11/16デートのその裏で
鎮君と空
フィルと汐&賀川さんと雪姫ちゃんが
デートしている、その時
「今んとこ、上手いこと被ってねーみたいじゃん♪」
午前中の小休止の合間をぬって、鎮・空ペアと、レディ・汐ペアの辿ったルート跡を、モニターで見ながら呟く。
それにこくりと頷きながら、渚はデータ処理に忙しなくキーボードを叩いていた。
空に付けさせたイヤリング。
レディの耳にあるカフス。
そして渚も付けているレディと同じそれ。
それらは「ある試み」の為、渚が巧っちの元に通って技術を磨き、開発したものだった。
一つは、今月末に行われる、渉っちと小梅っち夫妻の結婚式の為。
その結婚式で登場するウェディングケーキの土台は、新婦の希望でこのうろな町を模したケーキとなる為、町の詳細な地図が必要で。
映像、音声、画像を自動で録画録音撮影してくれる、モノが必要だったのだ。
ビストロ流星の、料理人である葛西さんとパティシエールの彩菜っちに割り当てられていた企画だったんだけど、お店のある二人だけに任せておくのは申し訳ない、と思っていた渉っちに、丁度経過測定をしに行った渚と一緒に、『ちょうど良いから受け持つよ』と、引き受けたのだ。
空のデートを、提案したのはその為。
空には悪りぃけど、勝手に収集要員に加えさせてもらった。
後は、雰囲気が微妙な汐とレディを、なんとかしたかったってのもある。
この二グループが行けなかった箇所を、渚が昼から補完する流れ。
悪用するワケじゃないから、無断で録画録音撮影してんのは、大目に見てもらうしかねーけど。
完璧だな♪ と思って笑みを浮かべるけど。
送られてくるデータを、チェックしつつ個別に分ける作業をしている渚の後ろから。
同じモニターを覗き込みながら、尋ねる。
「ありそーかぁ?」
「…………」
左右に首を振られ、そー簡単にゃいかねーか、と息を吐く。
今回の企画に、便乗した本当の理由。
大将に、ある話を聞かされたからだった。
それは、朝イチのせりに、渚と一緒に出ていた時の事ーー。
「良いのは手に入ったかよ?」
そう言いながら、デカイ図体で近付いて来た大将は。
いつもの陽気さを引っ込めて、あたしと渚を、人目に付かないトコに連れてって。
「間違いねぇ、とは思うんだが……。今まで見つけられてねーし、確たるモンもねーんだけど、よ」
歯切れ悪く告げるのに、あたしと渚が顔を見合わせていると。
「お前らには、伝えといた方がいいと思ってよ」
そう付け足してから、目を合わせて、大将は確かに言ったんだ。
「所在を浜で、見たと、思う」
所在を浜で見た、と。
オヤジを浜で見た、と!
確かにそう、言ったんだ!!
一瞬だった、と言っていた。
けど、目の良すぎる海の男の大将が、たとえ遠くからだったとしても、幼馴染みのオヤジを、見間違うなんてありえねーだろ。
それはもしかしたら、予感みたいなもの、だったのかも知れない。
オヤジが、このうろなにいるーー。
その予感を、確信に変える為に。
引き受けた、今回の企画だった。
町中を、隈なく歩くんだ。
もしかしたら、映り込んでる何かが、あるかも知れない。
オカンや、陸姉、空や汐。
あと、他の青空の家族にも、まだ言ってない。
確信もないまま告げて、変な期待を持たせたくなかった。
あたしみたいにーー、後悔して欲しくないから。
大将がオヤジを見たのは。
海の家を終えて、ホテルへと向かったその日。
まだ、留まっていようとしてた、汐を車に乗せたのはーー、あたし。
あの時ーー。
もう少し待っていたら、オヤジに会えたかも知れなかったのに!!
「…………海姉の、せいじゃない」
「!」
知らずと握り締めていた拳を、そっと解きながら。
渚が静かにそう呟く。
「…………店仕舞いした日の事が、海姉の所為になるなら。ーー……『あの日』、共に居たのに、何も出来なかった、私にも、責任があるーー」
「!! そんなワケ、ねーだろっ! 渚っ!!」
俯いて、ポツッと呟いた渚の、肩を掴んで声を上げる。
「誰の所為でもない、アレは! どうする事も出来なかったし、渚の所為なんかじゃねーっての! 絶対!」
「…………じゃあ。海での事も、海姉の所為じゃ、ない」
「っ……」
マズい。
涙が出そうだ。
普段素っ気無いから、稀に優しくされると、結構クる。
姉ちゃんだから、妹の前で泣いたり、なんか絶対しねーけど。
渚の肩に手を置いたまま。
俯いて、涙を止める為に息を吐く。
よし。
顔を上げて、ニカッと笑う。
「んじゃ、誰の所為でもない者同士、ちゃあんと証拠集めするかねぇ〜♪」
「…………ん」
あたしが笑ったのに、渚も微かに微笑んだ。
結果としては、惨敗だった。
空とレディから回収した、イヤリングとカフスの、動画データもさらって。
港の辺りや、工場の方、その他行ってなさそーなトコまで、渚に歩いてもらったんだけど。
ウェディングケーキの資料としては、バッチリだけど。
「人探し」としての成果は、全くなかった。
けどーー。
一枚だけ、オカシな写真を手に取って呟く。
「この一枚だけブレてんのは、やっぱおかしーよなぁ」
「…………通信と撮影機能は別。激しく動いた訳でもないなら」
あたしの呟きに、こくりと頷いて渚が続ける。
動画を撮っていれば良かった、と呟く渚の頭に手を置く。
夕時の商店街なんて人混みすぎて、動画で撮っても重いだけと、画像撮影のみだったかんなぁ。
「コレってさぁ、鮮明にすんのって可能?」
「…………時間を貰えれば。ただ、どこまで精度が上がるかは不明」
「ブレてねーよーに出来りゃ、十分っしょ♪」
渚の返事にニヤリとして、あたしは部屋を後にした。
あたしは知らなかったけど。
レディが「誰か」とぶつかったらしい、そん時のブレた写真を、渚の机の上に置いて。
こっちはこっちで、捜索中、な感じ
とにあ様のURONA・あ・らかるとより
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鎮君
都月ケンイチロウ様のユーザーネームを入力してください。より
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巧さん
都月ケンイチロウ様のうろな町、六等星のビストロより
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葛西さん、彩菜ちゃん
YL様の"うろな町の教育を考える会" 業務日誌
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
結婚式のケーキの話、司先生と渉先生
お借りしております
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