8/23 贈り物
時雨ちゃんの先導のもと、森の家からの帰り道を歩く三人。
朝来た時とは違い、日が傾き、徐々に夜へと近付いていく森の中。
夏の為、四時前ならばまだ明るいといえば明るいが、生い茂る木々の枝葉によって出来た影により、実際よりも若干暗く感じる。
初めこそ、鼻歌を歌いつつ時雨と共に、ユキと賀川の前をてくてくと歩いていた汐だったが。
「…………」
(……なんかイヤなの……)
誰かが傍に居てくれているという安心感に、ちょっぴりの恐怖感が、ぴこっとその頭を出し。
ススス……と、すぐ後ろを歩いていたユキの側へと寄り添って。
「手を繋いでもいい?」
と、上目使いにお願いする汐。するとそれに笑みを向けて、
「いいですよ」
と、汐へと手を差し出すユキ。右手でユキの手をそっと握ってから、斜め後ろを歩いていた賀川を振り返り、
「賀川のお兄ちゃんは、……だめ?」
コテン、と首を傾げて訊ねる汐。それに微苦笑を浮かべ、
「いいよ。ほら」
歩調を合わせ、手を差し出す賀川。それを、お礼をいってきゅっと握る汐。
三人、横一列になって森の中を歩く。
右にユキ、左に賀川に繋いでもらって、それがなんだか、とっても嬉しくて。つい、呟いてしまう汐。
「覚えてないけど、お母さんとお父さんと、繋いでるみたい」
「えっ!?」
「えぇっ!?」
それに、何を思ったか頬を染める二人。
そんな二人に「ど〜したの〜?」と、気付かないフリをしながら、繋いだ手は離さずに、森の出口へと歩みを進める汐なのだった。
それ以降は何事もなく、無事森を抜けて。
「時雨ちゃん、ありがとうね」
「なぁ〜」
一緒に行ってくれた時雨に汐がお礼を言うと、時雨はひと鳴きして、町の方へと走り去り。
「汐〜〜」
「あ、空お姉ちゃんだ。ユキお姉ちゃん、賀川のお兄ちゃん、またね〜」
調度迎えに来ていた空の元に駆け寄ながら、ユキと賀川にそう言って手を振る汐だが、
「あ、忘れるトコだった!」
自身の影でほわりと仄かに輝いた夜輝石に、ふと昨夜の事を思い出し。
「ユキお姉ちゃん、賀川のお兄ちゃん、待って〜!」
車に乗り込もうとしていた二人を呼び止め。
「どうしたんだい?」
「汐ちゃん? どうしたんですか?」
小首を傾げて訊ねて来る二人の側に寄って、首から下げていたペンダントの装飾の蓋部分をキュポっと開けて。
中から出てきた様々な形の夜輝石の中から、先端部分がくっついた、双涙型のものを取り出し。
先端部分でえいっと割って、それを一粒ずつにしてから、
「夜輝石ね、あげる。手、出して?」
互いを見やる二人を促し、手を出させる。
ユキと賀川、二人の手にそれぞれ、涙型の夜輝石と共に汐は自分の手を重ね。
「イルカさんの加護がありますように」
と言って、夜輝石からイルカの絵の〈キラキラ〉を、ユキに、賀川に、受け渡す汐。
ふわり、風が舞い。
汐の手を伝って、夜輝石の中の〈イルカさんのキラキラ〉が、ユキに、賀川に巡り。巡った分の互いの〈キラキラ〉が、夜輝石の中へと吸い込まれていく。
それをちゃんと見届けてから、汐はそっと、二人の手から手を離し。
「え……えっ!?」
「……い、今の……って!?」
驚き目を瞬く二人に、汐はにっこりとした笑顔を向けて。
「それじゃあまたね! ユキお姉ちゃん、賀川のお兄ちゃんっ」
今度こそちゃんと挨拶をして、手を振って。
汐は、空と一緒に家の帰路へとつくのでした。
願わくば、道行く未来に幸、多からんことを…
(元)お見舞い話、これにて終了です〜
色々書くことが出来て、満足ですっ♪
素敵な機会を与えてくださいました、桜月りま様に精一杯の感謝を
ありがとうございましたっ
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
ユキちゃん、賀川さん
とにあ様の時雨より
時雨ちゃん
お借りしてます
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
さて、明日は肝試しです?




