8/8 二回戦・その2
ドン、ドン! 断続的な放水が続く中。
回避行動を取りつつ、走る者達。
動揺をなんとかやり過ごしながらの回避。
確実に、(人数を)減らしに来るだろうと思っていた者が殆んどだった為、それも仕方がない事だった。
佐々木と渚に至っては完璧に裏を取られた状態だったが、参加者的には皆互角の風船一個という状況に、逆に身が引き締まったくらいだった。
因みに芹香と鈴音はというと、一回退場したのをいい事にお兄ちゃんお姉ちゃん達から、三回戦から! と熱弁(懇願?)されたので、ここは仕方なく観戦である。
ドドン! 続く断続放水――、からの。
『…………打ち上げ』
ポツリ、インカム越しに響く渚の声。
〈ランチャー〉の一瞬のタメ動作による判断。
それにより、走るのを止めて上空を仰ぐ面々。
一瞬の、地響きかと思われる音と共に打ち上げられた水塊が、ある程度の所でバラッと分かれて降り注ぐ。
その数八。今、ステージにいる人数分調度。
その八本の水線が、まるで目が付いているかのように正確に、各々を襲う。
「どーなってんだよアレ! マジで目でもついてんじゃねーのっ!?」
叫ぶ隆維の声が響く。
それを各自その耳に捉えつつも、自らに迫る水線からは決して目を離さない。
着弾する瞬間を見極め、その軌道からちょっと身体をズラせば、楽に避けられる。
大事なのは、水線から目を離さない事。
言葉少なに語られた、〈ランチャー〉の対処方。
迫る水の、矢ともとれるそれを見据え――、ギリギリまで引き付けてから、行動を起こす。
「うひゃあっ?」
「よっと♪」
片足を上げて避ける佐々木、ひょいっとステップを踏む海。
「♪」
「くっ!」
ヒラリとかわすノワール、マントで防ぐカラスマント。
「…………」
「うおっ」
半歩、右にズレて水線を避ける渚、後方に飛んでやり過ごす隆維。
「千秋さん!」
「わっ!?」
天音に肩を引かれて水線を回避する千秋、その背に咄嗟に回り込む事で、自分に向かってきていたものをかわす天音。
皆、上手いこと避けられたようだ。
次の攻撃が繰り出されるまでには、少々の間がある筈だが――……
香我見の、ガラゲーで鍛えた速指が、備え付けのコンソールの上を滑らかに滑り。
間髪入れずに次が発射される。
『なっ!?』
これには驚かざるをえない面々だが、驚いている場合ではない。水線が容赦なく、面々に向かって勢い良く迫り来る。
挑戦者を給水場に近付かせない為の、一斉放水。
これの軌道は一直線故に、難なく避けられる筈なのだが。
他の者は難なく避けたが、改変された(あまりの)事に動揺しすぎていた渚は、その場を動く事が出来ず。
抗う事も出来ぬまま、放水の餌食になるかと思われたが。
「渚ちゃんっ!」
「!」
一声と共に渚の視界に人影が割り込み、一瞬の後、パンッと風船が割れる音が響く。
「大丈夫?」
「…………なんで」
降り注いだ水を頭から滴らせながらそう呟いた千秋に、ぱちくりと目を瞬いて問う渚。それに笑って千秋が答える。
「〈今は〉仲間同士だしね。それに誰かを助けられたんなら、僕もロワイヤル(これ)に参加した意味、ちょっとはあったのかなって」
「…………あり、がと。千秋兄」
それにポツリと呟く渚の頭にそっとその手を置いてから、後は頼むねと呟いて、水鉄砲とカートリッジを渚に渡して、ステージを後にする千秋。
『おぉ――! 風船は割れて脱落となってしまいましたが、女の子(渚)を守っての、栄誉ある脱落です! 皆様、千秋君に盛大な拍手を!』
「やるねー」
「格好よかったぞー兄ちゃん!」
観客らからの賛辞と盛大な拍手の波の中を、照れつつ後にする千秋なのだった。
観客達が沸き立っている間も、戦況は目まぐるしく変わる。
一斉放水からはうって変わって、厄介な追尾放水から逃げ回る参加者達。
これを凌げば、バターンとしては後三つ。
それが終わればランチャー自体の供給時間によるロスタイムで、楽に給水出来るようになるのだ。自然と、走る足に力が入る。
走りながら動揺を押さえ、渚は思考を巡らせる。
渚の手元には、涼維と千秋の分だった二つの水鉄砲と六つのカートリッジがあり、それを誰にどう受け渡そうかと考える。
水を多く消費しているのは、佐々木、海、カラスマント、隆維、天音だ。
「…………!」
と、思考を巡らす渚のすぐ横を、追尾してきていた水線が勢い良く駆け抜ける。それはそのまま、あさっての方向に飛んでいくのかと思いきや、〈何かにぶつかって〉また此方へと戻って来た。
「…………厄介」
自分でプログラミングして(創って)おきながらそんな事をボソッと呟き、くるりと方向転換して再び走り出す渚なのだった。
「へぇ。追尾放水って、こーゆー仕組みになってるんだ」
「感心してるバアイかよっ!?」
