強をして、沢山仕事を覚えて、色んなことができる人間になれば、いつかはいけるのかもしれない。

『人間の世界』に。

そうすれば見つかるかもしれない、『ノーマンに支配されない世界への道』が。


やる気になったレオ達は、黙々と自習を進めた。

時折誰かが手を挙げて質問をし、何度か休憩を挟みながら取り組む。

苦手なものを分析し、知らないことを覚え、自分達を成長させていく。

毎日がそれの繰り返しだ。


アデス教徒として生まれ、今まで勉強する機会が無かった遅れを取り戻すように、三人は机に向かった。

やがて集中力が切れ始めたところで、アメリアがお菓子を配って映画を流す。

さり気なく言語や価値観を知る勉強にもなるし、疲れていたらぼーっと眺めるだけでもいい。

観終わったら感想を言い合いながら、トランプやボードゲームを持ち出して皆で遊ぶ。


負け続けたレオがやけになって勉強に戻り、ヴィンとテレサも同じように戻る。

時間も終わりに差し掛かり、アメリアは電子パッドで書籍を読みながら時間を潰す。

四人が空腹感に疼く頃、部屋に放送が響き渡った。


『夕番のみなさーん!お仕事の時間でーす!朝番のみなさんはお疲れさまでした~!ゆっくり休んで下さいね!』

「終わり終わりー!腹減ったー!飯ー!」


今日はもう終わりだ。後は好きに過ごして良い。

レオが勢い良く立ち上がり、電子パッドを返却して背伸びをする。

ヴィンも解いていた問題を終わらせ、疲れをほぐすように身体を動かした。

隣にいるテレサは突っ伏したまま眠っている、よくあることだ。


「テレサ、終わったよ」

ヴィンが肩を叩くと、テレサは呆けた顔を上げる。


「朝?」

「どちらかといえば夜だね」


テレサは辺りを見て納得したのか、眠そうに目をこすりながら電子パッドの電源を落とした。

暗転した画面に自分の顔を映り込ませながら、乱れた前髪を手で直す。

そのままふらふらと返却し、口を覆いながら欠伸をした。


「はわぁ、私どのくらい寝てた?」

「三十分くらいかな、良い夢見れた?」

「うーん、憶えてないや」


ヴィンとテレサの他愛ない会話に割り込むように、アメリアが言った。


「皆おつかれさま、片づけたらご飯食べましょ」


四人が慣れた手つきで視聴覚室の掃除を行う。

物を戻し、机を拭き、床を掃いてゴミを集め、それをゴミ箱に捨てる。

部屋を清潔に保つことが、ミストゾーンでは大事なことだと教わった為だ。


「レオ、まだ小さいカスがあるわ。それも綺麗にしてね」

「はぁ、流石に潔癖すぎると思うぜ。こんなカスくらい落としときゃいいじゃねぇか」

「閉鎖空間なんだから綺麗すぎるくらいで丁度良いのよ、文句言ってないで手動かして」

「汚ねぇって思わないのに、どう掃除しろって言うんだ」


レオがぶつくさいいながら床を掃く。

ひょっとしたら三人にとっては、勉強よりも掃除の方が苦労したかもしれない。

何故なら、アデスの村では気にも留めなかったような汚れも、コロニーの中では重大な汚れと扱われるからだ。

自分では綺麗だと思っても、アメリアは汚れていると指摘する。

テレサは比較的早く順応したが、レオは未だに感覚の違いで苦労をしていた。

この辺りは性格の違いだろう。


何とか掃除を終わらせ、食堂でご飯を食べて現在十八時。

二十二時までは自由時間なので、どこで何をしていようと自由なのだが、レオ達にはまだやることが残っていた。


「やあやあ皆の衆ーっ!特訓のお時間ですよーっ!」


赤い短髪を揺らしながら、美男子に見えなくもない少女がやってきた。

ミストゾーンで初めてできた友達、「ニマ」だ。


「あー、来ちまったか」

「むむっ!まるでニマちゃんが来て不満みたいな言い方ですなっ!けしからんっ!」

「ぐはっ!暴力までが早いッ!」


ニマの強烈なボディーブローを浴びてレオがよろめく。

多彩な手数の攻撃に組み伏せられ、ニマに身体の自由を蹂躙された。


「ニマ、いきなり暴力は良くない」

