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11/30 先生達の結婚式・裏6 空ちゃん

11月30日 結婚式模様(YL様)


11月30日

清水夫妻の結婚式8(会場外へ)(桜月 りま様)

とリンク


その他もろもろリンク中




 渉先生が、渚から貰ったハイパーアシスト自転車を使って、猛スピードで式場から遠ざかっていく。

 それを驚きつつ見やりながら、前田家のテーブルの方へと近づいていく。



 えっと、この後着替えて。移動するんだよね?



「空さんも着替えに行くっスよ」

「あ、はい」


 近づいて行くと、リズさんに声をかけられて、反射的に応える。


「鎮く……いや、ロリマ……じゃなくて、白色カラスマントが気になるっスか? 大丈夫っスよ」

「見惚れていたんですよ、きっと」


 隣りにいた雪姫ちゃんにそんな事を言われて、恥ずかしくなってしまう。


「えっ!? あ、あのそのっ、そんなんじゃなくて、ですね」


 (しずめ)君と一緒じゃ、ないんだよね。

 って思ってたの、見透かされちゃったのかと思ったから。

 北の森に移動するって聞いていたから、汚れてもいいように、ジャージに着替える。

 うろな高校のジャージ。なんだかちょっと懐かしく感じる。

 隣りで着替えていた雪姫ちゃんは、ワンピースで。驚く。


「そんな軽装で行けるんですね。もっと行程が大変かと思っていました」

「森は流れに乗るように行けば、そんなにきつい所じゃないですよ」


 森で流れに乗るってなんだろう? サーフィンみたいな感じなのかな?


「空さん、ユキちゃんの言う事、真に受けちゃダメっスよ? 空さんは基本歩かせないっスけど」


 リズさんがそんな事を言ってきたので、小首を傾げる雪姫ちゃんと同じに、私も首を傾げる。

 歩かせないってどういう事??



 恥ずかしがり屋で引っ込み思案な所を考慮されてて、あんまり、今回の『お祭り』の内容は聞かされてないんだよね。


「とりあえず空は、歌っとけばい〜から〜♪」


 って(あみ)お姉ちゃんに言われたくらい。

 後は(うしお)がリングガールで、とか。


「気を付けていくんだぞ、ユキも、空も。タカさんも色々と、そのご迷惑かけます」

「ん? ああ、賑やかな事は嫌いじゃねーからな。じゃ、ちょっくら行ってくらぁ。葉子さん、ここは頼んだぞ」

「ええ、梅雨ちゃんもお見送りしてね」

「なぁ~♪」

「抜田先生と私の生徒達が先行しているんでよろしくお願いいたします」


 こくりと頷き、梅雨ちゃんと、色々な人たちに見送られながら。

 森の入り口まで車で移動して、、、



「え!?」



 『運ばれる』なんて聞いてないよ〜〜っ!!



 目の前には、「しょいこ(荷物を括り付けて背負う為の枠。運搬などに使われる)」を背負っている賀川さんの姿。

 

「で、乗ってくれないかな?」

「そ、それは。え、でもあの……」


 ちらり、雪姫ちゃんを見る。

 汐から、雪姫ちゃんと、賀川運送の一番賀川さんは、こ、恋人同士だって聞いてるから。

 す、好きな人が、、、

 自分以外の女の人と一緒にいる、なんて。




 私だったら、嫌だもの、、、

 それに、

 


「そ、それに私だけ背負われるのは……」



 恥ずかしすぎて、心臓壊れちゃうっっ

 ぶんぶん手を振って、全力で断るんだけど、、、


「空さん!」

「は、はい」

「しっかり歌ってもらうんスから、体力、温存しとかなきゃダメっス!」


 いきなり勢いよくリズさんにそう言われ、目を瞬く。


「でも、その」


 雪姫ちゃんと賀川さんをちらりと見る。


「ああ、賀川さん、におうっスもんね」


 え!?