走りながら、追尾放水の仕組みに感心するノワールに、すかさず突っ込みを入れるカラスマント。
空を蛇のようにくねりながら迫ってくるそれから、なんとか逃げる。
追尾は勿論、水が生き物のように意思を持って追ってきている、という訳ではなく、水線の回りを絶えず浮遊している〈モノ〉による誘導のせいだ。
今回は、風船を追うように設定されている〈それ〉は、衝撃吸収、増幅放射塗料が施された、四角いクリア板を挟み持つ小さな飛行物体。
それが水線一つに複数体ついて回り、威力を殺すことなく、或いは増幅して、対象物を追ってきているのだった。
「さて、どうしようか?」
「どうするって……。ノワール、何か考えがあるんだろ?」
訊ねてきつつも、その口元が笑んでいるのを目敏く見つけ、カラスマントが問う。それに苦笑を浮かべて、ノワールはこそりとカラスマントに耳打ちする。
「!」
それにはっとするカラスマント。その後、互いに頷き合い。
緩やかに左右に分かれ、水線がちゃんと個々を追ってきているのを確認してから、円を描くように互いに向かって走る二人。
水蛇は、ちゃんと後を追ってきている。
二人の口元に笑みが浮かぶ。
互いの距離が近付く。更に近付く。もう、互いに触れ合うスレスレ、という所で。
瞬時に、外側へと退く二人。
すると、後を追っていた水蛇は咄嗟の事に判断が追い付かず、互いに衝突して無惨に、水球を撒き散らすハメになった。
太陽光を、撒き散る水球と飛行物体が挟み持つクリア板が反射して、キラキラとエフェクト効果を生み出す。
おぉ――! それに観客席から歓声が上がる。
美女コンで培ったパフォーマー精神と、二人の見事なコンビネーションによる勝利だった。
「頑張るなぁ……」
観客の声援に応える為、手を振るカラスマントとノワールを見つめて、強い陽射しが降り注ぐ中、香我見はボソリと呟いた。
カラスマント、ノワールが奮闘している間に、各々にも動きがあった。
最低一枚、多くて三枚クリア板の位置をズラす事が出来れば、追尾から逃れられる。
それをインカムにより知り得た面々は、各々行動を起こしていた。
手先の器用な天音は、走りながら微妙にズラした連射を後方の飛行物体へと放ち、軌道を逸らさせて難なく回避。
佐々木は大胆にも、次追としてランチャーから放たれた、乱獲一撃打ちと追尾放水を相討ちにさせてこれを撃破。
これに触発された海が、同様にして相殺を目論むが、読み間違えて追尾放水諸とも速連射放水の餌食となり、あえなく脱落。
しかしこれで、残るパターンは後一つ、乱獲二撃打ちのみとなり。
「……はぁはぁ。もー、無理だって」
追尾放水を、たまたま側をすれ違った渚に託して難を逃れた隆維だったのだが。
立ち止まったそこはバリバリ、ランチャーの射程内だった。
「ごくろーさん」
「……え?」
間近で発せられた気だるげな香我見の声に、隆維が怪訝そうに顔を上げ。
「隆維っ、逃げ」
ろ、というカラスマントのその声が終わらぬ内に。
乱れ打ちのような二撃が、瞬時に隆維を襲ったのだった。
そんな事がステージの真ん中で行われているその時、渚はというと。
積まれた土管の段差を利用して、追ってくる二つの放水の背に回り込み、射撃でこれを撃破したのだった。
「いやー、気分えぇなぁ♪」
ランチャー自体のタンク供給時間中に、悠々と水鉄砲に補給する佐々木。
そんな佐々木を、ため息して見つめる香我見。
「……この暑いのに、ほんま元気やな、佐々木君は……。佐々木君潰して、早よ帰ろ思たんやけどなぁ」
まだ続くんコレ……と呟き、香我見がまたため息を吐く。
「あたしとした事がっ!」
「…………疲れた」
「給水争奪戦、大人組(俺達)だけでホントによかったよな……」
「うん、本当にね」
各々に色々呟きながら、給水を完璧に終えた所で。
『二回戦目終〜了〜!』
との太陽の声が上がると共に、笛の音が高々と鳴り響いたのだった。
ランチャー背負い隊(笑)が空じゃなくなったので、若干やり易いのではないか、と
カラスマントとノワール、何故かセットにしてしまう不思議(笑)
二回戦・結果
脱落者
海、千秋、隆維、涼維
風船一個
佐々木、カラスマント、ノワール、渚、天音、芹香、鈴音
※香我君、ランチャー背負い隊として戦線復帰(笑)
※インカム回収
といった結果になりました☆
二回戦終了です〜
さてさて、参加者が段々少なくなってまいりました
次もビシバシ(苦笑)いこうと思います
弥塚泉様のばかばっかり!より、佐々木くんと香我見くん
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、日生兄弟妹、山辺兄弟妹
お借りしております
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
次は三回戦〜っ!