「テレテレに叱られたぞっ!やったー!」

「喜ぶところじゃないんだけど」

「呆れ顔も可愛いなっ!このやろっ!このやろっ!」


ニマはレオに跨ったまま、辛抱たまらんといった顔で中空に正拳突きをかます。

テレサは呆れて口を閉ざした。


「お姉さんは今日は来てくれるんですか?」


ヴィンは困り顔を浮かべつつも、アメリアが特訓に来れるのか確認した。

彼女がいると安心感が違うので、できれば来て欲しいと思ったのだが。


「私は明日の試験の準備があるから、時間があれば顔出すわね」

「そうですよね、わかりました」

「ごめんねヴィン。ニマ、やり過ぎちゃダメよ」

「あいあいさー!」


頼れる人が今日は来れないようだ。

一応釘を刺してくれたが、ニマの軽い返事が不安を煽る。

いつか大怪我させられそうで怖い。


「じゃあ、行こうか」

「そうだね」


テレサが言い、ヴィンも不安を抱えつつも武道場へ向かう。

ちなみに、ニマは楽しそうにレオの髪を引っ張っていた。


「いでででで、いつまでやってんだよッ!」



武道場。

運動をする為の場所なので、他の部屋と比べればかなり広い。

そして床にはマットが敷かれており、倒れたりしても怪我を防げるようになっている。

部屋の中心では、ニマ、レオ、ヴィン、テレサの四人が練習用の服に着替えていた。


「じゃあストレッチも終わったし、早速いくのですよっ!」


言うや否やニマが飛び掛かり、レオが迎え撃つ。

上段突き、中段蹴り、横殴り、後ろ飛び、回し蹴り、小柄な少女の身体から多彩な技が繰り出される。

それを受け流し、避け、弾き、転がり、受け止め、隙を探る。

暫くの攻防の後、ニマのかけたフェイントに引っかかり、レオは大きく拳を空振りさせる。


「隙ありぃ!!」

「ぐわっ!」


懐に飛び込まれて服を掴まれ、少女とは思えない膂力で盛大に投げられる。

いや、実際の筋力ではレオの方が上の筈なのだが、ニマの天才的な体術がそのように錯覚を生み出すのだ。

彼女はあらゆる近接戦闘、特に柔術を得意としていた。


「冷静さが足りなーいっ!次はビンビンの番だーっ!」

「う、うすっ!」


咄嗟に構えるヴィンが足を引っかけられて転倒する。

急いで起き上がるも羽交い締めにされ、悲しくも少女に拘束された。


「どうだーっ!」

「参りました!参りましたぁー!」

「勇気が足りなーいっ!次はテレテレの番だーっ!」


テレサの表情が一気に引き締まる。

普段は誰に対しても和やかな雰囲気を見せる彼女が、この瞬間だけは別人のような顔を見せるのだ。

それは「敵愾心」、ただの練習相手に向けるには不相応な激情をテレサは放つ。

レオやヴィンと練習する時は見せない敵意を、何故かニマに対してだけは見せる。

その真意を、レオとヴィンは知らない。


「行くよニマ」

「いいぞっ!いい表情だぞテレテレっ!」


怒りすら感じるテレサとは対極的に、ニマは心底嬉しそうに接する。

その余裕が逆鱗に触れたのかはわからないが、テレサは物凄い勢いで駆けだした。

二人の距離が一気に縮まり、テレサが蹴り上げる。


と見せかけて横に跳び、右に回り込んで手を伸ばす。


「うーむっ」


ニマの胸倉へ潜り込み、恐るべき速さで背負い投げ――――

とはならなかった。

ニマは完全に見切っている動きでテレサを躱し、逆に足を引っかけてテレサを転ばせる。

そのまま寝技に持ち込み、腕を掴んで両足で首を締め上げた。

テレサは何とか抜け出そうともがくが、ニマの完璧な締め上げに成す術なく手を叩いて降参する。


「フェイントは目線も合わせないと引っかからないよっ!三人ともまだまだ修行が足りませんねっ!」

「やっぱ強ぇなニマ……」


レオの感嘆の声を聞き、ニマは得意げに仁王立ちをした。

ヴィンに起こされ、テレサは悔しそうに唇を尖らせる。


「大丈夫テレサ?」

「ありがとうヴィン、やっぱ強いね」


「それでは挨拶も終わったので、これより特訓をはじめまーすっ!」


その後の特訓内容はアメリアが考えたものを使っているので、まともに進んだ。

所々で差し込まれるニマの「オリジナルトレーニング」という名の暴力でボコボコにされはするが、一応まともに進んだ。



ニマの特訓も終わり、四人は着替えを手に一か所に集まっていた。

村で過ごしていた時と違い、色々なデザインの服を着れるようになったので、着替えの服も日によって様々だ。

しかし、ニマは赤色、レオは黒色、ヴィンは白色、テレサは黄色、といったように、それぞれで好みの傾向はあった。


「じゃあ、また後でね」

「ゆくぞっ!テレテレっ!」


そう言って、テレサとニマが「バスルーム」と書かれた部屋へ入っていく。

裸になる必要があるので、男と女で部屋が分かれている。


「んじゃ俺らも行くか」

「そうだね」


レオとヴィンも反対側のバスルームへと入った。

中へ進むと、左手にはこの場所で使う道具や洗剤などを収めた棚、中央には鏡や椅子、洗濯用の籠が置かれ、右手にはスモークガラスの張られた個室が何個か並んでいる。

身体を洗う方法が村とあまりにも違うので、最初は色々と戸惑ったものだ。


「別に一週間位やんなくても良いと思うんだが、どうよ」

「僕に言われても困るけど、お姉さんがうるさいからねぇ。ここの常識だと思って割り切るしかないよ」

「はぁ、外に出てねぇのに汚れるかっつうの。姉ちゃんは潔癖すぎんだよなぁ」


レオとヴィンが服を脱いで洗濯籠に放り込み、棚からボディタオルを取り出して洗浄室まで移動する。

村にいた頃は痒くなってきた時に川に行って身体を洗っていたのだが、ミストゾーンでは毎日水洗いをし、週に二回ほどは洗浄剤を使うように言われている。

この辺りは湿度が高めなので不衛生になりやすいらしい。

幾ら何でも気にしすぎだと思うのだが、アメリアは当然の顔でやっているので、仕方なく言うことを聞いている。


「うわ、少ねぇな……」


レオが入り口脇に付いているパネルを見て、霧洗浄剤の残量の少なさに驚く。

補充するかどうか悩んだが、交換するのが面倒くさいので足りると信じて中へ入った。


「ふんふふ~ん♪」


ここへ来ると鼻歌が弾む。

洗浄室の狭さが良い感じに音を反響させるため、歌ってて気分がいいのだ。

ご機嫌に内側の操作パネルを弄り、開始ボタンを押すと出入口にロックがかかった。

ヴヴヴという始動音が鳴り響き、天井からジェットヘッドがスルスルと降りてくる。

それを掴んで、ヘッドについている青いボタンを押した。


「いくぜ!」


目を閉じて叫ぶと、ジェッドヘッドから温水が強烈な雨のように吹き付けてくる。

ボタンの押し込み具合によって放出の強さを変えられるのだが、レオは強めでやるのが好きだ。

十秒もしない内に全身が濡れ、逆立った金髪はペッタリと頭に張りついた。


それから白いボタンを押すことで、今度は白い霧が吹きつけられる。

白い霧は皮膚の水分と混ざり合い、ぬるぬるとした感触へと変わっていった。

さながら梅雨のナメクジという気分だ。


「こんな気持ち悪い洗い方、よく思いついたよなぁ」


頭をガシガシと擦り、取っ手に引っ掛けていたボディタオルを取り出して、身体も擦っていく。

こうすることで、身体中の汚れを落とすことができるらしい。

もう一度青いボタンを押すと、温水が再び全身を打つ。

皮膚に付着した霧洗浄剤や汚れを何もかも洗い流し、真っ白な身体は肌色を取り戻した。


最後にジェットヘッドの赤いボタンを押すことで、温風が吹きつける。

強力な風が濡れた身体を乾かし、全身は仄かにいい香りがしてすべすべになった。

川で洗っていた頃とは大違いのやり方だが、洗浄はこれで終わりだ。

ロックを解除して個室を出ると、隣から水の跳ねる音がする。


「ヴィンはまだ洗ってんのかよ、いつもなげぇなぁ」


思い返せば、ヴィンが自分より早く出た試しがない。

どこをどんな風に洗っていたら、そんなに時間がかかるというのだろうか。

