8/25 バザー・十時頃・戦場になる前の…
とにあ様のURONA・あ・らかると 8/25 バザー①とリンクってます
「さぁ〜ってと♪ テースティングも兼ねて、そろそろ揚げ物揚げだすかぁ〜」
バザーが始まって、賑わう体育館内を見ながら呟く海。
今日は二人しかいないので、売り場に汐一人だけ残すのはどうかとも思ったが、商店街の望月さんとPTAの吉田さんがそれとなく見ていてくれるというので、お礼を言って外へと出る。
セッティングはバッチリなので、空いているコンロに鍋を置き、油を注いで火を点ける。
安全性を考えて、電気で揚げられるフライヤーにしようかとも思ったが、揚げ物はやっぱり油だろ、という事で、油で揚げる方を採用。
火の取り扱いに十二分に注意しながら、温まるまでの間に具を用意する。
鍋には十字の間仕切りがあって、最高四種同時に揚げられる。
簡易冷蔵庫から取り出したトレイから、どれを揚げようかと海が悩んでいると。
「〈ふわふわアメリカンドック〉と〈唐揚げ〉と〈串カツ〉と〈コロッケ〉がいいにゃ」
「ほい、ほいっと♪」
間近で声が聞こえ、それに反射的に答えてひょひょいっと、調度良い温度の油の中に各々投入してから、あれ? っと思って海が顔を上げると。
目の前に、少女がいた。
猫目を爛々と輝かせた、茶髪の少女が。
ARIKAの文字がプリントされた、ケーキ箱を抱えて。
鍋の中を、じっ……と見つめている。
その顔にふと覚えがあって、首を捻りつつ考える海。
(……どっかで見た……よなぁ? えーっと)
シュワシュワ、鍋から良い音と良い匂いが立ちこめてくる。
ジュワッ、と音が変わった所でクルリと表裏を返し。
ポン、と手を打って呟く。
「あぁ! この前のライブん時にARIKAに来てた、千秋のカノジョ?」
「にゃにゃっ!?」
海の言葉に、ボンッと顔を朱に染める少女。
その反応に、にやりとする海。悪戯っ子モードだ。
「あっれ、違うのかぁ〜? 随分親しげな感じだったけどなぁ〜?」
「ち、千秋くんとは、そっそんにゃんじゃ……」
それを知ってか知らずか、頬を染めたまま目をキョロキョロとさせる少女。
「ふぅ〜ん? お似合いだと思うんだけどなぁ〜」
「お、おにあ……〜〜っっ! にゃ、にゃ――っ!! そっ、そんにゃ事言ってないで、早くひっくり返すにゃっ! 焦げるにゃ!」
「だ〜いじょうぶだってぇの〜。この海ちゃんが腕ふるってんだから。ほいほいっと♪」
頬を染めてにゃーにゃー言う少女を気にする事なく、海はクルリと表裏を返し。
い〜い感じ♪ と油切り台の上に、きつね色のそれらを揚げていく。
「よしよし、状態良好〜。このままイケそーだな♪」
さて、んじゃ人入り見て揚げてくかぁ〜と呟く海に、声がかけられる。
「〈それ〉は、どうするのにゃ?」
今しがた揚げた四種の揚げ物を指差して少女。それに答える海。
「ん? これは〈試し揚げ〉のだから、店頭には並ばねぇけど?」
「そんにゃっ!?」
海の言葉に、あからさまにショックを受ける少女。それはあんまりにゃ! と声を上げる。
「これだけ見せ付けておいて、それはないにゃ! それに、それを選んだのはあっしにゃろっ!?」
拷問だにゃ! 生殺しだにゃあ〜! と叫ぶ少女にやれやれと海。
「そこまでゆーならやんよ? 試し揚げので悪いけど」
「本当かにゃっ!?」
海の言葉に、ぱぁっと顔を輝かせる少女。しかし直ぐ様その顔を悩ましげなものへと変えて呟く。
「でもそれも元は売り物にゃろ? タダで貰うのは気が引けるにゃ〜」
