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8/21 ライブの夜




 月と星が瞬く中、その日その夜、海の家ARIKAの前で、DQN'sのライブが行われる。


 そのせいか、昼以降からの客入りが半端ない程で。

 ライブ前からかなりの忙しさとなっていた。



「うぁ〜〜っ! めっちゃ忙しい〜〜っ!」

「つべこべ言わない! い〜事じゃないの。相乗効果でどっちも繁盛してるんだから。嬉しい悲鳴だわぁ〜」


 ガッシャガッシャと生クリームをかき混ぜる(あみ)に、うふふ〜と太陽(ひかり)

 微妙に笑いがハイなのは気のせいか? と思考が脱線しかける海だが、集中集中と泡立て器を持つ手に力を入れる。


(ま、さっき送り出した千秋の接客相手はいいとして。ライブチケット込みの客も、会計しなくて済むからラクでいいけど……。問題は他かぁ。あ〜今日だけ、チケット制にでもしときゃよかったかなぁ)


 等と考えている海の耳に声が届く。


「あみちゃーん、〈特製デザート得盛り〉さっきと違うアレンジでよろしくぅー」

「まかせとけー」


 それに、含みつつ答える。

 カラスマントがノワールに慰められてるのを見やり、ミツキっちにはまだまだ勝てねぇよなぁ〜♪ と笑いを噛み殺ながら、パフェ製作に取りかかる。手を動かしつつ、傍らにいる隆維に訊ねる。


「パフェ(これ)、鎮のツケ?」

「でいーんじゃね?」


 そんな中、店内と耳に付けたインカムから声。


「海〜〜、追加オーダー!」

『新規二名、テラス席。注文受け中』

「はいよ〜!」


 それに、海は瞬時に応答し、パフェを作る手を早めるのだった。




 ステージ裏、控え室。

 観客席から届くざわめきの中、白衣の天使としか思えない瀬島蒼龍(ソウル)と、黒衣の悪魔としか思えない大神義愛(ギア)の二人を、関係者以外立入禁止の控え室に、〈空お姉ちゃんのお手伝い〉という名目でちゃっかりと入り込んだ(うしお)が、にこにこしながら見つめて呟く。


「蒼龍お兄ちゃんと義愛お姉ちゃん、とっても綺麗な〈はばたきのキラキラ〉だね」


 それが聞こえたのか、二人が互いを見つめて小首を傾げる中、


「失礼します、空です。お二人とも、もう準備はよろしいですか?」


 軽くノックしてから、ぴょこっと顔を覗かせる空。その際、髪に付けた貝殻のアクセサリーがしゃらり、音を立てる。

 ライブの司会なんて初めてで、何を着たらいいかわからず、それっぽいモノを、と選ばさせられたのが、昨日貰った衣装(これ)だったのだ。


「バッチリですよ」


 と言って笑顔を向けてくる蒼龍に微笑む空。


「それじゃあ、いきましょうか?」


 空の言葉に、頷き合い、控え室を後にする二人。

 その後ろ姿を眩しそうに見つめ、聞こえるか聞こえないかくらいの声音で、汐はそっと囁いた。


「とっても素敵な――、夜になるよ」


 満全の笑顔と共に。



 今日は司会だけの筈だというのに空姫コールが響く中、


「で、では、これより皆様お待ちかねの『DQN's』のライブを開催したいと思います! あ、あの私は歌わないですから、私コールは止めてください。で、ては始めさせていただきます! 『DQN's』で『One Best』!」


 なんとか最初の大役を無事に果たせた事に、ステージの隅に下がった空は微かな高揚感を覚えながら、ライブ開幕を告げる最初の曲に、そっと耳を傾けるのだった。




 一曲目の曲が終わり、二曲目が始まる少し前。

 黒衣の悪魔の少女が、透き通った声で語るその言葉を聞いて、


「おかーさん、こういうのに弱いのよぅ〜〜っ」


 太陽は、その黒の瞳から大粒の涙を溢していた。

 配膳で忙しい筈だが、店の客もライブ会場にいる客も、義愛の声と話に聞き惚れているのか、文句を言う者はいない。


「はい、ティッシュ」


 料理の注文やら配膳やらで忙しなく内と外の往復を繰り返しながら、邪魔にならない所で涙を流している太陽にティッシュ箱を差し出す(むつみ)。太陽のありがとう、を聞く前に配膳に行ってしまう。


「タオルもいる?」

「うぅ……、ありがと」


 暫しして配膳からの帰り際、タオルを持ってきた陸に礼を言って、太陽は顔を拭うと、義愛の透き通った歌声が響く中駆け出して、


「二人共、とっても素敵よ――っっ!!」


 ステージに向かって叫んだ。

 それがステージにいる蒼龍と義愛に聞こえたかはわからないが、周りにいたお客さん達にはバッチリ聞こえたようで、驚いたり苦笑を浮かべたりしている。


「もう、母さんたら」


 太陽のいきなりの行動にため息の陸。

 しかし流れる二曲目、三曲目の曲を聞いて、柔らかに微笑する。


「本当、二人とも素敵な良い声ね」

「だねぇ〜♪」


 いつの間にか傍らにいた海が、うんうんと頷き呟いた。




「…………異常なし」


 店内にあるカメラと、ライブ会場に飛ばした〈追尾くん〉から送られてくる映像をチェックしながら、ポソリと呟く渚。


 事故防衛と安全の為に飛ばしたそれらが、異常を知らせていないことに安心する。


 流れる曲は三曲目の終盤に差し掛かり、会場も店の中も、大変な盛り上がりようだった。


「…………」


 ちょっとだけ、と柱に隠れながら会場を窺う。


 会場もお店も、一体となったアンコールの嵐。

 そんな熱を全身に受けて微笑むステージ上の二人は、渚にはひどく眩しく見えた。


「…………すごい」


 素直に、そう思う。


 そうして、ちょっとだけと思って窺っている内に、最後の曲が流れ出した――……



 星と月の瞬く夜。

 夏の思い出として最高のライブに沸く、全ての者達と共に。



素敵な夜の思い出を彩るのは、少年少女の二つの音色


アッキ様のうろな高校駄弁り部DQN'sの章

8月21日 海の家の『DQN's』前半・後半


とにあ様のURONA・あ・らかると

8/21 ライブの日


とリンクしております

遅くなりましたが、なんとか書けましたっ


アッキ様のうろな高校駄弁り部より、蒼龍くんと義愛ちゃん


とにあ様のURONA・あ・らかるとより、日生兄弟、ノワール

またうろな偽書保管庫より、巳月ちゃん

お借りしております


おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ


※一部修正いたしました

失礼しました



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