12/1 侵入前2
ストックある分だけ上げます
桜月りま様の
12月1日『アリス奪還戦』とリンク♪
ルドを駆り空を舞う中、フィルの蒼の瞳に映るのは。
凡そ、戦闘には向いていないような、小柄な少女の姿だった。
軽くウェーブした、地に着く程の長髪。幼児を思わせる可愛らしさをその見た目に纏う。
「何だぁ、ありゃ……随分と、可愛らしいのが出て来たじゃねぇか。あの長髪ロリっ娘が『アリス』か?」
賀川を翻弄する感じの『女らしい女』を想像していたフィルは、意外な者の登場につい、口を開く。その声に気付いたリズが屋上をチラ見し、
「アレは違うっスねぇ。黒髪に緑の目をした、もっとお姉さんっぽい人形だったっス」
そう訂正した。
リズが会ったのはその人物、アリスの姿を精巧に似せた機械人形だったが、マスターである者は賀川が二人かと間違う程の、外見的見た目を造作出来る腕を持つのだ。
相違はないと思って出た言葉だった。
「…………」
探し人でないなら、あの少女は何者だ?
思案し、探る様にフィルはその少女を見やる。
仲間に奈保と呼ばれた長髪ロリっ娘は、右往左往する者達をまとめ上げ、備え付けられた消火用ホースを準備させると、的確に火元を押さえていく。
その指示は正確で、屋上に群がる「警備兵」である者達よりは、幾分頭が切れるようだ。
司令塔の出現により、順調に炎が消されていくが、それを上回る火の玉を形成し、そこに投げ降らせるリズ。
火球の生成は間を置かず、その熱に重量は本物。情け容赦は微塵もなかった。
ルドに弾を掻い潜らせながら、フィルはリズが火球を投擲しやすい位置に羽ばたかせる。
目的は陽動。
既に死にかけもいい所の賀川が、容易に建物内に侵入出来るように。
「これなら賀川も少しはラクに……」
侵入できんだろ、そう結ぼうとしたフィルの耳に、リズが発するモノとはまた質が違う爆音が響く。
平和な場所に、あるとは思えない。
地雷である、その爆発音が。
空中戦をフィルとリズが繰り広げている間、賀川もルドが現れた騒ぎに便乗して、行動を起こしていた。
手近な敵を倒して車を奪うと、搭載されていた手榴弾を頂戴し。エンジンをかけたままの車が目的の場所に向かう、その後を追う。
目的地である建物の入り口は、地雷が埋められている地帯の先。
そのままでは到底無理だが、車が通った後ならば、そこは安全な通路となる。
不発の地雷があるかもしれないが、いかないという選択肢は、賀川にはなかった。
内部に、目を失ったアリスがいるのだ。
後を追う中、道半端で地雷を踏んだらしい車は爆発する事になったが、残り半分。
騒ぎに乗じてなんとか切り抜けられるだろう、とでもいいたげに。
賀川のその足は止まらず、そこを走り抜けていく。
上からも背後からも、銃弾の雨が降り。
足元からは、踏めば地中から飛び出してきた地雷に、その身体を貫かれるかもしれない。
そう、容易に想像できるその危険地帯を。
「どこがコッソリだ? リズ……」
「あっ……れぇ? 賀川さんっスよ……ねぇ?」
あまりに驚いたのか。リズは声を詰まらせ、一瞬動作を止めて賀川を見る。
まるで慌てているかのように、賀川がその地面を走り抜けて行くのと、寸分違わず。
地雷が爆発し、内包していた弾丸を、四方八方に撒き散らす。
「あぁ……………………あんまり考えたくねぇ」
地面を覆う土煙の中から、現れては即消える賀川を目で追いながらのフィルは、深く深ぁくその口から息を吐き出した。
額に片手まで添えて。
普通の思考の持ち主なら。
そんな所に生身で単身、飛び込んでいったりはしないだろう。
元に「安全な通路」である筈の、賀川の後を誰も追えていない。
(おいおい、マジかよ。いつ爆発するか、こっちの方がハラハラするだろうが!)
胸中で怒鳴りながら、驚きどころか最早呆れすら通り越した思考を、舌を鳴らして払拭し。
考えを巡らせるフィル。
地雷を埋めているという事は、そこに行かせたくないと言う意図の表れか、はたまた防御の弱い部分を補うためか。
既に死にかけな賀川が、闇雲に建物の中を掻き回し、アリスを探してあるかないかわからない入口を見つけ出すより効率的とも言えるが……
「今さっきここで、死にかけてた人間には思えねぇな…………」
既に、ため息しかないフィルの言葉。
自分ですら、あそこまでの無茶はしないと言える程。
迷い無く敵地に突っ込んでいくその様は、潔すぎるくらいだった。
まるで。
死すら厭わない、とでも言うかのように。
「っ」
そこまで考えて、息を詰める。
まるで『何か』に、取り憑かれているかのような、その動き。
身体を槍で貫かれ、相当出血もしている人間が数時間休んだ所で、あんな元気に走れるワケがない。
青く疲れ切ったその表情、限界なんて、とっくに超えている筈だ。
極限状態での、更なる身体の酷使。
『賀川』か?
今の賀川のその様に。
覚えがあって、そう囁くフィル。
纏う気配が『同じ』だと、本能が告げる。
二度目の戦闘の際、崖の上で対峙した『ヤツ』と同種だと。
ただ、あの時のように完全に『堕ちて』いない事から、今回はちゃんと制御出来ているのだろうとアタリをつける。
賀川自身『調整』すると言っていたし、そこら辺がなんとか上手く噛み合っているのだろう。
危なっかしいのに変わりはないが、既に走り出しているモノを、今更どうこう出来るものでもない。
「…………」
フィルはガリガリ、その白髪の頭を掻くと、一つため息して。
気付いたなら援護するべく、その手を閃かせ獲物を構える。
驚きから覚め、地雷では賀川を吹っ飛ばせない事に気付いた屋上の連中が、一斉に銃を放ち始めた。
ほぼ真っ直ぐ動く賀川は、恰好の的だ。
「俺様なら、一撃だぜ?! 敵じゃなくてよかったなぁ〜カガワ」
ニヤリとフィルは告げ、敵目掛けて長針を投擲したのだった。
ため息しか出ない(笑)
うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話
http://book1.adouzi.eu.org/n2532br/
賀川さん
悪魔で、天使ですから。inうろな町
http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/
リズちゃん
悪役企画より色々
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