表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/373

10/5 母、強し?


YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌 10月13日その2 修行編その6 雨の砂浜、君はそこにいた。より、色々お借りしております〜






 カタカタカタ。室内に、キーを叩く音が響く。

 各々家族用に割り当てられたスペースの一つである、渚の部屋。

 薄暗い中、といっても今日は晴れである為窓から入ってくる微かな明かり、そして液晶画面の光源により、作業スペース内はそこまで暗いという感じはない中、黙々と作業に没頭する渚。


 電気は点いていなかったが、当の本人は気にもしていないようで。

 昼過ぎから自室に篭りっぱなしだが、キーを叩くその速度は変わらない。

 画面を凝視したまま、滑らかに渚の指がキーボードの上を走り。


「メシだっつってんだろ――がぁ!!」

「!」


 怒鳴りながら部屋のドアを蹴り開けて室内に突っ込んできた(あみ)に、ピタリとその動きを止める。

 集中していたのもあるが、プライベートフロアの防音機能は高い。

 海の声に全く気付かなかった。


「うぉ、暗ぁっ!?」


 室内の暗さに驚いて、ドア横のスイッチを入れて電気を点ける海。途端に明るくなった室内の様子に目を細め、手をかざしながら渚が呟く。


「…………海姉。なに」

「だから、メシだっつの」


 きょとりと訊ねてくる渚に、呆れたように息を吐いて告げる海。それに首を傾げる渚。

 ついさっき、お昼を食べたばかりのような……? と思いながら窓の外を見て、ベッド側の壁掛け時計を見やり。

 その指針が十九時を指している事、そして自身のお腹の空き具合から、納得したように頷いて。


「…………アップデート終わらせてから、いく」

「どーせ時間かかんだろ〜? い、ま、す、ぐ、だっ!」


 渚の言葉に、ビシリと指を突き付けて海。それにため息しつつエンター(実行)キーだけ押して、渚は海と共に自室を後にし一階(した)へと下りる。


「暗くなってきたら電気くらい点けなよ。目ぇ悪くなるじゃん」

「…………気付かなかった」

「あ、そ。にしても(あんた)、またPC自作したのかよ? 八台に、増えてた気ぃすんだけど?」

「…………父さんのおかげでパーツはある。なら、自作し(つくっ)た方が早い」


 他愛ない会話をしながら、廊下を進む。


「んで、どーよ。アレの製作状況は?」


 にんやりと言ってくる海に、ポツリと呟く渚。


「…………受信データ自動更新。試運転時に支障はみられなかった」

「ふぅん? 順調ならまぁいーんだけどさぁ」

「…………今日、データ追加するヤツがある。……でも、来週の特訓までには、充分に間に合う」


 螺旋階段を下りながら、会話を続ける。


「…………海姉の方は、順調?」

「ん〜? ま、当日までのお楽しみってな〜♪ 浜辺で特訓なんだし、昼飯ARIKAで作んだからさ〜」


 確か午前中は別んトコで訓練だったろ、先生。とつけ足し訊ねる海。


「今日追加するって機能は?」

「…………特訓用ロボ、使用者モニタリング機能付き。なら、実際の対人戦に近いものの方が、より実戦的な特訓が出来る。……その為の録音(トリ)


