表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/373

8/4 お願い




「なぁ〜。彩頼むって」

「嫌よ。なんで私が」


 ビストロ流星。

 ランチを楽しむお客さん達で混雑した店内の、カウンターの一角で、手を合わせてお願いポーズの(あみ)に、そつなく答えるのは流星のパティシエール、一条彩菜。


 海に応答しながらも、その手は止まる事なくなめらかに動き、鮮やかにデザートを仕上げていく。


「大体、修行しに来て良いって言われてるのの、一体何が不満なのよ。おとなしく、それに甘えればいいじゃない」


 出来たデザートをお客さんに配膳し、戻ってきてまた新しいデザートを作りながら、海に声を返す彩菜。

 その手付きをじっと見つめながら、ぽそりと呟く海。


「いや、あたしだって、修行させてもらえるのは、正直有り難いって思ってっけど。流星(ここ)に来るのだって、あたしにゃ修行みてーなモンだし。――で、彩。この曲線どーやんの?」

「だったら素直に行けばいいじゃないのよ……。えぇと、これは口金をギザギザのに変えて、こう。一端大きく描いてから、中側にキュキュッと、絞るのよ」


 そうして実演してくれる彩菜に、海はニカッとする。

 ぶつぶつ文句を言いつつも、こーやって親切に教えてくれる彩は良いヤツだと思う。

 それを、配膳から帰ってきた葛西さんが微笑ましく見つめる。


「まぁ確かに、カナ叔父はプロの板前だし、そこに修行しに行く事はいんだけど。――あのジジィに言われて行くってのが嫌なんだよ!」


 あ〜も〜! と、カウンターテープルに突っ伏す。


 カナ叔父は、海の父方の祖父である源海(げんかい)の次男で、その源海が経営しているホテル、〈ブルー・スカイ〉の専属板前なのである。


「あのジジィがタダで、なんてあるワケねぇし。大体、あのクサレジジィのトコにただノコノコと、なんて行けるかってんだ! だぁ〜からさぁ〜彩ぁ〜」

「いきなり、変な声出さないでよねっ!」


 テープルに突っ伏したまま、上目使いで彩菜を見やり、ゴロにゃんとする海に、ぞくりとして彩菜。

 ……ま、あたしだっておねだりなんて、似合ってねーと思うけど。と海は苦笑いを浮かべ。


「……何か、頼み事? 僕でよければ力になるけど」


 そんな二人を見かねて葛西さんが声をかけるが、


「や、これは出来れば彩に……!」


 と、葛西さんの申し出をやんわり断ろうとしていた海は、そこで何かに閃いたのか、ニヤリとした笑みを浮かべ。


「なぁ、彩」

「な、なによ」


 すすす……と彩菜に顔を近付け、ひそひそと話す。


「あたしだって別に、自分にメリットあるからやってくれ、って言ってるワケじゃねーよ? ちゃんと彩にも、メリットあるって」

「……それは?」

「ARIKAのドリンク無料券♪」

「話にならないわ」

「え〜。でもさぁ、これでジジィをぎゃふんと言わせられたら、お互いの店にメリットあると思うぜ〜? あのジジィ、ムカツクことに、アレで舌は確かだかんな。コラボ品の売れ行き好調なら、葛西さんに褒められたりするんじゃね?」

「っ!」


 海の最後の一言に、ぴくりと反応する彩菜。

 それを見やり、もうひと押し、とニヤリとする海。


「よ〜し、んじゃあプラス〈海特製夏パフェスペシャル〉割引券付けたらどうだ! 期間限定だし、デェト♪ に誘う口実にはもってこいじゃね〜?」

「な、なななっ!?」


 デェト、の言葉に狼狽える彩菜。頬まで真っ赤で、可愛い。


「この前の見る限りじゃ葛西さん、彩の気持ちに全然気付いてないっぽいじゃ〜ん?」

「う……」

「ここはさぁ、彩が押せ押せで行くしかねぇって。じゃないと何時までたっても気づかねぇよ、アレは」


 アレは、と言いつつ流星のほんわかしている店主を見る海。つられてチラリ、葛西さんを見る彩菜。

 その視線に気付いて、にこっとする葛西さんから慌てて視線をそらし、もごもごと呟く。


「わっ……私だってそれくらいっ……わかってる、けど……」


 だけど、アイツってぱホントにもう……と、このまま行くと恋のお悩み相談的な事になりそうだったので、海は最終手段に出る。


「互いの経験値上げにも、いーかと思ったんだけどなぁ〜。彩にゃ、あのジジィをぎゃふんと言わせんのは出来ねぇかぁ」

「なっ!?」


 海のその言葉に、彩菜の目にみるみる好戦的な光が宿っていく。

 それを見て、あ〜ぁという顔をする葛西さん。


「いいわ、やってやろーじゃない! スィーツの事に関して、この私が負けるわけないんだから! さぁ、そうと決まったら早速アイデア出しするわよっ!」



 彩菜のその宣言に、海はしてやったり、とニヤリとした笑みを浮かべるのだった。



『星』と『海』なので、それっぽいコラボスィーツ出来たらいいな、と


よろしければ作品名、考えてくだされば嬉しいです〜


綺羅ケンイチ様のうろな町六等星のビストロより、葛西さんと彩菜ちゃんをお借りしました


うちの海、もう馴れ馴れしくってすみません(苦笑)


おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