7/28 その日の、朝
「さぁて♪ んじゃまぁやりますか!」
早朝の店内。
いつもの時間にはかなり早いその時間帯に、そこに集まる五人の者達。
太陽、陸、海、渚、汐の、三女の空を除いた五人が集まっていた。
「……こんな事だろうと思ったわ……」
にやりとする海にやれやれと肩を竦めて太陽。しかしそれを気にする事なく海は告げる。
「いいじゃ〜ん♪ すぐそこで美女コンすんだからさぁ。これがいっちゃん自然じゃんよ」
「……だからってね、何も私達までする必要は……」
太陽同様、額を押さえやれやれと告げてくる陸に、嬉々として続ける。
「十〜分あるある♪ 皆してたら、空も疑いやしねぇって〜。だからさぁ」
「…………必要、ないと思う」
が、渚もどうやら否定的なようで、ばっさりと切られる。
「えー。わかってねぇなぁ、もう。……ん〜、汐は? 汐も嫌かぁ?」
はあぁ、ため息して告げ、そういえばと汐に話を振る海。すると汐はにっこりして、
「着たい!」
挙手までしてそう言ってきた。そんな汐の頭をよしよしと撫で、
「そーかそーか♪ 汐は良い子だな〜。そんな汐には、二段フリルワンピースを着せてやろう」
「わぁ〜い♪」
海はおニューのY型ストラップの二段フリルワンピース水着を汐に手渡す。ドット柄の可愛らしいワンピースだ。
「ほらほら〜汐はこんなにやる気だぜぇ? それなのにあたしらが、やらねーワケにはいかねぇだろ?」
「でもぉ〜、このトシで水着は流石にねぇ〜」
と、渋る太陽に、
「なぁ〜に言ってんの。「太陽ちゃんもまだまだ若いねぇ〜」なんて言われて喜んでるクセに。それに今や服っぽい水着だってあるんだから。――ウチの為、だっろぉ〜?」
キラリ瞳を光らせ、ニヤリと海は告げる。
その言葉に、ま、まぁそれなら……と、ホルターネックリボンがアクセントのトップに、デニム風カットソーの水着を受け取る太陽。
それを呆れ顔で陸が見つめ、先んじて言葉を紡ぐが。
「……母さんってば。――海。兎に角、私はなんと言われてもやらな」
「ム〜ツ〜姉〜。――文化祭の翌年の売上げ、凄かったよねぇ?」
言い終える前に耳元でそう囁かれ、しっ、仕方ないわね、と呟いてタンキニにパレオを合わせた水着を握り締める陸。
「…………(はぁ)」
海の策略に乗っていく母親と姉を見つめ、渚は一つため息を吐き。早々にその場を立ち去ろうとしたが。
「ある程度客が引けたら、好きなだけ海、潜ってていーぞぉ?」
「!」
その言葉に、即座に水着に着替える渚。
「…………家の為。なら協力」
「早ぁ!? ってなんで縞水着!? もっと可愛いの着ろよっ!?」
渚の早業とその姿に驚く海に、
「…………他は非効率」
とだけ告げて、渚は持ち場へと戻っていく。
「……ま、いっか。後はこれで……」
「あれ? 皆もう起きてたんだ?」
頭を掻き掻き呟く海の耳に、扉を開けて店に入ってきた空の声が届く。それに、なんて事ない素振りで海は後ろを振り返り。
「おぅ、空おっは〜♪」
「おはよう、海お姉ちゃん。……ところで、その容姿は……?」
朝の挨拶をかわし、海の格好を改めて見て小首を傾げる空。
海の格好はというと、ボタン全開きの胸元から黒のトップが覗き、その胸下で括られたシャツの裾が晒された白い肌を撫で、下はショートパンツタイプの水着姿、といった出で立ちで。
小首を傾げる空に、海はニカッと笑って告げた。
「今日すぐ側の舞台で美女コンだろ〜? だからあたしらも、それにあやかろ〜かと思ってさぁ♪ あ、因みに空はコレな。白のセパレート〜」
「えぇっ!? ……で、出るワケでもないのに?」
水着を渡されて驚く空に、海はさらっと告げる。
「皆着るし、そン中で空だけ着ないのもオカシイだろ? だからあやかる為だってぇ。イベントごとは楽しまねぇと♪ ま、どーしても恥ずかしいってんなら、そこのパーカー羽織ってていーからさ」
「……皆も? そうなんだ?」
海の言葉にチラリと太陽と陸、汐を空が見やると、太陽と陸は苦笑混じりに、汐は満全の笑顔で頷いてきた。
「そっか。ちょっと恥ずかしいけど……じゃあ私、着替えてくるね」
それに納得したように頷いて、水着とパーカーを持って家の方へと戻ろうとする空。
その後ろ姿に、さり気なく海が声をかける。
「人入り多くなってきたら、空は美女コンの方、〈手伝って〉やってくれよ。いつもコッチ手伝ってもらってるし、あいつ等二人だけじゃ、なにかと大変だろ〜?」
「あ、そっか、そうだね。うん、わかった」
それを疑う事なく了承し、空は店を後にする。
「………………」
そのまま、空の足音が聞こえなくなるのをじっと待って。
海はニヤリと口角を引き上げた。
「よ〜しよし。第一段階、ク〜リア〜♪ 後は、会場に送り出しゃオッケ〜だな♪ あいつ等が上手くやんだろ。ステージにさえ上がっちまえば、もう後にゃあ引けねぇんだからよ♪」
「………………」
「………………」
ケケケ……と、したり顔で笑う海を、なんとも言えない微妙な表情で見つめる太陽と陸が、心の中で空に謝ったのは言うまでもない。
美女コン開催前話〜
空ちゃんの運命やいかに!?
その結果はとにあ様の美女コンで!
まだちょっと?合間話が続きます〜




