9/25 渉先生観察( データ収集) 開始
YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌 10月13日その2 修行編その6 雨の砂浜、君はそこにいた。
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くもりの日の昼休み。
中庭の人気の無さそうな場所を選んで、そこに腰を下ろす渚。
端末をいじりながら、ビニール袋の中から取り出すのは、クリームパン。
何故クリームパンかというと、エネルギー消費過多故に、効率的な糖分摂取が望ましいが故だ。
好きだからというのを差し引いたとしても、幸福値上昇による作業効率の良さは他を抜いてぐんと良い為、たかがクリームパンといえど軽視出来ないレベルだった。
海が毎朝持たせてくれるお弁当があるにはあるが、それはなんと、寝坊して朝食もしくは昼ごはんを忘れた生徒に、言い値で売買されていたりする。
そのお金は新たな発明品製作の費用になっていたりするのだが、勿論先生達には内緒である。
今渚が見ている端末の画面に写っているのは、製作中の家庭用ロボ。
〈ブルー・スカイ〉のホテルにあるプライベートフロアの広さを見て、ある程度補助的な事が出来るお手伝いロボがあれば、と考えたが故のものだ。
しかしそれは今や、身体が鈍るとの海の要望により、トレーニングマシンと化してきているが。
「…………もう少し軽量小型化した方が、小回りはきく」
もぐもぐしながら呟いて、端末に数値を打ち込んでいく渚に、一つ声がかけられる。
「青空。お前はまたこんな所で、一人で食べてるのか?」
その声に渚が頭を上げると、視線の先に何処か疲れた感じの渉先生の姿があった。
それを怪訝に思いながらも、ボソリと呟く渚。
「…………昨日は天音と食べた。先週は、隆維と涼維。……今日は、集中したかったから」
「集中?」
って何に? と首を傾げる渉に、クルリと画面を反転させて見ていたものを見せる渚。写っているのは家庭用ロボの3DCGモデル。
「これは……ロボット?」
「…………師匠のホテルのプライベートフロア、もの凄く広い。だから家事補助用に、お手伝いロボ製作中」
画面をまじまじと眺める渉に、ぽつりと説明する渚。その言葉に、何とは無しに訊ねてみる渉。
「青空って身体を鍛える道具とかって作ったことある?」
「…………このロボが、海姉のせいで今まさにそれになりつつある。……何かに必要?」
首を傾げて訊ね返す渚に、渉はかいつまんで説明する。
司先生のお父さんと決闘をしなければならない事。
それが行われるのは十月の末週の二十七日だという事。
その勝負に勝つ為に、一ヶ月足らずで身体強化をしなければならないという事。
その話を聞き終えた渚の瞳が、キランと光り。
「…………面白い」
ボソッと呟いて画面の位置を元に戻すと、高速で数値を打ち込み出す渚。
「…………データ許容量の拡大とそれによる処理力低下を防ぐ為の個別拡散。演算機能の変換とパターンブロックの増殖。AI設定の微調整及び対象者の感情思考予測追尾機能設定……」
「お、おい青空……?」
目の前でいきなり始まった事に、気圧され気味に渉が声をかけると。
「…………先生直立」
「!?」
ビシッと指を向けて呟く渚に、条件反射的に「きおつけ」する渉。
それを確認すると、ポケットから取り出した小型端末から赤外線を放射して、渉の頭の先から爪の先までをムラなくスキャニングする渚。
「な、何をしたんだ?」
目をパチパチさせながら呟く渉に、ぽつりと渚。
「…………先生の身体強化が目的だから、先生に合わせた最高のトレーニングマシンを作る為、現在の能力値データが要る。それをベースに向上を図るよう設計するから」
「なるほど」
顎に手を添え頷く渉に、取り合えずだから、後で精密スキャンする為に五限目の休み時間に保健室集合。と告げて端末をいじりながら、渚は中庭を後にするのだった。
その後、保健室の寝台一つを占領して〈測量くん〉で隅々まで測定された渉が、手間のお礼をどうするかと訊ねた所、測定機器運搬要員に駆り出されていた海が、丁度良いやとばかりに呟く。
「どうせなら、アスリート用スペシャルメニューの
実験台になってくれよ♪」
訓練開始から訓練後までの経過も分かるし、それを元に更に改良出来りゃあ一石二鳥じゃん♪ ともつけ足しニヤリとする。
どのみち継続収集じゃないと意味がない、と渚が呟き、肌に直接貼るタイプの〈測量くん・ミニ〉を渉に手渡す。
それを受け取りながら海の提案を快く了承する渉だったが、この時はまさか、あんなモノを食べさせられるハメになるとは、思いもしていなかったのだった。
渉先生観察開始〜(笑)
YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より、渉先生、司先生
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、隆維くん、涼維くん、天音ちゃん
お借りしました
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