 そう言って渚が、ポケットから取り出したのは。

 小さなマイクと一つの録音機だった。




 夕食後のリビング。

 帰宅していた他の家族達は二階へと引き上げていった為、今そこにいるのは(むつみ)、海、空、渚、(うしお)の五人。

 太陽(ひかり)はまだ帰宅していない。

 丸テーブルを囲んで座り、食後のお茶で一息ついてから。


「…………まずは、空姉」

「えぇっ!?」


 ポツリと告げられた渚の言葉に、驚いた声を出して慌てる空。それに皆の視線が集まってしまい、結構大きな声が出ていた事に頬を染める。


「い、一番目なんて……恥ずかしいよ……」


 俯いてもじもじしながら呟く空に、不思議そうに海も訊ねる。


「なんで空からなワケ? 段階踏んでくなら、渚からだろぉ?」

「…………私のは整備モード用。後からでも入れれ(組み込め)る。因みに、家庭補助用ロボとしての機能もある。だからお手伝い機能起動時用に、汐のも録音す(と)るから」

「え? 汐のもあるの?」


 じゃ〜先にやる〜と、嬉々として両手を差し出す汐。その手にマイクを握らせ、他の皆は口をつぐみ。

 こくりと渚が頷いてスイッチを入れ。

 静かに録音が始まった。


「おっそうじおっそうじ、楽しいな〜♪ よっごれてるトコは、どこですか〜♪」


 もの凄く楽しそうなその声(歌?)に、ほわりと和む姉妹達。汐のおかげで、スムーズに録音が進んでいく。


「準備はいいですか? それでは、始めます。よろしくお願い致します」


 言いながらペコリ、お辞儀する空。


「よっ! はっ! ほっ! ほらほら〜。もっとガッツリ打ち込んで来なよ〜? まぁだ浅いっ♪ ……っと見せかけたフェイント〜♪ ――からのカウンタぁ〜♪ も〜降参〜? まだまだだねぇ〜♪」


 竹刀まで持ってきて、誰よりもノリノリな感じで海。


「手首を返さない! 腰を落として! そこの右肘、5cm高く! 間合いをあと1秒は早く詰めて! まだ遅い! 今度は早い!」


 まるで目の前に対戦者がいるかのように、ビシリと鋭い声の陸。


「…………省電力モードオン。記録メディアスキャン開始。微調整・修正開始。――終了。マニュアル呼出。バックアップデータ参照……」


 淡々と、整備工程やらを呟いていく渚。

 自分の分まで吹き込み終わり、一旦スイッチを切る。


「んあ? これで終わりかぁ?」


 首を傾げて訊ねてくる海に、渚は左右に首を振って。


「…………後は、母さんの分がある」


 そう呟いた渚の声に答えるかのように、玄関からただいま〜という太陽の声が届き。


「帰ってきたっ」


 その声に嬉々として汐が玄関に駆けて行こうとするが、渚がその肩をそっと掴んで留めさせる。そんな渚を首を傾げて見上げる汐。しかしふと気付いて、そこからそろりと距離を取る。


 その間に誰もいないの〜? と呟きながら、太陽がキッチンに足を踏み入れ。


「ちょっと! 誰なのコレっ!?」


 鋭い声が上がる。


「片付けまでが料理の基本だって、いつも言ってるでしょう!」

「ヤバッ……!」


 その声にげ、という反応をするのは海。

 太陽の夕飯がまだだし、食べてる内にささっとやっちまえばいいや、と思っていたのだが甘かったらしい。

 まさか先にキッチンに行くとは……と思いながらくる〜り、その場でターンして二階へと逃げかける海だが、そうはさせまいと口を開きかけた陸より先に、渚がぼそりと呟く。


「…………母さん。その犯人、海姉」

「ちょ、えっ!? な、渚ぁ!?」


 まさか渚にバラされるとは思っていなかった海が、驚きの声を上げ。その声に即座に反応して、リビングに駆け入ってくる太陽。


「あ〜みぃ〜?」


 うふふ……と、その顔は笑っているというのに、全く正反対の空気が、周囲に満ちる。


「え、えぇっとぉ〜〜?」


 それにはは、は……と笑う海だが、目線は目下逸らし中。

 そんな海ににこり、微笑む太陽。


 それをため息しながら見つめ、〈音消しくん〉をきちっと装着する陸、空、渚、汐の四人。

 太陽の、息を吸い込む音が聞こえ。

 マイクを向け、渚が絶妙なタイミングで録音スイッチを入れた所で。


「お仕置きよ――!」


 久方振りの、太陽の怒声が響き。

 渚が、太陽の「お怒りモード」用の音声が楽に録音出来た事に安堵している、その傍らで。


「あんぎゃあぁ――っ!?」


 生け贄にされた海が、キレのある鉄拳を受けてこれでもかと言わんばかりの、かん高い悲鳴を轟かせた。



売られた海(笑)

母のお仕置きに関しては、助けてくれる者はいない(苦笑)

しかし、音録り回楽しかった♪


YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より、師匠君柄みで色々と


お借りしております

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


さて、後は特訓前日に、かなぁ?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