11/26 見返りは…
訓練をしてやった見返りを要求するフィル
「おめぇ、忘れてねぇよなぁ?」
「あ? あぁ……」
ニヤリとするフィルに頷いて、賀川はフィルの言葉を待つ。
まだ頬を染めて立ち尽くしている子馬からは、ちょっと離れた所。
向かい合うようにして立つフィルと賀川が言葉を交しているのを、汐はフィルの傍にちょこんと座って聞いていた。
「さぁてと。なーにをしてもらうかなぁ〜?」
「……俺に出来る事なら、とは言ったけど。限度はあるんだからな?」
ニヤニヤと、本当に楽しそうに思案するフィルに、一応、といった感じで呟いてみる賀川。
フィルの事だ。どんな無理難題を押し付けてくるか、わからない。
しかし、賀川のそれを聞いているのかいないのか、にーやにやした含み顔のままのフィル。
何にすっかなぁ〜♪ と呟きケケケッと笑うフィルからの言葉を、賀川は微動だにせず待っている。
いいから早く決めてくれ、という顔はしていたが。
そんな賀川を見上げながら、汐は思う。
(……森で会った時はわからなかったけど、今は賀川のお兄ちゃんの〈キラキラ〉、ちゃんと視えてるんだよね。〈一本スジの通ったキラキラ〉と〈包みこむキラキラ〉、二つのキラキラが)
きっと、〈何か〉あったんだ。
色んな〈キラキラ〉が、入り混じってるくらいだもん。と心中で汐は考え。
フィルの言葉を待っている賀川を汐が見上げていると。
「おっし、決〜めたっ!」
パチン、指を鳴らし。嬉々としてフィルが告げる。
「んじゃ賀川、鍛えてやったのの見返りに、この俺様に酒奢りやがれっ!」
ビシリ、指差しポーズでニヤリとするフィル。それに、若干拍子抜けしたような感じで賀川。
「……え、そ……、そんな事でいいのか……?」
ぱちくりと目を瞬いて告げる賀川に、ニヤリとした笑みそのままに、フィルは続ける。
「一仕事終えた後っていやー酒だろうがっ。ま、全部終わったらってんでもいーけどなぁ〜?」
くぅ〜、良いねぇタダ酒っ! と、今にも居酒屋に飛んで行きそうな顔をしているフィルを、賀川はただただ見つめ。
そんな賀川を汐は苦笑しながら見上げて、お兄ちゃんのお財布が、カラにならないといいね。と思いながら、心の中で謝った。
「じゃ、空いてる時な」
「忘れんなよ?」
などというやり取りをしている賀川とフィルに、立ち上がって汐は声をかけた。
「ね、フィル。賀川のお兄ちゃん」
「んぁ?」
「汐ちゃん? どうしたんだい?」
それにくるり、此方に視線を投げて呟く二人。
そんな二人に、汐は栗色の瞳をくるりとさせて呟いた。
「ちょっとだけ、付き合ってもらってもいい? 確かめたい事があるの」
ラタリアを奪還して来い!とか言いそうなんですけどね
あの子は望んで彼処にいるのを知っているので
飲みに行く事にしたようです
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
高馬くん、賀川さん
お借りしてます
お気付きの点等ありましたら、お気軽に




