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☆9/26 西のお山で




 今日も今日とて、ボストンバック片手にラフな格好で一人、ふらりふらりと町を歩く男、青空所在(アリカ)

 今日は西の山辺りを、ぶらぶらと散策していた。


 晴れてはいるが、天気予報で少し寒いと言っていたように、周りの空気がひんやりとしている。

 まだ夏を残す木々の青の香り。澄んだ空気を堪能しながら、山の中を進むアリカ。

 暫し進んだその時、前方から聞こえてきた物音と声に立ち止まる。


「おじさん。もうこの辺にはいないんじゃない?」

「いいや! さっき草をかき分ける音がしたっ! だから絶対にいる! 待ってろ、俺のツチノコ!」


「……ツチノコ?」


 その言葉に、確か伝説のヘビだったっけ? と思いながら、歩き出そうとアリカがその足を一歩踏み出したその時。

 その足が、草地に落ちていた落ち葉を踏んでガサリと音をたて。


「そこかっ!」


 鋭い男声が聞こえたと思ったその時には、ビュルルッと風を切って飛んできた縄に、すっぽりと捕まえられた後だった。


「遂に捕えたぞ俺のツチノコっ!」

「うそっ、ホントに??」


 確かな手応えを感じて縄を引っ張りながら声を上げ、ガサガサと草をかき分けて来る者と驚きの声と共にその後を追う者が、草をかき分けた先にいたのは。


「やぁ」


 縄に捕えられたまま、穏やかな笑みを向けている栗毛の男、アリカだった。


 ツチノコじゃなかった……その事に落胆してがくりと肩を落とす男。それに、そんな簡単に見つかるわけないわよね、とやれやれと肩を竦める少女。


「すまない」


 暫ししてから、アリカの身体から縄を外しながら男は川崎省吾と名乗り、傍らにいる少女、日出まつりもぺこりとお辞儀しながら名乗った。


「縄にかかるなんて、凄く面白い体験が出来たよ」


 それににこやかに言葉を返しながらアリカも名乗り、ふと訊ねてみると彼らはツチノコを探しているのだと言い、逆に訊ねてきた。「こっちにツチノコが来なかったか?」と。


 それにん〜? と暫し考え右を見て、左を見て。

 顔を正面に戻してすまなさそうに苦笑を浮かべて、アリカは呟いた。


「たぶん、此方には来てないよ。力になれなくてごめんね」

「いや、いいんだ」


 それにぽつりと呟いた後、「ツチノコを探し隊に入隊しないか」と川崎が訊ねて来たが、アリカが自分は『旅人』でうろな(ここ)に定住している訳じゃないから、と言うと肩を落として息を吐き。

 しかし、次の瞬間にはガサリという物音を聞き付けて、ツチノコ探しに意気揚々と戻る川崎なのだった。


 それを見て、川崎をサポートすべくひょいっと枝の上に飛び乗ったまつりににっこりと手を振って、アリカはツチノコを探す二人と別れたのだった。




「ツチノコかぁ〜。いるんだったら、姿を見せてくれたら嬉しいな〜」


 おーい、ツチノコ〜? と川崎の真似をしながら、山の道を歩いていくアリカ。

 登山用の道とは違い、一本逸れた所を進んでいく。

 その道が転落したりしないように、ロープで整備されているのを不思議そうに見つめながら、


「昔はここ、ロープなんてなかったハズだけど……」


 そう呟いて立ち止まり、あれ? っと思い首を傾げてから、


「まぁいいか」


 ふわんと笑んで、栃の木がある広場へと坂を登っていく。

 暫し登ると、葉をたくさんつけた栃の木が見えてきて。


「うん。凄く綺麗な景色だね」


 栃の木の幹に手をついて、夕陽のオレンジに染まる景色を、瞳をキラキラさせて堪能するアリカ。

 どれだけ眺めていたか分からないが、暫ししてからその根元にちょこんと腰かけ幹に頭を預ける。

 この前同様、買いすぎたビニール袋の中からお弁当を取り出して、そこで晩ごはんを食べ。ゴミはちゃんと袋に入れてから、マイボトルのお茶を飲んで、ふぅと一つ息を吐き。


「どれだけの歳月を過ごしたら、ここまで立派になれるんだろうね。ねぇ? 栃の翁」


 ふと、呟かれた言葉。

 それには普通ならば、答えなど帰ってくる筈はないのだが。


 ――随分、久方ぶりに見る顔じゃのう。


 サワサワと枝葉が揺れ、アリカの耳に、いや頭に直接響くその『声』が届く。

 それに驚く事もなく、アリカは更に言葉を紡ぐ。


「あれ? そうだったっけ? ……そうだった、かなぁ?」


 言いながら、顎に手を添え小首を傾げるアリカ。

 しかしそれも一時の事で、特に気にもする事なく話を続ける。


「変わりはない?」


 ――暫しは騒がしかったが、それも最早鎮まっておる。穏やかなものじゃよ。


「そっか。ならまぁ……問題ない、かなぁ……」


 栃の翁からの返答に声を返しながら、ずるりと体勢を崩すアリカ。身体から力が抜けて、完全に幹に身体を預けた状態。コクリと傾げられる顔、その弧を描く瞳の目蓋が、ゆるりと下がってきていた。


 ――今宵は寒い。ここで眠ると風邪をひいてしまうぞ。


「そう……なんだ……けど、ね……」


 頭に直接響くその声は、まるでアリカを眠りへと誘う、柔らかな風に枝葉を揺らす森の木々達の子守唄のようで。

 抗う事なくあっさりと、アリカは眠りの淵へと落ちた。


 ――仕方ないのう。


 それに、声をかけるのを諦めた栃の翁は、周辺の木々に呼びかけ枝葉をサワサワと揺らして、眠るアリカの上へと落ち葉を降り積もらせ。此方をひっそりと窺っていた、小さなもの達に声をかける。


 ――すまんがコレが目覚める少し前まで、ぬくもりを分け与えてやってくれんか。


 栃の翁のその言葉に、茂みの奥から出てきたのは、ウサギにリス、シカといった動物達。

 そろそろと、落ち葉まみれになりながら眠るアリカへと近付き、寄り添うようにして傍で丸まる。


 それに、落ち葉に埋もれるアリカの唇が微かに笑みの形を作ったが、その事を知っているのは、悪戯に木々の枝葉を揺らす、通りすがりの風だけだったのだとか。




「……ん……」


 木漏れ日の落ちる中、目を覚ますアリカ。

 周囲に積もった落ち葉に苦笑しながら、目を擦り。


 ――よく眠れたかのう?


「うん。ありがとう、栃の翁」


 上から降ってきた声に微笑んで答えるアリカに、栃の翁は呟く。


 ――今度からは、風避けのある所で眠るんじゃな。


 翁のその言葉に、キョトンと栗色の目を瞬いてから、アリカはポンと納得したように両手を打ち合わせ。


「あぁ、そっか。何処かで、宿を取らないといけないんだった」


 今更ながらに呟いた。



サバイバルスキル保持は当たり前の人(笑)

たぶん、川で半裸で身体拭いてから行くんだ


諸事情によりブルー・スカイに泊まれないので、アリカ君が泊まるトコはとにあ様の所のうろや旅館かなぁ〜?と思っていたり


栃の翁としゃべれる(知り合い?)みたいです、ウチのアリカ君(笑)


ここもと様のうろな町でツチノコを探し隊より、川崎省吾君、日出まつりちゃん


零崎虚識様のうろな町〜僕らもここで暮らしてる〜より、栃の木の翁、動物さん達


お借りしております

おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ



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