「別にいーけど? あたしらの腹に入る分が、アンタの腹に入るのになったってだけだし」
海の言葉にうー、と悩む少女。暫ししてからポンと手を打ち。
「そうにゃ! 体育館(中)に孝人がいる筈にゃ! あっしから言付かったって言ったら、絶対払ってくれるにゃよ!」
「ま、いっか。そこまでゆーなら、有難く頂いとくとするかねぇ」
少女の言葉に苦笑して海は告げ。じゃあ、コレはもうあっしのもんにゃ! とカップに入れられた四種の揚げ物を、いそいそと持っていく少女のその後ろ姿に、海が声をかける。
「あ、ちょっとアンタ、名前はぁ? 幾らなんでもそれねーと、取立ても何も出来ないんだけど」
「そうだったにゃ」
それに呟いて立ち止まり。夏の陽射しを跳ね返しながら、にっこりとした笑顔で少女は告げた。
「あっしは鍋島サツキだにゃ! 孝人は稲荷山孝人っていうにゃよ!」
そう言って駆けていこうとする少女、サツキに、にやりとして海が声を投げた。
「サンキューサツキー。あぁ、千秋によ〜ろし〜くなぁ〜?」
「っ!? だっ、だからっ、そーゆーのじゃないのにゃああぁぁぁっ!!」
夏空に、少女の叫びがこだました。
暫し内と外を行ったり来たりしながら、揚げ物に勤しんでいると。
「おはよー。あみちゃん」
「ちゃおー」
との声がかけられ、そちらを向くと。
ノブっちと最近ARIKAに宿題をしに来るミラと、宇美がいた。
「お。ちゃおー♪」
それに声を返し。
「おはよう。元気、そうね」
若干引き気味の宇美に、にやりとして。
逃げられないように、その肩に腕を回してから呟く。
「よー、宇美ぃ? 今日はノブっちとデートかぁ?」
「! そ、そういう訳じゃ」
ドキリとして、声を上げかける宇美に囁く海。
「隠さなくってもい〜んじゃ〜ん? あたしとアンタの仲なんだしぃ〜? 大体、ノブっちどーせ気付いてねーんだろぉ〜?」
「う……」
これだから海は苦手なのよ、と言いたげな顔をする宇美に、にししと笑って。
「アンタからいかねーと、ノブっち気付かねーまんまだろ? そこでどう? このハートケーキとかさぁ♪ 今日のお礼にってんで、いっちょどーよ?」
「は、ハートってそんな、流石にあからさますぎじゃ……」
「宇美?」
声を上げた宇美を、不思議そうにノブっちが見つめる。それに、なんでもねーよーと手をヒラヒラさせて。
クルッと、ノブっちには背を向ける形で呟く。
「ど〜せバザー(これ)に誘ってくれたの、ノブっちの方なんだろ〜? それこそ、然り気無く渡せるチャンスじゃ〜ん? 今日はありがと、ってさぁ」
「だ、だけど、でも……」「わかるように(ハート)でも、スルーしかねねーんだよ? なんせノブっちだかんなー。でも、やってみるだけならタダだろ〜?」
「うぅ……」
そんな事を、数分間繰り返し。
「まいどあり〜♪」
ニカッと笑って、海がそう言った時には。
宇美の手には、ハートケーキの入った袋が握られていた。
サツキちゃんはこの後、
弥塚泉様のばかばっかり!
8/25『Re:今なにしてる?』に続くのかな、と思ったり
可愛いサツキちゃんが書けて満足ですが、孝人君おサイフ係りにしちゃってすみません…
そして海、押し売りだ(笑)
いやでも海ちゃんなりに、宇美ちゃんを応援しているんですよ?
寺町朱穂様の人間どもに不幸を!より、サツキちゃん、孝人くん
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、千秋くん、ノブくん、宇美ちゃん、ミラちゃん
お借りしております
おかしな点等ありましたら、お知らせくださいませ




