12/1 あとはよろしく♪
以前の感じが抜け切ってないアプリ
『助けたい』
『笑顔が見たい』
『役に立ちたい』
『好かれたい』
『好き』
『大切にしたい』
『守りたい』
『幸せになりたい』
『幸せにしたい』
「あああああぁああああぁぁああぁ!!!」
〈想いの炎〉に灼かれる。
代わるがわる入り込んでくる二人の想いの洪水に呑まれて、声を上げ叫ぶ事しか出来ない。
切なる願い、真なる思いは。
笑顔が見たい。
ただ、それだけだったのに。
こぼれ落ちる涙は、炎に蒸発させられていく。
「熱くない、のに。なんで!?」
イルに「あとよろしく♪」っと、いきなり〈扉〉を開かれて、首根っこを掴まれ放り込まれた牢屋。
そこに。
炎に灼かれ叫び声を上げるフィルが、目の前にいた。
身体を焼いている訳じゃない。
フィルのその心。それを蝕む炎。
「まさか、〈乗っ取る〉つもりなの!?」
〈想い〉の力が。具象を引き起こす。
〈継承者〉と〈七守護り(サヴァナグラート)〉は、〈闇堕ち〉したと聞いた。
悲しみと、怒りの炎となって。
既に、その肉体は消滅して、想いだけのモノになっているハズ。
その炎が町を焼き、フィルまでをも灼く。
何故。フィルだって、二人と同じ被害者のハズなのにーー。
翠の瞳が、フィルを見る。
町の人々を助ける事を願い。同時に、淡い恋を育てていた二人。
フィルはそんな二人を、見守っていたのだと聞いている。
(…………悪魔を封じ縛るため。もしくは、悪魔がこの世に具現するため。人を『使う』のは、よくあるコトだけどーー)
自分の手を握り締め。自分自身の境遇を思い、目の前で起こっている事態を、悲痛な面持ちで見つめるアプリ。
悪魔の生け贄として。生まれ落ちたモノ。
フィルが身を灼かれているその様は、まるで。
悪魔にじわじわと、その心を、身体を。
喰われているかのようで。
唇を噛む。
「なんでフィルが……。イルは『とりあえず、見てればいいよ♪』なんて言っていたけどーー」
自身の身の内に住まう、悪魔と同種というのならばまだしも。こっちに取り込んで、フィルを救う事が出来るのかもしれないが。
フィルを苛んでいるのは、人だった者のココロ。
それも、親しい間柄の者のーー。
「………………」
確かに今、無理にこじ開けたら。
フィル自身の精神が壊れて、暴走するかもしれない。
二人の想いが、既に暴走しているように。
とりあえず、自身の武器、ジャポン玉で強固に結界を張る。
『何か』あったとしても。ここだけで終わらせられるように。
地上の騒ぎは、ミハが力を使ったし、カルサムが事を起こしたから、静まりつつある。
ただ、燃え盛る炎だけは、元をなんとかしない限り、消えはしない。
灼かれ続けるフィルを見る。
もう声すら出す事が出来ないのか。あんなに響いていた叫び声が、止んでいた。
「………………」
せめて、何か。少しでも動きがあればーー。
フィルを助ける事が、出来るかも知れないのに。
アプリが〈七守護り〉になって、初めての大きな事態。
こんな現象、〈神殿〉の書庫にあった手記にも、文献にも、書いてなかった。
どうしたらいいのか、わからないーー。
それが、正直な気持ちだった。
だけれども、せめて。
フィルが〈こちら〉に戻ってこられるように、と。
炎に包まれたフィルの手を。アプリはしっかりと握り締めたのだった。
祈るように。
実はイルの嫌がらせだったり、、、