全く以て謎である。


暇なので部屋を見ていたら、壁に掛けてある電子ペーパーのカレンダーが目に入った。

今は十一月なのに、九月のまま捲られていないようだ。

この場所で必要とする人は殆どいないのだろう。

せっかく気づいたので、捲っておくことにする。


「十一月か……」


月の名前から曜日の名前まで、もうすっかり頭に入っている。

そんなレオにとって、或いはヴィンやテレサにとってもそうだが、この時期になると思い出さずにはいられない出来事があった。


「久しぶりに、行ってみるか」


ぼんやりと呟いた時に、ヴィンが出てきた。


「明日が試験だけど、寝る前に予習しとく?」


ヴィンが着替えながら聞いてくる。

試験の予習も悪くはないが、それよりもレオは思い出したことをやりたかった。


「いらねぇだろ、それよか慰霊室の方に行かないか?」

「……そっか、ちょうど今ぐらいの頃だもんね」

「ああ、父ちゃんと母ちゃんにも報告しとかねぇとな」

「試験の応援もして貰えるように言ってみようかな」


そして二人はバスルームを後にする。

向かう先は「慰霊室」、亡くなった住人の名前を刻む石板が置いてある場所だ。


「テレサとニマは待たなくていいの?」

「いいだろ、テレサは来たがらないだろうし」

「それもそうだね」


パイプと換気扇の張り巡らされた天井を見上げながら、灰色の通路を進んでいく。

いくつもの階段や扉を素通りし、時折すれ違う人に挨拶したりしながら、二人は目的の場所まで辿り着いた。

地上に近い階層にある死者と生者を繋ぐ場所、「慰霊室」だ。


この部屋に扉は無く、誰でも簡単に出入りすることができる。

物音一つしない部屋は特別大きいわけではないが、レオ達の寝室などと比べればずっと広い。

部屋の中には、黒い石板が何枚も均等に並んでいた。

そこに刻まれている全ての名前が、もうこの世にはいない人の名だ。

ある人は地上に出て死に、ある人は病気で死に、ある人は怪我をして死に、ある人は寿命で死んだ。

またある人は、空から落ちた光の柱に焼かれて死んだだろう。


「今日で何回目なんだろうな」

「最初は毎日のように来てたからね、最近は大分減ったけど」

「姉ちゃんに泣いた姿見られたの、今思えば恥ずかしいな」

「はは、レオらしくなかったね」

「ヴィンだって泣いてただろ」


二人は静かな声で会話をしながら、一つの石板の前で腰を下ろす。


「ただいま、父ちゃん、母ちゃん」


目の前の石板には、レオ達の両親の名前が刻まれている。

本来はミストゾーンの住人ではない死者の名が、この場所に刻まれることはない。

しかし、ミストゾーンの人達が自分達を気遣ってくれたおかげで、ここには両親の名前が刻まれている。

当然、亡骸は埋まっていないし、遺品になるようなものも何もない。

それでも、亡くなった家族の居場所が少しでもあるだけで、二人の心は幾分か救われた。


「そっちの暮らしはどうだ?元気してるか?」


レオがアデス語で喋りながら石碑の名前を撫でた。

「アリスト」、「マリー」。

アデス語に正式な文字は無いので、公用語の文字を宛てて彫り込まれている。


「ヒカソ」と「アルト」は刻まれていない。

まだどこかで生きていると信じたかったから。


「僕達十四歳になったよ。こっちは毎日大変だけど、ちゃんと生きてるよ」


ヴィンも石板へ声をかけた。

ただの慰めに過ぎないのかもしれない。

石に声をかけたところで、死んだ人には届かないのかもしれない。

それでも、ヴィンは声をかける。

科学も理屈も関係なく、自分がそうしたいと思うから。


「俺達、明日試験するんだぜ。ここにきてずっと勉強してきたことを、形にするんだ」

「うん、読み書きとか、計算とか、物の種類とか、歴史とか、僕たち色々と勉強したんだよ。勉強ってね、大変だけど面白いんだよ。知らなかったことを知るって、凄い楽しいことなんだよ」


