表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
363/373

12/1 あとはよろしく♪

以前の感じが抜け切ってないアプリ




『助けたい』

『笑顔が見たい』

『役に立ちたい』

『好かれたい』

『好き』

『大切にしたい』

『守りたい』

『幸せになりたい』

『幸せにしたい』



「あああああぁああああぁぁああぁ!!!」


 〈想いの炎〉に灼かれる。

 代わるがわる入り込んでくる二人の想いの洪水に呑まれて、声を上げ叫ぶ事しか出来ない。



 切なる願い、真なる思いは。



 笑顔が見たい。

 ただ、それだけだったのに。



 こぼれ落ちる涙は、炎に蒸発させられていく。


「熱くない、のに。なんで!?」


 イルに「あとよろしく♪」っと、いきなり〈扉〉を開かれて、首根っこを掴まれ放り込まれた牢屋。

 そこに。

 炎に灼かれ叫び声を上げるフィルが、目の前にいた。

 身体を焼いている訳じゃない。

 フィルのその心。それを蝕む炎。


「まさか、〈乗っ取る〉つもりなの!?」


 〈想い〉の力が。具象を引き起こす。

 〈継承者(ティアリアニィ)〉と〈七守護り(サヴァナグラート)〉は、〈闇堕ち〉したと聞いた。


 悲しみと、怒りの炎となって。

 既に、その肉体は消滅して、想いだけのモノになっているハズ。

 その炎が町を焼き、フィルまでをも灼く。

 何故。フィルだって、二人と同じ被害者のハズなのにーー。


 翠の瞳が、フィルを見る。

 町の人々を助ける事を願い。同時に、淡い恋を育てていた二人。

 フィルはそんな二人を、見守っていたのだと聞いている。


(…………悪魔を封じ縛るため。もしくは、悪魔がこの世に具現するため。人を『使う』のは、よくあるコトだけどーー)


 自分の手を握り締め。自分自身の境遇を思い、目の前で起こっている事態を、悲痛な面持ちで見つめるアプリ。

 悪魔の生け贄として。生まれ落ちたモノ。

 フィルが身を灼かれているその様は、まるで。

 悪魔にじわじわと、その心を、身体を。

 喰われているかのようで。

 唇を噛む。


「なんでフィルが……。イルは『とりあえず、見てればいいよ♪』なんて言っていたけどーー」


 自身の身の内に住まう、悪魔と同種というのならばまだしも。こっちに取り込んで、フィルを救う事が出来るのかもしれないが。

 フィルを苛んでいるのは、人だった者のココロ。

 それも、親しい間柄の者のーー。


「………………」


 確かに今、無理にこじ開けたら。

 フィル自身の精神(ココロ)が壊れて、暴走するかもしれない。

 二人の想いが、既に暴走しているように。

 とりあえず、自身の武器、ジャポン玉で強固に結界を張る。

 『何か』あったとしても。ここだけで終わらせられるように。


 地上の騒ぎは、ミハが力を使ったし、カルサムが事を起こしたから、静まりつつある。

 ただ、燃え盛る炎だけは、元をなんとかしない限り、消えはしない。


 灼かれ続けるフィルを見る。

 もう声すら出す事が出来ないのか。あんなに響いていた叫び声が、止んでいた。


「………………」


 せめて、何か。少しでも動きがあればーー。

 フィルを助ける事が、出来るかも知れないのに。


 アプリが〈七守護り〉になって、初めての大きな事態(こと)

 こんな現象、〈神殿〉の書庫にあった手記にも、文献にも、書いてなかった。

 どうしたらいいのか、わからないーー。

 それが、正直な気持ちだった。

 だけれども、せめて。


 フィルが〈こちら〉に戻ってこられるように、と。

 炎に包まれたフィルの手を。アプリはしっかりと握り締めたのだった。




 祈るように。

実はイルの嫌がらせだったり、、、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