11/16 町案内、という名のWデート? 準備中2
前回から引き続き、ラヴぃ回!(笑)
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話
11月16日 逢引?中です(汐ちゃんと:謎の配達人)
このダイジェスト回とリンクりますー
「あーーっ! 汐の事泣かしてるっ!?」
『っ!?』
投げかけられたその声と言葉に。賀川と汐の二人がびくっと反応している内に。
ダイニングからリビングへとやって来たその者は、背後から汐を抱き上げ賀川から遠ざけながら呟いた。
「だいじょーぶか、汐? この兄ちゃんになんかされたのか? ん?」
「あ、炯お兄ちゃん。違うの、なんでもないの。大丈夫だから……」
「ほんとうかぁ? 目、赤いし。嘘はいけないぞー?」
「本当だよ、何にもないから。ーー恥ずかしいから下ろしてほしいな〜?」
汐に炯お兄ちゃんと呼ばれた少年は渋々マットの上に汐を下ろすが、後ろから抱き締めたままじっとりとした視線を賀川に注ぐ。
あきら、その呼び名に賀川は自分が使う事のない本名『玲』と眼前の彼の『炯』という発音がかぶっているのに親近感を覚え、その顔にも何故か既視感を感じて首を傾げるが、汐に紹介されてなるほどと頷いた。
青空炯、十六歳。〈ブルー・スカイ〉の家族フロアに身を置く四家族の内の一人。
源海の次男、彼方と柚月の子供。次男であり三人目。現在うろな高校一年生。
焦げ茶の短髪に茶に近い黒の瞳と父方譲りの見た目だが、身長が低い所為か実年齢より幼く見える上、その顔の造形は母親の柚月を彷彿とさせるものであり。
それ故に、先程の「お着替え」での柚月の印象が強烈だった賀川は、初めて会った筈なのに見覚えがあると感じたのだった。
「えっと、賀川です。今日は汐ちゃんとレディフィルドの町案内を一緒にと、誘ってもらっていて」
「フィルがお昼はお家でって陸お姉ちゃんに言ったから、お兄ちゃん達と今から一緒にお昼なの。バイト前だから炯お兄ちゃんもでしょ? 仲良くしてくれたら嬉しいな〜?」
名前がダブっている事は特に言わず、ソファから立ち上がってそう挨拶する賀川。
本名の『時貞 玲』を名乗った所でここで短時間しか関わらない以上、次に会った時は十中八九、職場の制服を着ているだろう自分は『賀川運送の賀川』としか認識されないとわかっている。本名より通称の方がうろなでは正しい答え方だと考慮した上での挨拶。
賀川を援護するように下から見上げられながら、汐にそんな事を言われ。
「しかたないなー。汐にそこまで言われたらなぁ。男と宜しくするつもりはないけど、昼食の間だけだしな。ーーいっておくけど。手加減はしないからな?」
「?」
抱く汐から手を離しやれやれと言ってのけた、炯の不思議な言い回しに賀川が首を傾げたその時。
「あきらぁっ! 今度はアンタが駄弁りに行ってどーすんのよ!? さっさと取皿並べなさいよっ」
一声と共に飛んできた小皿十枚にビクっとする賀川。呼び名に反応し、反射的に体が動いて皿を片手のみで受け、動きの悪い方の手はサポートに回す。
「おまえねー。妹のくせにその言い方はどーかと思うぞ? 燎。おにーちゃんは、もっと可愛らしい妹を所望する。汐みたいな」
「いっこしか違わないくせに、兄貴ヅラしないでよ、チビ兄」
「またそーゆう、可愛くない事を言う」
言葉の応酬を繰り広げながら皿をキャッチしていく兄同様、皿を回収していく賀川。
両者同枚の五皿ずつ。その状態は対照的であったが。
頭や腕、足などでキャッチした炯に対して賀川はその片手に、綺麗に五枚重ねられた取皿を持っていた。
「すご〜い♪」
パチパチと拍手しながら、にっこり汐が告げたのに、
「なかなかやるな」
「なかなかやるわね……」
賀川に視線を向ける炯と燎が同時に呟いた。
「そーゆー危ない事してると、また母さん達に叱られるよ?」
二人共程々にね、と言いながら螺旋階段を下りリビングへとやって来たのは、泰だ。
『ゆー兄』
ぴったりと声をハモらせる二人に微笑む。
青空泰。二十一歳。炯同様〈ブルー・スカイ〉の家族フロアに身を置く四家族の内の一人。
源海の長男、縁と山桜桃の子供。第一子で双子の妹、なかばとまなかの兄に当たる。
ホテルの総支配人を務める父と経理関係を一手に引き受ける母を持つ泰は、家族柄というのもあるが自然と、幼少より父である縁について日々学びながら仕事に励んでいる。
物心ついた時から培われた経験がしっかりと活かされ、お客様対応や周囲の状況把握は的確かつ迅速で、徐々に次期支配人候補としての頭角を現にしてきていた。
