8/25 バザー・昼過ぎ
YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より
8月25日 その4 紅き誓いを胸に
朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町より
8月25日
Part 03 慕われし白
とリンク、合間話です〜
昼時とあって、賑わうARIKA出張店。
海と汐が忙しく動き回る中、知った声がかけられる。
「海!〈ふわふわアメリカンドック〉二つと、〈夏野菜のうまとろスープ〉一つ頼む!!」
その声に振り返ってニヤリ。
「あいよ!! お、小梅っちに、ユキっちじゃねえか♪ 果菜ちゃんも昨日ぶりー。汐――、お皿二つとカップ一つ、取ってくれー」
海のその声に、先に注文を受けていたお客さんに商品を渡して、パタパタと汐が駆けて来ながら告げる。
「はいはーい。あ、司先生に、ユキお姉ちゃんだー♪」
お店に来てくれていたのは、司先生達だった。
いらっしゃーいとにこにこ言って、司先生のお腹を見て、
(ピンクとブルーのキラキラだぁ〜っ!)
と思いながら声を上げる。
「司先生のお腹のキラキラ、二つに分かれてる! 双子ちゃんおめでとー」
「ありがとうな。ユキ達も好きなのを頼んでくれよ」
そう言う司先生の言葉を聞きながら、海は内心驚いていた。
(なにっ!? 小梅っち(子供体型)が赤ちゃん(子供)を産むだとっ!?)
そんな海の心を見透かしてか、司先生から声がかかる。
「海、お前今、もの凄く失礼な事を考えているだろう?」
「えぇ〜? なんも〜? あたしはタダ、めでてぇなぁ〜って思ってただけだよ〜ん? なんなら、めでたいついでに夫婦割(二割)にしてやんよ〜?」
あっはっは、と笑う海を訝しげに見つめつつ、二割ならと、司先生は商品を追加するのだった。
汐の手前、ライブでの非礼を詫びてから訊ねる海(じゃないと後が面倒)。
「ユキっち達は何にする? ってか、また凄い格好だぁねぇ〜? 汐に聞ーたけど一番君、悶絶して倒れるんじゃない?」
「そ、そんな事は……皆さんに言われるんですけど……そんなに凄いですか?」
海の言葉に、恥ずかしげに頬を染めて呟くユキちゃん。白のゴスロリ服は確かに凄いけど、と思いつつ笑って海。
「まぁ、可愛いんだからいーとは思うけどねぇ〜。っと」
告げて、その額にすぃ、と手を添える。
「えっ!?」
驚くユキちゃんを他所に、自分の額にも手をあててうーんと唸り。
「熱はないみたいだけど、体調良くなさ気だな? あんま無理すんなよ、ユキっち。温かいのにしとく?」
そう言った時にはもう額からは手が離れていて、先の注文品を詰める作業に戻っている。
早業だった。
たぶん、気付いている人はいない、はず。
じゃあ、それでお願いします、というユキちゃんに温かいのを渡した時に、バチリと目が合った、傍らに立つ同じくゴスロリ(此方は赤)の少女、ベルっち(店先での自己紹介会話が聞こえていた為)には、ニヤリとされたが。
次に、司先生に促されて悩んでいるベルっちへと声をかける海。
「んで、ベルっちはなんにする?」
「ベ、ベルっちっ!? それはまさか、ベルの事か? ……ベルっち……ま、まあいいだろう。そう呼ぶ事を許そう」
海のその呼び名に一瞬驚くが、ごほんと咳払いしてから、そうだな、とガラスケースの中を眺め一つ二つ商品を上げ。
ある一点で、ピタリと動きを止める。
「こっ……これはっ!」
赤の瞳を見開いて叫んだベルっちの前には、〈大出血!ベリーレッドホワイトサンデー〉(赤いベリーの酸っぱさと香辛料の激辛、それに白の練乳ソースとホイップクリームがふんだんにかけられた、辛さ酸っぱさが甘さとベストマッチした、やみつきサンデーが売り文句の、海の渾身の一品)が、どどんと置かれていた。
ベルっちのその顔に、ニヤリとする海。
「お、ベルっちお目が高いねぇ〜。それ、ARIKA出張店の限定。イチオシ品だよ〜♪」
ニヤリとする海に、同じくニヤリとした笑みを浮かべるベルっち。
「ほほぅ。そこまで言うのならば、相当のモノなのだろう。……しかし、ベルは味にはうるさいぞ?」
挑戦的な、燃えるような紅のその目に、臆する事なく更に笑みを深めて海。
「上等♪ それにそんくらいじゃなきゃ、作り手としても張り合いないからねぇ〜。損はさせねーよ〜?」
「……いいだろう。ならばこのベル・イグニスが、お前の腕、確かめさせてもらう!」
笑みを含んだ黒と紅の瞳が、交錯し合うのだった。
昼食を取る為、一端体育館外のテントに行く一向を見送りながら、呟く海。
「お揃いのゴスロリ服で、まるで姉妹みたいだよなぁ、あの二人。ユキっちが姉でベルっちが妹ってトコ?」
それに汐が違うよと言う。
「えー、違うよ〜。ベルのお姉ちゃんの方がお姉ちゃんで、ユキお姉ちゃんの方が妹さんだよ〜」
「どー見ても、反対にしか見えないんだけど?」
首を捻る海に、汐はくすくすと笑って。
「絶対、ベルのお姉ちゃんのがお姉ちゃんだよ。だってベルお姉ちゃんの〈キラキラ〉、炎の翼、一対のそれで、ユキお姉ちゃんを優しく包んでるもん」
すっごく綺麗であったかいんだよ〜、と笑う汐の頭に。
てぇい、とチョップが落とされる。海からの攻撃だ。
「いたぁ!?」
突然のそれに声を上げ、頭を押さえて踞る汐。そのまま恨めしそうに海を見上げるが、海はニヤリとした笑みのまま告げた。
「〈力〉の事、むやみやたらといっちゃあダメだって、分かってんだよなぁ?」
「あっ!」
それに今更口を押さえる汐だが、既に遅し。
海の笑顔が、陸のお怒りモードなみに恐い。
〈力〉の事は、言ってはいけない事だと、言い聞かされている。
それ故に、汐のこの反応と海のこの対応は、ある意味当然といえば当然だった。
「でっ、でも、〈良いこと〉のなのに〜〜っっ! それにそれに、こんなに賑やかなんだもん、誰も聞いてる人、いないと思うの〜」
あわあわしながら、えへ、と苦笑を浮かべて告げる汐だが、海の笑顔は変わらない。
「あんた、帰ったらおしおき決定な」
「ええぇ〜〜っっ!!」
海の無慈悲な宣告に、汐の情けない声が、賑わう会場内に上がるのだった。
海、失礼(苦笑)
ごめんなさい、司先生
キラキラがピンクとブルーなのは、女の子と男の子だからですよ〜
ゴスロリ姉妹って可愛いですよね〜♪
YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より、司先生
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より、ユキちゃん、賀川さん
朝陽真夜様の悪魔で、天使ですから。inうろな町よりベルちゃん
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