表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/373

9/27 石には意思が宿るんだって




「ねー、あみお姉ちゃん」


 ブルー・スカイのホテル。プライベートフロア一階のリビングのソファに座って、ジュースを飲みながらうしおがソファの背にもたれている海に訊ねる。


「んー?」


 それに同じく飲み物を口にしながら、海が汐に声を返す。


「空お姉ちゃんって、何処にアルバイトに行ってるの?」

「……何? なんか気になる事でもあんの?」


 汐のその言葉に、訝しげな視線を向ける海。


 普通の人には〈見えないもの〉を見る目を持つ汐(末妹)の言葉には、何気ないものであっても少々、軽視出来ないものがある。

 それが良い事ならばまだいいが、悪い事であった場合に、こんな風に言ってくれれば早期対処が出来るので、それはとても有難い事だからだ。

 それにそれが汐自身に関係ある事なら、警戒が過ぎるくらいであってもいい、いや、足りないかもしれないのだから。

 いくら〈神殿〉の加護があるとはいえ、それとて万全ではないのだから。


「……悪い事じゃないよ?」


 考えていそうな事を正確に察知して、海を見上げて汐が呟く。それに苦笑しながら一つ息を吐き。


「ふぅん? えっと〜、確か天然石ショップ無限回廊だったかなぁ〜? 今週頭に開店したてのトコで、その日採用じゃなかったっけな」

「天然石……って事は輝石(いし)売ってるお店なんだね、そこ」


 そうそう。商店街を一本入った裏路地の、角にあるお店なんだってさ〜、とつけ足す海。


(……そっか、だからなんだ)


 海の説明を聞いて、納得したように頷く汐。




 たまたま学校から帰る時間と、空お姉ちゃんが仕事から上がった時間が、同じだった時があって。

 その時一緒に家まで帰ってきたんだけど、空お姉ちゃんに会った瞬間、その眩しさに目がくらんでよろめいた。


 空お姉ちゃんの周りを、色んな〈キラキラ〉が、護るかのように包んでいたから。


 特に強く出てたのが、オレンジ色のキラキラ。

 その周りを彩るかのように、赤、青、黄、緑、紫――、様々な形と色のキラキラが、たくさん舞っていて。


 初め見た時はチカチカして目がしばしばしたけど、その事に気付いた〈その人〉が、光を弱めてくれて。

 撫でるかのように、頭に触れて。


 〈触れた〉事で、夜輝石を媒介にその人が〈何か〉わかったから、そのまま一緒に帰ってきたんだけど。


 プライベートフロアに空お姉ちゃんが足を踏み入れた瞬間、役目を終えて周りの景色に溶けるみたいに、それまでお姉ちゃんを包んでいたキラキラが、ふわって消えちゃったんだよね。


 それに、お姉ちゃんの事、護ってくれてたんだって分かって。


 石には〈意思〉が宿るんだって、お父さんが言ってたの。


 だからきっと〈あの人〉は、そうなんだろうなって思って。




「ふふっ」


 その事を思い出しながら、笑っていたら。


「なぁんだよ〜? 隠すとタメになんねぇぞっ」


 怪訝そうな表情で海お姉ちゃんが腕を伸ばしてきて。


「きゃあ〜♪」

「おりゃおりゃ〜! 吐かねぇとこんままだぞぉ〜?」


 ニヤリとした笑み顔で捕まえられて抱きしめられる。

 それに笑い声を上げながら答える。


「素敵な事があったの。でも――、まだ秘密なの〜」

「あぁ? なんだよそれ、教えろよ〜? じゃないと……こーだぞぉ!」


 言って、海お姉ちゃんが更に強く抱きしめてくる。

 それにきゃははと笑いながら、いつか天然石ショップに行ってみたいな、と思う汐なのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