8/24 肝試し、その後
肝試しが終わっても、まだワイワイと大勢の人達で賑わう広場。
そんな中で渚は一人、ある人物を探していた。
きょろきょろ、辺りを見回して探すのは、白い髪に赤い瞳の少女。
夜の暗がりの中、その白の少女はすぐ見付ける事が出来たのだが。
「………………」
声をかけるタイミングが掴めず、どうしたものかとじっ、と白の少女、ユキを見つめる渚。
暫し見つめていると、視線に敏感そうな彼女がくるっと此方を振り返り。
途端に晒される、血玉の赤の瞳。
「っ!」
それにちょっとドキリとするが、そっと歩み寄ってからすぅと息を吸い込み、
「…………あ、あの」
勇気を出して声をかける。
「はい?」
それに、小首を傾げる白の少女。
暗闇の中、白と赤のコントラストは良く映えて。
立ち尽くしたまま、渚がなんと言ったらいいかわからないでいると。
「渚ぁ? 何してんだよ? ――あ。」
此方に歩いてきていた海が声をかけ、渚の目の前にいる少女、ユキに気が付いた。
そのまま、なんとも言えない微妙な空気が流れるかと思われたが、
「……あー、え〜っと、こ、こんばんは」
「あ、はい。こんばんは」
頬を掻きつつ夜の挨拶。それに、ぺこりとお辞儀して挨拶を返すユキ。
そうして訪れる、沈黙。
しかしそれを破ったのは、黙っていた渚だった。
「…………あ、あの時は、その……ごめん、なさい。間違えたから、謝る。…………っ、そ、それじゃ」
「あっ……」
それだけ言って、ユキが止めるのも待たずにススス……っと離れて行ってしまう。
「あははははっ!」
それに、堪えきれずに海が吹き出し。
赤の綺麗な瞳を見開いてぱちくりと驚いているユキに、目尻に溜まった涙を拭いつつ告げる。
「あぁ、ごめんごめん。渚のアレ、恥ずかしいだけだから許してやってよ。――ってか、あたしもアンタには謝らないと、だしね」
「え、あの」
何事か言おうとしているユキを制して、ちゃんと向き直って姿勢を正し、すっと頭を下げる。
「この前はホンっトごめん。折角来てくれたのに、あんな態度取っちまって」
「あ、頭を上げてください海さん。先に名乗りませんでしたし、あれは私も悪かったですから」
慌ててそう言うユキに促され、そろりと頭を上げる海。その顔には苦笑が浮かび、対面のユキの顔にも、同様に苦笑が浮かんでいる。
くすっ、と二人して笑い合い。
「よかったらまた来てくれよ。そんときゃ、うんとサービスするからさ」
ニカっと笑って告げる海に、ユキもこくりと頷いて。
「そんじゃ帰るとすっかなぁ〜。明日の準備もある事だし。んじゃまたな〜ユキっち♪」
ヒラヒラと手を振って、渚を追って肝試し会場を後にする海なのだった。
肝試しからの帰宅後。
明日のバザーの為、早々に寝る支度を整えた海は、リビングで髪を乾かしつつ、ふと気付いて声を上げた。
「あ、そだ忘れてた! 汐〜」
それに、なぁに〜? と渚と一緒にお風呂から上がってきた汐が声を返し、銀の鎖を揺らしパタパタと足音を響かせて、ひょこっとリビングに顔を出す。
「…………汐。ちゃんと乾かさないと、風邪ひく」
その後を追って、ドライヤーを携えた渚が、リビングへとやってくる。
ソファーに座り、髪を乾かして貰いながら海に視線を投げる。それを受けて話始める海。
「明日、バザー行くんはいーんだけどさ」
「? うん」
海にしては歯切れが悪い。一回決めたら、後からとやかく言ってきたりはしないというのに。
それに不思議そうに小首を傾げる汐。
そんな汐に、苦笑しつつ海は爆弾を落とした。
「肝試しで拓人っちに会ったんだけど、そん時、『登校日に来れなかったようですし、出来てる分だけでも持ってこさせてくださいね』って笑顔で言われちまってさ〜」
「はうぅっ!」
海のその言葉に、衝撃を受ける汐。
あわあわと顔を右往左往させる。
「……まさか汐、やってねーの……?」
汐のその態度に、自分の事は棚に上げ、そう問うてくる海に、
「違うもんっ! 汐、海お姉ちゃんみたいに、末日徹夜とかで終わらさせたりしないもん! それに、今年はセリちゃんやべるべるちゃん達と一緒にやったから、もう殆んど終わってるもんっ。……ただ、ちょっとだけ出来てないのがあるだけ、だもん」
一気に言ってぷいっとする汐だが、渚に動かないでと言われ元に戻して俯く。
汐に言われた事にあはは〜と笑いつつ、訊ねる海。
「んで、出来てないってのは?」
「うー……。読書感想文と、自由研究……」
渋々答えた汐は、どーしよう、と悩む。
それを傍らで聞いていた太陽が苦笑し告げる。
「あら、海より全然余裕じゃない。海なんて、末日までぜ〜んぶ、真っ白だったものねぇ?」
「あ〜はいはい。読書感想文なんて、テキトーにちゃちゃっと書いちまえばいーんだよ」
太陽の皮肉をサクッと流して告げる海に、う〜ん、でも〜と悩む汐。
「はう〜〜っ。今日は眠れないかもなの……」
悩みつつ呟いた汐に、汐の髪を乾かし終えた渚がボソリと告げる。
「…………大丈夫。自由研究の題材なら、ある。だから眠れないなら、私が一緒に寝てあげる」
「え? 渚お姉ちゃん?」
渚の声にきょとんとして小首を傾げる汐だが、渚は太陽と海をじーっと見つめ。それを小首を傾げつつ汐が見やった所で、ひょいっと汐を抱き上げて、渚は雑魚寝用の寝室へと歩いていってしまう。
「え? え? 全然わかんないよ? …………、お母さん海お姉ちゃん、おやすみなさ〜い?」
それに手をパタパタして静止を試みる汐だが、渚の歩みは止まりそうになかったので、太陽と海におやすみの挨拶をする汐なのだった。
寝室へと遠ざかっていく二人を見つめ、笑いを堪えながら海。
「渚、一人で寝んの、怖いんだな」
「怖がりなのわかってるのに、あんたが肝試しになんか連れてくからでしょうに……」
それに、やれやれと太陽はため息を吐き、苦笑を浮かべるのだった。
抱き枕よろしく、渚にぎゅうっと抱き締められたまま眠りに就いた汐が、その日見た夢は。
読書感想文と自由研究のオバケ(?)に「ちゃんとやってね〜」と、ぎゅぎゅ〜っと抱き締められる夢だったのだとか。
さて、汐ちゃんは宿題終わらせられるかな〜?
そして暴露される、海の黒歴史(苦笑)何故に…
実は海ちゃん、桜月りま様のバザー回でも謝ってます(笑)
ウチの海ちゃんに二回も謝らせるなんて、ユキちゃん凄い人なのかも?
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
ユキちゃん
お借りしております
YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より
拓人先生
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、芹香ちゃん、鈴音ちゃん
お名前だけですがお借りしております
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ




