11/30 先生達の結婚式・式場の外1
式場の外へ
"うろな町の教育を考える会" 業務日誌
11/30結婚式話とリンク中〜♪
主のYL様とご連絡取れないので事後報告的になりますが
流れに沿う形でいきます
他、いろんな方々とリンク中
「なんとか、腕は治ったみてーだな」
階下から聞こえてくるピアノの音に、塔の先端部分に立って、目を閉じ耳を澄ますフィル。
ニヤリとその口角を上げて呟く。
通常の処置で治るとは、思えなかった腕の怪我。
それがどうやら治った事に、奇跡めいたモノを感じずにはいられないフィル。
神である水羽を降ろせる触媒としての巫女、雪姫を伴侶にと望む程だ。
そんな事があったとしても、不思議ではない。
最も当の本人である賀川は、全くと言っていい程、そういう類いは信じていないが。
「…………」
町全体を見渡せる塔から、睨むように眼下を見やる。
お祭り騒ぎに乗じて、害意ある者が紛れ込むなんて事は、良くある話。
年端もいかない汐を神殿の長に据え。
年齢を盾に成人を迎えるまでの間、好き勝手しようとしている事くらい、お見通しだ。
あわよくば汐の持つ〈力〉を使って、永遠以上の栄光を、手にしようとしているのかもしれない。
二夜に渡り元老院から差し向けられた刺客を退けたが、それで迂闊に下手な手は打てなくなったとは言え、それだけで終わる等とは、到底思えなかった。
だからこそ、汐からの「お願い」はフィルにとって、むしろ好都合だった。
窓の側に留まらせたマメ鳥から、式場内の情報を貰う。
紋付袴と色打ち掛け姿の「幼女」がやって来た所で、タイミング良く笛を吹く。
ラザ、いやドリーシャに先導させた鳩たちが、幼女をいっそう引き立てるように舞い、その場を彩る。
上がる歓声と拍手に、満足して鳩を退かせ。
それと同時に、見知ったヤツが会場を出る姿を確認して、ニヤリと笑みを深めるフィル。
くるり、持っていた長針を回し、その時を待つ。
結婚式が開催されている、屋上。
更にその上。
小さなガーデンチャペルにある、鐘を抱いた塔の先端。
人影が動き、顔を上げたと思う間もなく。
手を閃かせ、空に躍る。
「ちょ……」
微かな声が耳に届くが、構う事なく。
振われた指示棒によって弾かれた長針を見る事なく、染み込んだ回避行動で顔を傾げて難を逃れ。
対象が避けたその地点に向けて次を見舞い。
更にバックステップで避けた所に、飛び込むが。
芯を突かれて折れた獲物を放棄し、体制を崩したそいつが手を付いたそこを目掛け、三度目の攻撃を放つ。
芝生には油が撒いてある。そこを避けて手を付くのは、計算済みだ。
しかし、手の力を利用して反動でその場から後退しつつ、輪ゴムが連続で打ち込まれ。
「初手で目ぇ射ろーとするたぁ容赦ねーなぁ。俺様じゃなきゃ、この距離じゃ痛ぇ事になってたぞ?」
「それは俺の台詞だ。やっと動くようになったって言うのに。本気で腱を狙っていたろ?」
互いに動きを止め、軽口を叩く。
「やっぱりお前か、レディフィルド」
この名をフルネームで呼ぶ者は、今の所一人しかいない。
そこには正装に身を包んだ、賀川の姿があった。
使役した大量の鳩が飛び交い、ヒラヒラと羽を降らせる。
その内の一羽が、賀川の頭に居座った。ドリーシャだ。
「ドリーシャ、お前も祝いに交じっていたのか?」
ドリーシャに声をかける賀川に、笑う。
「よお、カガワ~。どうだぁ~調子はよ~?」
「見ての通り元気だ。このくらい、な」
長針を回しながら近付いていくと、左手を突き出して、針を指に挟むとくるりと自在に動かして見せる。
フィルがぴゅ~♪っと口笛を吹きながら、
「上々、だな」
音もなく出した長針を、僅かな動きだけで鋭く投げ飛ばす。
時短投擲された長針の軌道を正確に読み取り、持っていた長針で上空に弾く。
