11/21 まさかの初デート(海と高馬くん)
11月21日デート?中です(海さんと子馬)とリンクしてますー
「今日はデートしてね」
「はなせぇ~子馬ぁ~お前は何でそう強引なんだよ!」
「今、離すとこけるよ? で、嫌? 海さんはデートが嫌?」
「はあ? 嫌とかじゃなくって、強引すぎんだって」
「人生、歩んできてさ。やらないよりやった後悔の方が良いって学んだんだ。どうせ玉砕するなら、出来る事を君としたい」
「どうせ玉砕する? 人生やってやれねぇ事はない!」
「そうか。じゃあ……今日のデートはOKでいいね」
「なっ」
高馬が来たのを見た、と思った時には。
腕を取られて走り出され、振り解けないまま。
いつの間にかバス停。
「なに? どこに行こうっての?」
そのまま乗せられて、一人掛けの席に座らされる。
その側にデカイ図体で吊革に掴まるから、軋んだ音が耳に届いて。退路を塞がれる。
窓から逃げようと思えば逃げられる、けど。
「コーヒーの店があったんだ。それに小さいチョコがさりげなく付いてるんだけど、それがまた美味しくて」
「チョコ?」
「嫌い?」
「コーヒーの店行くのに?」
「美味しかったよコーヒーも。ジョッキでほしいけどね。美味しいと感じた物は好きな人に食べさせたいと思うんだ? ダメかな」
「ダメかなって! もうバスに乗せてるだろっ。って、…………好きな人と?」
「ダメかな?」
「ふぅん? ま、あたしもお前は好きだけど、友達として、だなぁ〜」
走って喉が乾いてた所にコーヒーの話題がでたから、まぁいいかと思って。
強引なのはなんか、何とか出来そうにねーし。
この図体投げ飛ばすのは、流石に骨が折れそうだし。
好きな人って、なんだよ?
まだ会って二回目だけど。
好意的ではある、って事かな? それならあたしも、強引なトコはアレだけど。
友達としてなら、まぁアリかなぁ、と思って。
「海さん、逃げないでくれるから。うん……それだけでとりあえず良いよ! まず友達になってくれるって事だよね! ありがとう」
「お前! いい意味でも悪い意味でも前向きだなあっ。それより手ぇー離せぇーー」
なんとなくしゅんとしてそうだったけど、いきなり元気になってぶんぶん手を振ってくるから、手を離せと抗議する。
強引な上、簡単にヒトの身体に触りすぎじゃない?
この前といい、今日といい。
なんでこんなに馴れ馴れしいんだ、コイツは?
とりあえず、窓の外の景色を見ながら考える。
今の所、どうこう出来そうってモンでもないし。
何か色々考えたら疲れたし。
まぁいいや。
コーヒーと、チョコに免じて今回くらいは付き合うかなぁ。
誰かといるなら、楽しい方がいいし。
連れて行かれた先は、喫茶店クラージュ。
気にならない程度で流されるジャズ。
落ち着いた雰囲気と、温和そうな渋いマスターがそっとカウンターに佇んでいるのが、なんとも似合っていて。
フロアの奥に、ピアノなんか置いてあるのもいい感じ。
アレ、頼んだら弾かせてくれんのかなぁ?
マスターの雰囲気そのまんまの店なのかな、と。
上向いた気持ちで店内に入り、高馬と一緒にコーヒーを飲む。
「うっま! なんだこれ!?」
一口啜って驚く。
じっくり、時間をかけて抽出したハズなのに、苦味やくどさは全くなく。
むしろ爽やかな酸味とコク、鼻に抜けるフルーティさが、コーヒー独特の苦味を甘さに変えていた。
しかもーー。
「これっ、chocolatier supremeの、オータム限定、モンブラントリュフじゃん!」
絞った先がちょこんとお辞儀している様が可愛らしい、栗ペーストの混ぜ込まれたトリュフチョコ。
栗本来の味を邪魔しないクリーミーさと、滑らかな舌触りが評判の、最高級西洋栗を使ったチョコレートだ。
季節限定な上、数量も少なく、口に出来る機会はそうそうない銘品。
「ちょ、マスター! これ、どうやって手に入れたのさ!? 早々、口に出来るシロモンじゃないんだけどっ!?」
「まさか、それを言い当てる方がいらっしゃるとは……」
驚きました、と。
その目を瞬くマスター。
「しかも、淹れてくれたコーヒーに、すっごく合う! 大人用に、ボンボン系でも合いそうだよねー♪」
「そうなりますと、夜の提供のみになってしまいますがね」
「ジジイのホテル一階にある、バーでちょっと、シャレた感じで出したいよね。カフェでちょっと良いコーヒーで優雅に、とか。コーヒー、淹れられんのはマスターだけ?」
「今の所は、そうですね」
「マスターは店あるモンねぇ。誰か後継者、いないん? 勿体ないって! 布教、手伝うからさぁ」
「チョコを融通してくれ、と?」
「出来れば、その腕と豆、あと機材一式も……」
「お褒め頂きありがとうございます。ですが」
「ストップ。その先は聞かないかんね? ビジネスの話をしてんだからさ〜♪」
マスターと、随分話し込んじまった。
文句も言わず、高馬は座って待っていた。
しかも一人、にこにこして。
何時ぞや、鎮にデートで放置はアウトだろ、と言った気もするけど。
でもこれはデートじゃないし、この店に引っ張って来たのは高馬だから。
ハナから長居する気だったんだとは思うし、ま、いいだろ。
雰囲気が心地良くて、落ち着くから。
「今度、美術館に行こうか?」
「またとーとつだねぇ〜? 何でさ?」
「確か今、県美で、世界中の食器と花の展示をやっているんだ。皿は料理を生かしも殺しもするから、勉強になるかもと思って。また、花はテーブルに欠かせないから。どう?」
「うーん。考えとく。日が合ったらな〜」
今日の所は、こちらでご容赦を、と。
マスターが特別に入れてくれた、特製のホットチョコを高馬に手渡し。
前の席に座った途端に、次の事を聞いてくる。
幾ら友達だからって、そんな頻繁に遊びになんか、行かねーだろうに。
なんでそんなに、こっちの事を考えてくれんのかわかんないけど。
面白そうな展示ではあるし、あたし的に言ったら、チョイスは悪くない。
互いの仕事の都合もあるし。
日があったら、と言っておいた。
海ちゃんが、まさかの?です
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
高馬くん、クラージュ、マスター
とにあ様のURONA・あ・らかるとより
https://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/
鎮くん
お借りしております
おかしな点等ありましたら、お気軽にご連絡くださいませ




