11/26 訓練最終日2
桜月様宅、11月26日 お話中です(謎の配達人)とリンクしてます
「俺が死ぬ事で、ユキさんの力が大きくなって、その力が悪用されかねない。だから俺は殺される隙が出来ない様に、弱点である音を克服しろって話。左の故障もバレてるし、期限までに音を何とか出来ないなら掴まえる。そう言う感じだと言えばわかるか?」
巫女である雪姫を、完全に「覚醒」させ『人柱』にする為の生贄として、愛する者賀川の命が必要で。
それを回避する為、弱点である音の攻撃に対する、術を身につける事。
それが出来なければ、賀川の身、ひいては雪姫の身柄までも拘束されてしまうという事。
それらを告げる賀川の言葉を聞きながら。
「やっぱ、あの白いねーちゃん、ちょっと変わってたんだな。何で賀川が死ぬのがねーちゃんのパワーアップに繋がるのかは、わっかんねーけど」
フィルは笛を手に、賀川に鋭い視線を向ける。
「けど克服までの期限が今日って……何でもっと早く言わなかったんだよっ!」
「そのつもりだったけれど、ツールのソレで吐き気を感じて、それが元に戻るまでと思っていたらズルズル……」
「お、おめぇはどこまで要領が悪ィんだ!」
「すまない」
申し訳なさげに告げる賀川に、汐が心配そうな瞳を向け。
「警察は悪い人を捕まえるのがお仕事なのに、良いヒトを捕まえちゃうの?」
「どうしてもの時は隠れる方が良い時もあるんだよ。宝石を金庫に入れるようにね。ユキさんを匿ってくれるって話。その前に俺って事……」
音を遮断出来ず、死ぬ事になるなら。
愛しい雪姫を守る為に、拘束されてしまうのも仕方ない、という風に。
紡がれる声に力はない。
「子馬が言う通り、このままだとどこかでそう言う『攻撃』を受ける日は近いだろう。今だと本当に俺、戦う間もなく……やられる。お前の音を『克服すれば強くなれる』かもしれない、それだけで訓練を決めたのに、まさか、こんな急務になるなんて」
「カガワ、どうすんだぁ。まさか……」
「まぁ、早く戻って来れるように頑張るさ」
「やだ、賀川のお兄ちゃん、行っちゃうの?」
「もう時間無いんだ。俺が死んで、ユキさんにまで何かあったら困るから」
「諦めんのかよ! 今まで散々、苦しい音に耐えてきたんだろうがっ!」
賀川を案じる汐の声。
しかし、それは賀川に届いていない。
フィルが賀川を叱咤するが、まるで諦めてしまったかのように。
賀川が項垂れるように顔を伏せる。
「お前っ! そのツラ上げろっ、らしくねぇっ! らしくねぇだろ? カガワぁ!」
賀川に詰め寄りながら、フィルが声を上げる。
「……らしくないのはレディフィルドの方だろ?」
フィルを見ないまま。
何処か自嘲の笑みを含む、力のない音だけが落ちる。
チッと舌打ちしたフィルは、直ぐ様持っていた笛を構え。
「この阿呆がっ。そんなアホなら今ここで俺がっ!!!!!」
「待って、今、吹いたらお兄ちゃん死んじゃうっ!」
怒声と共に笛を吹くーー
汐の静止は間に合わず、笛音にルドが羽ばたいた事によって、空の上からふわふわと。
羽が舞降る。
まるで。
天使が舞い降りて来たかのように。
賀川さんの運命やいかに!?
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
お借りしてます
お気付きの点等ありましたら、お気軽に




