8/12 さらってくのに
静かな店内。
海に配膳をさせたら、片付けもそこそこに子供達を店から出させる。
子供達に聞かせていい話じゃ、ない。
ノブ君はいるけど、この際視界から外しとく。
腕の中には、いくらか落ち着いたあーやちゃん。
まだ、その瞳には雫が煌めいているけれど。
テーブルの上には、手のつけられてないチョコケーキ。あとお酒。
悪魔の食べ物か。海もやるわねぇ。
椅子をぴったりくっ付けて、静かな波音が聞こえる中、まるで姉妹のように寄り添う。
いいよ。いくらでも泣かせてあげる。
なかなか涙なんて見せないもんね。
私の腕の中で泣けるなら、いくらでも貸してあげるよ。
〈それ〉がなくなるまで、ずっと傍にいてあげる。
囁いてあげる。
その背中を、優しく撫でていてあげる。
泣くことは、悪いことじゃないから。
心にだって、体にだって、涙が必要な時はある。
そんな時はめいいっぱい、泣いたらいいの。
でも、恐怖に打ち勝てるのは、あーやちゃん(自分自身)だけだから。
それは、あーやちゃんも良くわかってる。
だからこそ、私の所に泣きに来るんだから。
「……本当は、答えはもう出てるでしょ?」
抱き締め直して問いかけると、きゅっと抱き締め返してきながらも、コクリと頷くあーやちゃん。
それに、目を細める。
頑固でかたくな。
だからこそ、その芯にはしっかりとした答えがある。
〈こわいこと〉なら、逃げればいいだけなんだから。
でも、そうはせず今こうして此処にいる事こそが、あーやちゃんの出した〈答え〉なんだから。
〈恐怖〉に打ち勝つのは、なかなかに骨が折れる。
自分でしか、ソコから脱する事は出来ないから。
「こーんな可愛いあーやちゃんを、相手に出来ないなんてホント、男共はダメよねぇ〜」
くすり、苦笑して告げる。
ノブ君が、なんだか批難がましい視線を向けてくるけど、スルー。
「太陽ちゃん?」
いきなり声を上げた私をきょとりと見つめるあーやちゃんの、瞳に光る雫をそっと払ってあげながら。
「私だったら、さらってくのに」
結構、真剣な表情で言ってみる。
それに、その枯葉色の目をぱちくりして。
「ふふっ」
小さく微笑。
あ、よかった。笑ってくれた。
あーやちゃんには笑顔が似合うよ。
でも、本当にさらってくのにな。
こわいことなんて、何もない所に。
楽しいことしかない場所で、笑っていてくれるなら。
望むなら、今すぐにでも。
それを、私から言うことはないけどね。
悪魔に唆され?言ってみた…けれど?(笑)
予定では、もうちょっとノブ君をイジる筈だったのに…
でもこれはこれで…(笑)
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、あーやちゃん、ノブ君お借りしてます
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