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12/1 イタい目見んのはお前だぞ?

ストックある分だけ上げます


桜月りま様の

12月1日『アリス奪還戦』とリンク♪





 息をする事すら、忘れてしまったかのように。

 互いを見つめ合う、継承者の少女ティアリアニィと、守護りの青年サヴァナグラート。

 そこまで思い出した所で。


 金の瞳が黒に変わり、少女が大人の女性に成長した瞬間、意識に直接届く〈声〉。


 『ーーわ、レ』


 『主ヲ、〈代わレ〉』


 『〈アレ〉は、我のモノダ!!』


 精神(こころ)を揺さぶる感情(こえ)が、内部を駆け抜ける。


 〈シヴァ〉は、己自身。

 自分が追走した(みた)ものを共有して、記憶を呼び覚ましたのだろう。

 過去の、その記憶を。


 サヴァナグラートだった時の事を。

 愛する(ティアリアニィ)を、自らの手で葬った、その苦く辛い記憶を。


 彼女ではないのに、時折滲む既視感によって、呼び覚まされた感情が。

 渦を巻く。


「っ」


 息を詰め、唇を噛む。

 随分と、酷い表情(かお)をしているだろう事が、鏡を見なくても分かる。


 二人の状況を見てきたからーー。

 どんな思いだったのか、など。

 痛い程、嫌と言うほど知っているーー!!



 出来る事なら、〈シヴァ〉の望みを叶えてやりたい。

 二人が「そう」なって、この手で葬り、町を一つ消し去って。

 その原因がーー、自分にあると理解して(わかって)いる。

 だから。

 せめてもの、罪滅ぼしなのだとしてもーー…………




 だけど。

 「今」、過去に浸っている場合ではない。

 目の前にいる女はーー、彼女ではない。


 拳を強く握り、踏み留まる。


「うふ、貴方、かわいい。でも見た目通り、子供ね。もし、貴方が肩入れしてるあの男に逆の条件をつきつけたら何ていうかしら? それも彼は自分が死ぬ事も禁忌(タブー)。彼が死ぬのは、巫女を人柱として完成させるパーツなの。そんな彼が、自分の体に毒があるって聞いて平気でいられるかしら?」


 くすりと女、撫子が微笑する。

 フィルの態度を見て。

 賀川のその体内に、毒が仕込まれていた事を、気づけなかったのだと。

 しかし、撫子が見抜いたというその事を、フィルも態度で感じ取る。

 余裕を滲ませるその態度、表情。

 まだ、自分が優位に立てていると思っている。

 即ち、優位でいられる材料を、撫子はまだ持っている。


賀川(アイツ)は、そんな口車に乗ったりしねぇ!」


 言葉を返しながら、注意深く女を探る。


 何か、不自然な所はないか?

 何かを、隠しているような凹凸は?


 身体にフィットするよう作られたタイトスカート姿は、遠目に見てもスラリと綺麗で、不自然な所は一つもない。


「どうかしら? ふふ、残念……」


 撫子の甘い声に舌打ちをしながら、密かに〈移動〉のルーンを呟いて。

 飛び掛かる。


「こっちの事を何処まで〈知って〉んのかは知らねぇが、中途半端に手ぇ出すと、火傷くれぇじゃすまねーぜ? それに俺様を〈ただの子供〉だと思ってんなら、イタい目見んのはお前だぞ? 撫子」


 空に踊る髪。

 キラリ、髪の隙間から見えた、片耳のピアス。


 フィルは撫子との距離を一気に詰めると、その形のいい顎を捕えて口づける。


「!」


 突然の事に驚き見開かれた女の、その瞳から。

 目を離さずに、フィルはキスを深める。

 逃げる舌を素早く絡め取り、吸い上げる。


「んぁ……」


 艶を帯びた甘い声。間近だから分かる、ほんのりと染まった頬。

 愛おしく思えるその表情にーー、何故か。

 罪悪感が込み上げる。

 それをなんとかやり過ごし、解毒剤と思しきピアスに、フィルが手を伸ばしかけた所で。


「あ?」


 意図せず、入れてしまった起爆スイッチ。

 はた、とした表情の女を見上げ。


「……やべぇ?」


 呟いた瞬間。

 目の前が、熱の赤と煙の黒に塗り潰された。

うちゅー


悪役企画より

撫子ちゃん


お借りしております

継続お借り中です

お気付きの点等ありましたらお気軽に

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