「あのあのあのっ……そんな事では! な、なくてですね、リズさん」

「酷いな、俺の扱い……」


 慌てて弁明する為声を上げるけど、賀川さんが見る間に落ち込んで、、、

 ああぁ、違うのっ、違うんです〜〜

 ど、どうしよう、なんて言えば、、、


「じゃあ俺ならどうだ?」


 えっとえと、あの


「ほれ、時間ねぇ~かんな?」


 アワアワしている間に、賀川さんからしょいこを取り上げたタカさんが、私をしょいこに固定して、さっと背負ってしまう。



 あ〜〜う〜〜っ。は、恥ずかしいよぅっ

 せ、せめて、顔を隠せたら〜〜


 

 ジャージの襟部分を開いて、首を竦ませる。




「大人しくしててくれたから、運びやすかったぞ。ありがとな」


 って後でタカさんに頭を撫でられたんだけど。

 まさか、他にも合流してくる人たちがいるとは思ってなくて。


「マジ、疲れたんだけど。何で歌姫(セイレーン)だけ背負われてんだ」


 既に疲労困憊な学生集団の声に、どきっとして意識を呼び戻される。

 恥ずかしさを紛らわせる為に、意識を歌う事だけに集中させようと思って。

 目を閉じて、呼吸を整えてたの。

 見えなければ、たぶん、、、恥ずかしさが紛れるかも、と思って。



 リズさんが言うように、歌うのって、実はすごく体力がいる。

 声帯の状態とか身体の状態、呼吸方法。

 全部を総動員して、周囲に、広範囲に届くように、声を、息を、意識して空気に乗せるように操る。



 青空(うち)家は色々な事情があって、生まれた子供はある程度の年齢になったら、〈身を守る術〉を教えられる。


 海お姉ちゃんは嬉々として、四歳くらいから、四家族合同の訓練に参加してた。

 (むつみ)お姉ちゃんも、私も、渚も。

 それに他の従兄姉妹弟たちも、ちょっとした護身術くらいは身に付けてる。

 私たち家族は世界を旅して回ってる事の方が多かったから、お父さんとお母さんたちに混じって訓練していたり、時にはフィルくんたちと試合ったり。

 海お姉ちゃんなんかは、滞在中のあらゆる道場に、顔を出しに行ったりしてたっけ。

 汐もそろそろ護身術を習う訓練に参加してもいい年頃なんだけど、、、

 もともと身体が丈夫じゃなかった事と、最近体調を崩している事が多いから、先延ばしにされてる。

 野蛮だって途中で辞めちゃう人もいるし、元々護身術くらいでいい、と思って参加する人もいる。強制じゃないから、参加不参加は自由だったし。



 たまに、渚と一緒に海に潜りに行くのも。

 室内プールに泳ぎに行くのも。

 周囲を意識する事が出来る、海の家やホテル、『無限回廊』での接客も。

 全部、ぜんぶ、歌を意識してのものでーー。



 こんな状況で気付く。

 冬の空が霞む。

 ああ、こんなにも。

 こんなにも、謳うのが好きだったんだ、って。



 木々の葉擦れ音。足音。息遣い。

 風の音。羽音。鼓動。森の匂い。

 世界の全部が。




 『おと』を連れてくるーー。



 目から涙が溢れちゃいそう。

 それに、やっぱり恥ずかしい。

 


「あ、あのっ。私、大丈夫ですから。降りて、歩きますから……」


 そっと目元を拭って、こっそりタカさんに聞こえるようにだけ囁いたのに。


「駄目っス! 空さんは今日の歌姫だから息を切らしたり困るっス」




 リズさんに、ビシッと言われて諦めた。

空ちゃん恥ずかしい回


とにあ様のURONA・あ・らかるとより

https://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/

鎮くん


YL様の"うろな町の教育を考える会" 業務日誌より

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

渉先生、司先生、梅雨ちゃん


うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話

http://book1.adouzi.eu.org/n2532br/

雪姫ちゃん、賀川さん、タカさん、葉子さん


悪魔で、天使ですから。inうろな町

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

リズちゃん


お借りしております

継続お借り中です

お気付きの点等ありましたらお気軽に

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