冷たい石板が返事を返すことは無いが、この場所に来て語り掛けることで家族と繋がれるような気がする。

心のどこかで安心する。


「ここに来れて良かったぜ。村とは全然違うけど、優しい人が多いし、刺激的だし、凄く良い場所だった。三禁則なんてクソ喰らえって感じだしな」

「みんなで一緒に、来たかったね」

「……ああ、みんな生きてたら、どんな感じになってたんだろうな」


あったかもしれない家族での生活を想像し、二人は目頭が熱くなった。


人はいつか死ぬ。

そんな当たり前のことを、この場所は思い出させてくれる。

そんな当たり前のことを思い出せるからこそ、今ある命を想うことができる。


「ヴィン」

「何?」


色んな思いがあり、色んな言葉が湧いてくる。

無数の気持ちの総てを言葉にすれば、きっと取り留めもなくなってしまうのだろう。

だから、レオは本当に言いたい一言だけを選び取った。


「生きような」


同じ経験をした二人だからこそ、確かめ合うのにはその一言で十分だった。

ヴィンもただ一言だけで返事をする。


「もちろんだよ」


自分達のいる世界が、容易じゃないことはわかっている。

それでも、二人は決意を確かめた。

この世界で生き抜き、自分達にできる足掻きをすると。


拳の挨拶を交わし、立ち上がる。

時刻は二十一時四十分、部屋に戻る頃合だ。

二人が戻ろうとした時、扉のない慰霊室の入り口から声が聞こえた。


「レオちんとビンビンを発見っ!」


元気いっぱいの声に振り返ると、金色の瞳に赤い短髪が見えた。

そんな人物を見紛う筈もない。


「げ、なんでニマが」

「勝手にいなくなるとは万死に値するっ!粛清ビームッ!」

「慰霊室くらい静かにし、グハァ!」


立ち上がるや否や鳩尾にニマの手刀が食い込んだ。

レオは耐えきれずその場に膝をつく。


「や、やめなよニマ、この場所で騒ぐのは流石に駄目だよ」

「粛清ビームッ!」

「ぎゃあああ!」


慌てて立ち上がったヴィンは、盛大な遠心力の乗ったチョップをお見舞いされた。

そこそこの痛みに頭を抱えながら、理由のわからない暴力に狼狽えるしかない。


「ど、どうして急に?!」

「しんみり顔には粛清ビームッ!覚えておいてねっ!」


さも誇らしいことをしたかのように、ニマは胸を張って答えた。


「知るかっ!時と場所を弁えろ!」

「嫌ですっ!」

「嫌ですっじゃねぇ!」


レオは思わず手を伸ばしたが、考え無しの行動は隙だらけだっただろう。

一瞬で逆手に取られて転倒し、関節技を決められる。

力の限り抜け出そうと暴れるが、その度に締め上げられて激痛が走った。

やがて状況を打破する術が無いと悟り、力が抜ける。


「はぁ、はぁ、勝てねぇ……」

「ニマの使命は落ち込む人を元気にすることなのですっ!抵抗すればボコボコにしますっ!」

「過激派すぎるだろッ」


組み伏せられたまま吐き捨てるが、ニマはいつも通り嬉しそうにしている。

