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11/28 デート前(渚)

桜月様宅11月28日デート? 前です(海さんと子馬)とリンクしてますー






「…………」


 (うしお)に渡した(あみ)姉の写真。

 あれには、一枚だけ細工がしてあった。


 妙な話を、聞いたから。


 「あの」海姉が、男性とデートをしていた。

 それも、やたらと図体のデカい大男と、二人きりで。


 それに、汐とフィルが賀川運送の賀川さんと、何かの訓練をしていた際にも、その大男は現れたらしいし。

 そういう話を聞いて、何も思わないワケがない。


 本当に恋人だというなら、これ以上詮索する気はない。

 でも、大男に引っ張られてバスに乗せられていたみたいだし、今の所海姉にとってそういう対象ではないのは明白。

 何より、あの海姉を引っ張っていく、というのが信じられない。

 海姉の腕っぷしに敵う男は、早々いない。

 それに、あれでいて海姉は好き嫌いがはっきりしてるから、嫌いなら大人しく引っ張られていくなんて、有り得ない。


 今まで、こんなに目立つ外見の男性はこの付近にはいなかった筈。

 最近知り合って、まだ関係を計りかねている、って言う可能性もあるけど。


 用心するに越した事はない。

 何より、汐とフィルに接触してきてる。

 賀川さんの知り合いかもしれないけど、訓練しているその場に、現れる理由がない。


 「賀川のお兄ちゃんにも守る人がいて、その為に耳を鍛えないといけないんだって」


 と。

 汐がそう言っていたけど、それに彼も関わっているんだろうか。

 その可能性も十分あり得る。

 たとえそうだとしても、見過ごす訳にはいかない。


 会ったこともない筈なのに、汐のフルネームを知っていた。

 それだけで、十分。

 要注意人物になりえる。


 汐は、〈キラキラを見る目〉を持っているから。

 その事を、知っているかもしれない。


 汐のフルネームを知っていた事で、下調べしたのは容易に知れる事。

 保護法を無視して調べたというんだから、こちらにも知る権利はある。


 細工を施した、写真から得られたのは。


 つちみかど こーま。

 二十歳にしてつちみかど家当主で、公安に仕えている。

 どうやらそれは、普通の御役所仕事、という訳ではないみたいだけど。

 技術部という所の主任には逆らえないみたい。

 そして身体はかなり、丈夫で頑丈。

 「ヒト」の域を超えている、のかも知れない。


 味方ではないのなら。

 汐に近付けさせられない。


 ヒトは、時に怖い生き物だから。

 それに、それ以上の力で向かってこられたら、汐に危害が及ぶ。

 常人にはない〈力〉に(勝手に)価値を見出して、手を伸ばして来る者達は、沢山いる。


「…………」


 遥か向こうから歩いて来る、巨体を待つ。

 直接見たのは初めてだから、あんなに大きいとは思ってなかったけど。

 探知機が示してるから、間違いない。

 それに随分厳つい顔をしていて、子供が見たら泣きだしそう。

 海の男を見てるから、泣き出すなんて事ないけど。

 もう少し小さければ、泣くくらいするかも。

 …………汐だって泣いてないから、泣かない。


 側に来るのを待って、視線を合わせて呟く。


「…………つちみかど こーま?」


 子馬だって、言ってたような気がするけど。

 どうみても子馬って、大きさじゃない。


「そうだけど。何かな? 青空 渚さん……」


 にっこり笑って名を呟く。

 その顔は確かに、温厚そうに見えなくもない。


 それにしても、何処まで調べてるんだろう。

 家族構成なんて、全員知ってそう。


 ……父がいない事すらも。


 考えて何か、薄寒いモノが這い上がっていく。

 フィルがいたし、汐は無事。

 なら、何の問題もない。

 でも。

 …………こんな風に暴かれるのは、不愉快。


「このかわいい写真、君が用意してくれた?」


 海姉の「レア物」写真をチラつかせる。

 細工したソレと男を見て、次を待つ。


「この一枚だけ厚みと重みが違ったから」


 技術部の者達がいるみたいだし、その辺の人達が調べたんだろう。

 限りなく、ただの写真に近付けているから、普通の人には分からない筈。

 彼の姿を見て、唯人だとは思わないけど。


「海に潜るのが好きで、他に発明が得意なんだって聞いてる。だから君かな、と。『コレ』凄いね。ーー俺に渡ってから作動させたのかな? だから耳の良い賀川も気付かなかったよ。この薄さで自己充電し籠もりのない音声を再現しているとはと、俺の所の技術部が嬉々として調べて、その精巧な作りを買っていたよ。昨日一時間ぐらい電波が届かなかっただろう? そうそうコレ『うすっぺらーな・聞こえっぺらーな』、略称『ぺらーな』って呼ばれてた」

「…………センス……ない……。それ、貴方の鼓動、血流、それに熱で充電されて、稼働し始めた。……今時期、机上なら一日放置しただけで、ただの写真かみきれに、なる」


 蓄熱機能を施したフィルムが、裏部分に張り付けてある。

 音声を盤面吸収するから、フィルム自体が視聴機器。

 熱が無ければ、機能しないものだけど。

 こんなに簡単に見破られるなんて、まだまだだと思う。

 …………改良の余地あり。


「渚さん。……俺、海さんにヨコシマな気持ちは間違いなくあるよ?」


 …………。

 いきなり、何を言い出すんだろう、この男は?

 確かに、邪な思いを抱かない異性はいないと、思う。

 でも、それを何故。


「海さんが好きだからね。好きな女の子の前でヨコシマな考えを持たない男なんていないよ? だからこそ……君が考える様な不義理は働かない。知りたい気持ちはわかるけれど、質問があれば職務に関係ない限り答えるから、これはよしてくれないかな? それにコレを持っていた間で、だいたいの事は調べられただろうし」


 海姉に直接、言わない?

 海姉が好きなら、海姉に直接、言えばいいと思う。


 …………とりあえず、汐をどうにかする為じゃなく。

 海姉の事で、海姉に近付いたんだという事は。

 呆れるくらい、良くわかった。


 不義理はしないと言った。

 なら、それを違える事はしないと、思う。




 もしもの時は、容赦しないけど。


「それ、返して」


 片手を差し出して告げるけど、なかなか返そうとしない。

 何故?

 盗聴はされたく無いのに。

 意味がわからない。

 一つ、ため息。


「これと交換」


 同じ写真のものを、バックから取り出す。

 勿論、こっちの写真に仕掛けはない。

 それに嬉しそうに交換に応じて、大男は頭を下げた。


 何をどうしたら、そんなに好きになれるんだろう。

 分からなくて、深く溜息をついてから。


「…………あっち」


 指を差して、先を示す。

 ーーそこに海姉がいる。

 そのまま踵を返して、反対方向に歩き出す。


『ありがとう、もし興味があったら技術部に来て』


 背中を、そんな声が追いかけてきた。

渚による、高馬くん探り終了(笑)


桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より

http://nk.syosetu.com/n2532br/

高馬くん、賀川さん


お借りしてます

お気付きの点等ありましたら、お気軽に

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