11/30 先生達の結婚式・裏7 空ちゃん　ぐるぐるする。

　うろな北の森。

　チョコレート色の小屋にたどり着く。

　森の中にある小屋。なんだか童話の世界に迷い込んだよう。

　小屋の前まで運んでくれたタカさんにお礼を言って、着替えるために招かれて小屋に入る。

　時間が無いから、早く着替えないと、って思うんだけど。

　鎮(しずめ)くんとの事、どこまで広まってるんだろう……

　私は面識がそんなにないハズなのに、タカさんにからかわれちゃうくらいだし……

　タカさんにからかわれたからか、変な思考が止まらない。

　１１月１６日と１１月２６日に、紅葉狩りにいったり、お買い物に行ったりはしたけど

　相談と、プレゼント選びに付き合っただけで

　た、確かに私は、その

　ど、ドキドキしちゃったりもしたけどっ

　(で、デート、とか言うからだもん……っ)

　その時の事を思い出して、勝手に顔が赤くなる。

　家族同然の、幼馴染の男の子。

　そんな間柄の子と、一緒にお出かけって。

　普通にするよね？　たぶん。

　どちらかと言えば私は、女の子たちと一緒にいる方が多かったけど。

　一緒に遊んだのって、小さい時とかくらいだったし。

　友達と、遊ぶのと同じ。

　きっと、お姉ちゃんと弟。

　特別な相手とかじゃ…………、ない。　

　きゅっ、とジャージの裾を掴む。

　チクリと胸が痛い。

　だって、鎮くんは…………

　凄くモテるから。

　目を惹く赤毛と深い緑の瞳。

　気さくな性格と、さり気なく出来る気遣い。

　少しだけ通っていたうろ高でも、鎮くんと千秋くんの噂は流れていたし。

　ARIKAでのお手伝い時にも、女性のお客様から声をかけられる事もしばしば。

　バイト先の〈無限回廊〉でだって、鎮くんにはしゃいでいる女の子達は多い。

　鎮くんの事をいいな、って思ってる女の子は。

　きっといっぱいいる。

　

　涙が勝手に溜まってく。

　さっきまで…………嬉しかったんだけど、な。

　何故か、心が沈んでしまう。

　なんで、私だったんだろう？

　本当は私じゃなくても、良かったんじゃ、ないのかな……

　鎮くんの心に、少し触れられた気がして。

　距離が縮まったみたいで、嬉しかったのに。

　急に、よくわからなくなって、ぐるぐるする。

「空さんの衣装はこれっスよ。背中にはこれ付けて、頭はウサ耳付けてほしーっス！」

　どうしたらいいかわからない、私の思考を切り裂いて。

　リズさんが持ってきたその衣装に。

　え！？　これ着るの！？！

　羞恥心が勝って、涙が引っ込んで。

　私の思考が停止した。