8/8 準備
二回戦、開始の笛が鳴り響いたと共に。
『おおっと――? 一体どうしたというのでしょうか?』
一回戦同様アナウンサーに変じた太陽が、疑問の声を上げて眼前を見つめる。
開始直後は、皆ある程度バラけていた筈だが、いつの間にか、人が固まって集まっている所が出来ていた。
その面子内容は、海、カラスマント、千秋、ノワール、隆維、涼維の計六名。
風船残り一個組だ。
「……だって!」
「確かに……それは一理、ありますね」
「うーん……でもそれって、ロワイヤル(これ)的にはどうなんだろう……?」
「そこはひかりさんだし、大丈夫じゃね? それよりどんなのか、とかわかんねーの?」
「あたしにわかるかっ!」
「痛! なんで俺っ!? 暴力反対ー」
「反対ー」
屈んで頭をつき合わせ、何やら話し合っているようだ。
なんだなんだと観客がそれを見つめ、他の参加者達もはてなと首を傾げる中。
よし! と声を上げて立ち上がった六人の中から、カラスマントとノワールが一歩前へ進み出し。すっと手を上げ、宣言する。
「――諸君、暫し我らと停戦協定を結ぼうではないか!」
「――僕達と、停戦協定を結びませんか?」
カラスマントはバサリ、マントを広げて。
ノワールはにっこりと微笑して、各々告げる。
「停戦協定?」
「またなんでや?」
訝しがる天音、佐々木。他の者達も顔を見合わせる。
それを太陽は止めるでもなく、面白そうにくすりと笑んで。
『型通りにいかないのがロワイヤル! どうやら、何かが始まる模様ですっ!』
声を上げて観客を煽る。
それに笑みを向け、賑わう観客達をやんわりと宥めて、カラスマント、ノワールの両名が高々と告げる。
『その名も――給水争奪戦!』
程よい暑さの夏の午後。
ここに、総力をあげての給水争奪戦、開幕が告げられた――……
「人数の多い今のうちに、〈放水ランチャー〉(アレ)を攻略しよ、ゆーこっちゃな。えぇで。面白そうやないか」
「一回戦で、かなり水を消費した人もおられますし。まぁ、そのギリギリ感を上手く使う、という手もありますが……」
「休憩中の補水はNGだったし、補給の目処が立ってないんじゃ、ホント一撃で撃沈だからな〜」
佐々木、ノワール、カラスマントが話し合う中、
「で? 渚ねぇ、放水の数は?」
「…………パターンは、七」
「うぇ、多っ!?」
「砲撃種類はぁ〜?」
「…………一斉放水、乱獲一撃打ち、乱獲二撃打ち、霧雨からの断続放水、打ち上げからの散射撃、速連射放水、追尾放水」
「……なんか、凄い名前ばっかりですね」
「てかなんだよ、追尾放水って……絶対当たるじゃん」
隆維、渚、涼維、海、天音が作戦を立てるべく話し合い。
「これ以上のハンデはいらないわっ! 私達に任せときなさい! ね、べるべる!」
「うん、セリちゃん!」
「う〜ん。危ないし、止めといた方がいいんじゃないかな〜?」
えへんと胸を張る芹香と鈴音に、苦笑を浮かべる千秋。しかし、その耳はしっかり作戦内容を聞いており、まざりに行った二人に続いて、千秋も会議に加わり。佐々木達も加わって、残っている十一人全員で、わいわいと会議をする。
「一回戦のを見てると、あまり滞在時間は長くないようですし……」
「設定とかって?」
「…………手動、自動両方」
「設定の順番、とかは……」
「そこまでは流石にねぇ〜。それに、それまでわかってたら面白くねぇだろ〜?」
「……だよね」
「つーことは、やっぱ一回は、フルでエンカウントせなあかんやろな〜」
「…………数、千四十通り。それに加え、空姉の思考傾向、今日の気候状況、その他諸々を検証計算すれば、正解を導き出せなくもないけど………」
「それだと、渚ちゃんにかなり負担がいっちゃうしね」
「…………あと時間、足りない」
ぽつんと告げる渚に、だよねー、みたいな顔をする面々。
「そーするとやっぱ一回全部吐き出させてから、〈ランチャー〉が補給しとる合間にボクらも補給する、ゆーんが妥当やなぁ」
「ん〜? でもそれも、そんなに時間、なかったハズだぜ?」
佐々木の言葉に、なぁ? と渚を見やりつつ海。それに渚が答える。
「…………補給タンク、二段構え。補給部分と射出部分は、別。モーターもそう」
「なんでんなトコだけ、無駄にがっちりなんだよ!」
叫ぶ隆維にボソリと渚。
「…………〈ランチャー〉、変態撃退用、だから」
『………………』
それにあぁ〜、という微妙な空気と視線が注がれ流れる中、顎に手を添え、考え込んでいたノワールがふと呟く。
「意外に、そうでもないかもしれませんよ?」
「どういう事だ、ノワール?」
訊ねるカラスマント同様、ノワール以外、首を傾げる。
「そんなたいした事じゃありませんよ。二段構えだからこその、欠点といいますか」
「!」
ノワールの言葉にはっとする渚。後を続けるように呟く。
「…………タンク内への供給時間。それによるロスタイム…………」
渚の言葉に、ご名答です♪ とにっこりするノワール。
「その時間が、僕らに与えられた猶予時間です」
「いかに効率的に補給出来るかが鍵、ゆう事やな」
よーし、やったるで! と拳をぱしんと合わせる佐々木。
それに頷き、一同は視線を先へと向ける。
その視線の先、小首を傾げる空、――に背負われた〈放水ランチャー〉に。
「そうそう。争奪戦で風船が割れたとしても、互いに恨みっこなし、ですから」
「当然!」
「そんなの常識よっ!」
「あったり前や!」
にっこり告げるノワールに、皆各々頷いて。
「んじゃ、いくとしますか〜♪」
一声のもとに、立ち上がる。
給水争奪戦、開幕。
二回戦いくかと思いきや、ランチャー攻略会議に…
何処まで転がる?この話…
弥塚泉様のばかばっかり!より、佐々木くんと香我見くん
とにあ様のURONA・あ・らかるとより、日生兄弟、山辺兄弟妹
お借りしております
おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ
さぁ行くぞ、ランチャー攻略戦!(笑)