武術を嗜む一家故に武道に準じているが、両親の穏やかほわわんな気質をがっつり受け継いでいる泰は、少し長めの焦げ茶色の髪を揺らし緩やかに下がる茶金がかった黒目を優しげに細めて、炯と賀川が受け止めた取皿を回収してダイニングテーブルの上に並べ。
「二人共、返事は?」
にこりと炯と燎を交互に見つめて告げる。
「……わかったよ」
「はぁ〜い……」
にっこり笑顔だが、怒ったら意外と怖い事を知っている二人は渋々ながら声を返し。炯はキッチンへと戻る為ダイニングへと向かい、それとは逆に賀川に挨拶をする為リビングへとやって来た泰は、先程女湯で雪姫が双子に「イタズラ」された事など賀川は勿論の事泰も知りはしない為、にこりと微笑み改めて挨拶をする。
「先程はお恥ずかしい所をお見せしてしまい、申し訳ありませんでした。従兄妹が失礼致しました」
そこで優雅に最小の所作で頭を下げ。
再び上げた顔に、若干の含みを帯びた笑みを乗せて続ける。
「ーー初めまして。私は青空泰と申します。以後お見知り置き頂ければ幸いです。私の事は泰と、名前で呼んで頂いて構いません。貴方の事は、なんとお呼びすれば宜しいでしょうか?」
そう告げる泰に、心得ているらしい賀川もにこりと笑みを返し。
「個人的には、になりますが……初めまして。賀川です。そのまま『賀川』と呼んで頂けると嬉しいです」
「我が家へようこそ、賀川さん。騒がしい所ですがゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます」
一通りの挨拶を終えた二人は、和やかに話を続ける。
「賀川さん。この頃どうですか? そちらの方は」
「ええ……まだ二年前後の末端の身からの目線ではありますが、M&Aの後も順調ですし、経営陣も整理が付きましたから。これからも宜しくお願いいたします」
ホテル経営者と運送業者という間柄故、互いによく顔を合わせていた二人は知らず、仕事の事へと話が及ぶ。
総支配人の補佐としている泰は今、多岐に渡る業務の内経営面の幾つかを任されており、その中の一つ、宿泊プランに配達配送のサプライズが付いた案件の話が溢れる。
「それは良かったです。此方こそ、宜しくお願い申し上げます。サマーも申し分なかったですし、今展開しているオータムキャンペーンも上々。賀川さんから頂いた『旬の味覚を一品オマケにつける』、あの案が女性や主に年配層の方々に大変喜ばれておりまして」
「恐縮です」
「クリスマスキャンペーンのSecret Box、年越し新年パックも既に完売。来春のスプリングやサマーの案も、もう少し詰めれるといいのですが」
「そうですね。GWや御盆が被る事もあって、増員の計画はあるのですが……」
流れる様に紡がれた言葉とにっこり微笑み合う泰と賀川を端からひょっこり顔を出して見やり、「すげー」と炯が呟いている。
仕事柄、たとえ家族の友達であろうと「お客様」対応が染み付いている泰に気圧されず言葉を交わせる人物は稀だった。
汐やフィル以外は知らない事だが、賀川はTOKISADAの御曹司。拐われる五才までとはいえ、培われた上流の教養は本物だったという訳だ。
その証拠に大皿を抱えキッチンから出てきたフィルはヒュウ〜♪ と口笛を吹いているし、家族しか分からない僅かな驚きを身の内に宿す泰に、汐はにっこり笑顔を向けたままだ。
「燎、出すモンまだあったか?」
「んーっと……後はデザート類だけみたいだから、大丈夫よ」
残りの料理を持ってついて来ていた燎に振り返り声をかけるフィルに、少し考えてから返す燎。あ、と思い出して声を上げる。
「汐ちゃーん、お箸並べてもらえる?」
「はぁ〜い♪」
手を上げて嬉しそうに返事をし、箸が入れられている棚へと汐が小走りにかけていく。
それにつられる様に賀川をダイニングへと導く泰が、
「失礼ですが、賀川さんは何か武道をなされているのでしょうか?」
そう聞いたのと、
「最高傑作が出来上がったわ!」
そう言いながら柚月が、リビングへの扉を勢い良く開いたのは、同時だった。
色々、ウチとこの子紹介?回
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
http://nk.syosetu.com/n2532br/
賀川さん
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