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7/30 お見舞い




「突然来てしまってすみません」

「構わないさ。むしろ嬉しいよ。お見舞い来てくれてありがとうな」


 いきなり来てしまって迷惑じゃなかったかと恐縮する空に、小梅先生はにっこりと言って、部屋に案内してくれる。


 適当な場所に座って、手渡された麦茶で喉を潤し、他愛ない話をする。


 因みに、一緒に来た(うしお)は、玄関まで出迎えに来てくれた小梅先生の後をついて来ていた、猫の梅雨ちゃんを目敏く見つけ、玄関先で二人、いや一人と一匹で、臨戦状態? であった。


「店はよかったのか? 忙しいんだろう?」

「あ、それは大丈夫です。今年は沢山の人達がお手伝いに来てくれてて。珍しく、今日オフなんですよ」

「へぇ、よかったじゃないか。ここの所、休みも取れない、って言ってたもんな」

「あはは。それにしても、小梅先生お加減良さそうで、安心しました」


 にっこり告げる空に、苦笑する小梅先生。


「ありがとう。この時期はいつもの事だから、そう気にすることもないんだけどな」

「そんな事ないですよ。夏に体調管理怠ると大変だって、小梅先生が言ってたんじゃないですか」

「あれ? そうだったか?」


 二人でにこやかに話しつつ、あっ、と思い出したように空が告げる。


「あ、そうだ。これ、(あみ)お姉ちゃんから、というか皆からなんですけど」


 と言って、持っていた袋の一つを差し出す空。


「なんだ?」

「えっと、〈海お姉ちゃん特製栄養ドリンク〉と、〈さっぱりゼリー〉です。出先ついでの渚に持ってきてもらったので、まだ冷たいですよ」


 袋を受け取りつつ問う小梅先生に説明する。


「ありがとう。万全になったら、皆にもお礼を言いに行かないとな。――それにしても、凄い荷物だな?」


 お礼を言いつつ問われて、空は苦笑する。


「ついでにと思って、呉服の樹雨(きさめ)で浴衣セットを引き換えてきてから、ショッピングモールに行って……そこでちょっと、買いすぎちゃって」


 えへへと苦笑する空に、あぁと納得したように小梅先生。


「コンテスト、三位だったんだってな。果穂に聞いたぞ。おめでとう。あー、私も出られればよかったんだがなー。そうしたらお前の、セイレーンの歌声が聞けたのに。そうだ、ここで歌ってくれないか?」

「えぇっ!? あっ、あれはそのっ……成り行きといいますかっ、その場の勢いに乗せられたといいますかっ」


 突然の、小梅先生からの提案に驚き慌てる空。恥ずかしさでもう、頬が朱に染まっている。それに苦笑し謝る小梅先生。


「すまんすまん、冗談だ」

「っ! はうぅ。も、もぅ! からかわないでくださいよ〜」


 それにはっとし、頬を押さえつつ告げる空。恥ずかしさを紛らわせる為、話題を変える。


「あ、そうそうっ。美女コンテストの参加賞、アクセサリー作成キットだったんですけど、良かったら小梅先生もやりませんか?」

「いいのか?」


 訊ねてくる小梅先生に、苦笑して空が告げる。


「はい。皆もやるかなって思って色々買ってたら、凄くいっぱい買っちゃってて。梅雨ちゃんの首輪に、ワンポイントとかで付けても可愛らしいですし」


 言いながらがさがさと、袋から商品を取り出す。


「へぇ。プラスパーツでアルファベットが作れるのか。面白そうだな」


 面白そうにそれを見つめていた小梅先生だったが、ふと気付いたように廊下に声を投げる。


「梅雨といえば。あいつ等、何時まで玄関先にいるつもりなんだ? おーい、梅雨ー、汐ー? いい加減にこっち来ないと、ゆでダコになるぞー?」


 その声に、「はぁい」と汐の元気な声が聞こえ、パタパタ足音を響かせて此方へと近付いて来る。


「お待たせなの〜」


 と言って部屋に入って来た汐の腕には、ため息を吐いていそうな感じの梅雨ちゃんが抱かれており。


「梅雨が、初対面の汐に黙って抱かせてるとは珍しいな。この子は人見知りなんだが……。押し負けたか?」


 意外そうな顔をしてそう呟く小梅先生に、「違うのー」と言って梅雨ちゃんを小梅先生の隣に下ろし、自分は空の隣に座って、にっこりと告げる。


「会長を司先生の元に送り届けたの」

『会長?』


 二人して、はてな? と汐に聞き返す。それににっこり、汐は言う。


「司先生を守る会、結成なの〜! 梅雨ちゃんが会長さんで、汐が副会長なんだよ?」


 えへんと告げる汐に、小梅先生は苦笑し、


「そーかそーか。何から守ってくれるのかはわからんが、よろしく頼むよ」

「おー!」

「なぁうっ!」


 声を上げる二人の頭をよしよしと撫でる。

 それを見つめ、空は小梅先生と顔を見合せると、にっこりと微笑むのだった。




 小梅先生もとい、清水先生宅からの帰宅中。


「ふふん、ふんふん、ふふ〜ん♪」


 鼻歌混じりに、ご機嫌に家路へと足を進める汐に、その傍らを歩きつつ空は問う。


「随分ご機嫌だね? 何か、良い事でもあった? あ。梅雨ちゃんとお友達になれたから?」

「梅雨ちゃんはお友達だけど会長さんなの〜。それもあるけど、もっと〈良い事〉だよ〜♪」


 それににこにこと汐は答える。


「良い事って、なぁに?」


 と、空が訊ねるが、


「ふふっ、内緒なの〜♪」


 にっこり笑って汐は答え。


「え〜? 教えてよ〜」

「ダメなの〜」


 沈みかけた夕空の中、きゃいきゃいはしゃぎながら、帰路につく二人なのだった。



なんだかとっても、良い事があった模様(笑)

小梅先生のお見舞いに行かせて頂きました〜


YL様のうろな町の教育を考える会 業務日誌より

小梅先生と梅雨ちゃんお借りしております

あともろもろ?(笑)


次話もお借りするかと思います〜


おかしな点等ありましたら、ご連絡くださいませ



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