ヴィンはどうすれば良いのかわからず、挙動不審で立ち尽くしていた。


「それじゃあ二人ともっ!明日の試験、頑張るのですよっ!」

「あ、うん、ありがとうニマ」

「いてえ……、お前は常識の試験受けた方がいいぜ」

「常識はニマがつくるっ!それではおやすみっ!」


レオの身体を解放し、赤髪の少女は颯爽と手を振って去っていく。

慰霊室は嵐が去ったような静けさに包まれた。


「なんだったんだ……」

「すごい元気だったね……」



「あら、二人とも遅かったわね」

「おかえり~」


部屋に戻ると、アメリアがベッドの上で電子パッドを弄っていた。

テレサは机で明日の予習をしているようだ。


「慰霊室に行ったら嵐に直撃されたんだよ」

「嵐?慰霊室の中で?」

「ニマのことですよ」


ヴィンが補足すると、首を傾げていたアメリアが「あー」と納得の声を出した。

満身創痍の二人に、テレサは心配そうに駆け寄る。


「大丈夫?怪我してない?」

「大丈夫だよ。あいつ滅茶苦茶だけど加減はわかってるみたいだし」

「ヴィンのおでこ赤くなってるよ」

「はは、チョップされたからね」

「ごめんね。私もっと強くなって、ニマを力で捻じ伏せられるように頑張るね」


幼馴染の少女は思いやりの溢れた声色で物騒なことを言いだした。


「ち、力でねじ伏せる?」

「レオやヴィンに酷いことをしたら、私にボコボコにされるってわかれば、きっとニマのやりすぎなところも治るでしょ?」

「だ、だから俺らと特訓してんのか?」


困惑するレオとヴィンに対し、今更気づいたの?と言わんばかりの表情でテレサは返した。


「そうだよ?女らしい陰湿なやり方でニマを追い落としても良いんだけど、それだと私が嫌な子みたいになっちゃうでしょ?だから正々堂々と力で捻じ伏せたらいいかなって思って」


迷いのない真っすぐな瞳で射抜かれ、レオは変な動悸がした。


「いやいやいや、いいからテレサ!俺は別に大丈夫だから!皆で仲良くしような!な!」

「でも、いつか怪我しちゃうかもしれないし、二人のそんな姿は見たくないもん」

「俺が強くなるから!テレサは物騒なこと考えなくていいから!」


むう、と口を尖らせる。

どうやらニマの過剰なスキンシップから自分達を守るために、テレサは一緒に特訓していたという。

気をかけて貰えるのは嬉しいのだが、彼女は根本的な何かがズレているような気がしてならない。


「とにかく!明日は試験だし、とっとと寝るぞ!七時起きだよな姉ちゃん!」

「そうよ、明日こそはちゃんと起きなさいね」

「わーってるよ!って……あれ、姉ちゃんには言われたくねぇんだが?」

「僕にしたらどっちもどっちだよ。電気消すからね」


「おやすみ、私頑張って強くなるからね」

「お、おう……」


こうしてまた、コロニーの一日が終わった。

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