眉間を狙ったそれは軌道を外され、くるくると回りながら、賀川の手中に落ちた。
「まだやるか、レディフィルド……」
「ははははっ! 二日、三日前に見たトコ、あんだけ絶望的だったのになぁ〜? アプリが『治せない』って言ってたそれが、そんだけ滑らかってすっげ〜ぇなぁ〜♪ 神がかってんのな、カガワ〜ぁ」
「神、か。俺には……帰って来て欲しいと願ってくれた友がいた。それだけだ」
「へぇ〜。良〜い友達、だったんだな」
「ああ、掛け値なしに。腕を診てくれた彼女には礼を言っておいてくれ」
「ん、ああ。だがよぉ~わざわざそんな事を言いに来たのかぁ~お前」
肩に相棒のルドを乗せたまま、ひらりと賀川の眼前に舞い降り、渡された針を受け取る。
「じゃ、『合格』か? まあ、今日の祝いとか、他にもこの鳥を飛ばした理由はあるんだろうけど」
「祝いに、カガワの模擬テストに……さっすが俺様って事だ、一石三鳥は当たり前だろぉ?」
ニンヤリ告げるフィルに、思案する賀川だが。
追求はせず続きを待つ。
「ま、今日ん所は合〜格っと。ここまで倒れず来れたってこたぁ、聴覚弄っても三半規管、狂ってねぇって事だしな」
ニヤリと笑って告げ、気を抜きかけた所をねらって。
ゼロ距離で笛を吹く。
突如襟首を掴む手に、ガクガクと頭を揺すられる。
防音は上手くいっているようだが、冷や汗モノなのは変わらないのか、嫌そうな顔をする。
「お前はっ! もーう今日はテストは要らないぞ。それに失敗して、せっかくの結婚式に俺が死にかけたら大事になっているだろうがっ。ついでがあったとはいえ、もうちょっと場合を考えろっ」
「い〜つ敵が襲ってくるかわっかんねぇから、模擬になるんだろーがよ〜。はははははっ。カガワぁ〜おっ前、ホントおもしれーヤツだなぁ〜。腕折るほど正気失くして荒れ狂うかと思えば、チンケな子馬の呪符で翻弄されっし、動かねぇ筈の手が動いて、あんだけ良い音弾くなんてなぁ〜」
「き、聞いてたのか? それも子馬の攻撃はチンケって……」
「正確にはラザがな。すーっかり懐いちまって……あー、わーってるよ。ドリーシャ。ドリーシャな」
若干凹んでいるらしい賀川を他所に、抗議してくるドリーシャに謝る。
「さぁ〜て、んじゃ俺様は行くぜぇ。そろそろ良い頃合いだかんな〜」
腕を伸ばし告げる背中に、賀川が声をかける。
「うろなにはいつまで居るんだ?」
「来年上旬くらいじゃね? ま、また二月頃に来るけどな」
「わかった。今度、約束のお礼をするから。汐ちゃんの携帯にでも知らせていけばいいか?」
「んにゃ、ドリーシャに伝言りゃいーぞ?」
何気なしに言ったフィルの言葉に、怪訝そうな表情をする賀川。
「日付言っときゃ、俺様に届くし」
「そ、そんなイージーな。それにいつもドリーシャは、いるわけじゃないし」
「賀川でも、呼べば来んじゃね?」
フィルの言葉に同意するように。
ドリーシャがぐるぐると返事をする。
俄かには信じられない賀川は、連絡つかなきゃ御和算にでもするか? などと考えるが。
「踏み倒すんじゃねーぞ? 楽しみにしてんだからな〜?」
その心を読んだかのように。
釘を刺してフィルはそこから、忽然と姿を消したのだった。
訓練にかこつけた…悪戯?かなぁ
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
YL様の"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 より
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
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